「お仕事いろいろ」というテーマで紹介される作品の第三弾は、朱野帰子『海に降る』(幻冬舎文庫、2015年)。有人潜水調査船「しんかい6500」のパイロットをめざす訓練生・天谷深雪の夢と挫折が描写。生き物がたくさんいるのは、広い海のたった5%。残りの95%は深海と呼ばれる暗闇の世界。どんな生き物がいるのか、ほとんどわかっていません。「深海とは地球最後のフロンティアなのです」。ただ、浅海で死んだプランクトンや魚の死骸が、まるで雪のように深海に降りそそぎ、きれいな光景をつくり上げています。潜水調査船の建造に関わった技術研究者の父・北里厚志が、娘に「深雪」という名を付けたのは、そんな「マリンスノー」の美…