東洋英和女学院の院長の事実捏造が2019年5月にちょっとした話題となった。元院長の論文で創造されたドイツの宗教家カール・レフラーについて考えてみたい。『ヴァイマールの聖なる政治的精神』がその問題作だ。 もちろん、この事件は自分のようなメタフィクション系の小説好きにWAKUWAKU感をもたらしてくれた。老練なる大学教員というプロフェッショナルが生み出した架空の人物の思想は、実在の神学者のそれよりも破格でユニークで心に響くものであるかもしれない。 興味津々なのが、この空想上の人物が生きたのは20世紀の混迷期のドイツの共和国が舞台のようなのだ。 あの驚くべきヴァイマール体制のドイツは人文科学と自然科…