「クリニックを扱った作品」の第三弾は、坂木司『シンデレラ・ティース』(光文社文庫、2009年)です。「小さい頃から、歯医者なんて大っ嫌いだった」。「キーンと耳ざわりなドリルの音! 私は今でもあの音を聞くと、右の奥歯がつきんと痛むような気がする」。そのように感じているのは、大学生の叶咲子。ところが、ある事情で、夏休みの間、歯科医院で受付のアルバイトをやることになります。初めは憂鬱だったのですが、医院のスタッフのやさしさ、丁寧な治療、大きな悩みを持って通院している患者たちとの触れ合いによって、「恐怖症」を克服していきます。歯に関する悩みとその解決策、歯科医院の役割、そしてクリニックの院長、歯科医師…