文政2年。この夏、ある噂でもちきりとなる。その図は左様で、いろんな話があった。(朱書き頭注)「矢場にて人魚の細工物を売る」。名は神社姫という。竜宮からの使いであった。長さは2丈(1丈は約3メートル)ほどで、腹は赤く紅の様であった。今年4月4日、九州肥前の国浜あたりにあがり、同国八兵衛というものが生捕にすると。神社姫がこう言った。私は竜宮の使いである。今年から7年間は豊年である。しかし、コロリという病が流行する。私の姿の図を見れば、この病は退散する。これが神のお告げだと。