ウイリアム・バークレーがその著書の中で、H・L・ギーの書いた一つの逸話を紹介している。それによると・・・・・ ギー氏の所属していた教会に、トマスという身寄りのない老人がいた。彼の友人はみな先に他界して、彼を知っている者もほとんどいなかった。このトマスが死んだとき、ギー氏は、葬式には誰も来ないだろうから、せめて自分だけでも行って、老トマスの永眠の地を見届けて来ようと考えた。その日は吹き降りで、会葬者は一人もいなかった。棺が墓地に着くと、門のところに一人の兵士が待っていた。時は戦時中であった。この兵士は将校であったが、レインコートには軍の階級章がついていなかった。この兵士は葬式に列するために墓にき…