源氏はまだようやく曙《あけぼの》ぐらいの時刻に南御殿へ帰った。 こんなに早く出て行かないでもいいはずであるのにと、 明石はそのあとでやはり物思わしい気がした。 紫の女王はまして、失敬なことであると、 不快に思っているはずの心がらを察して、 「ちょっとうたた寝をして、若い者のようによく寝入ってしまった私を、 迎えにもよこしてくれませんでしたね」 こんなふうにも言って機嫌《きげん》を取っているのもおもしろく思われた。 打ち解けた返辞のしてもらえない源氏は困ったままで、 そのまま寝入ったふうを作ったが、朝はずっと遅くなって起きた。 正月の二日は臨時の饗宴《きょうえん》を催すことになっていたために、 …