〈昭和の忘れもの〉モノ・コト編㉞ 【助六寿司(稲荷弁当・海苔巻き弁当)】 ソメイヨシノの花芽が日毎に膨らんでいる。 今年は晴れて花見の宴の規制が解除されるという。青空の下、家族や気の置けない仲間たちの笑顔の中心には、バラエティーに富んだ料理が並ぶことだろう。 だが、自分の中では宴の食というと昔ながらの折り詰めの海苔巻きとお稲荷さん、所謂「助六寿司」が浮かんでしまう。 歌舞伎が由来とされる助六寿司は、いわば江戸の粋と洒落の産物と言えるだろう。なので、家の食卓で「助六っ!」と見得を切られても正直ピンとこない。実際、当たり前のように「海苔巻き弁当」とか「稲荷弁当」と呼んでいた。定番でありながら、どち…