『〈オールカラー版〉美術の誘惑』/宮下規久朗/光文社新書/2015年刊 二、三ヶ月前、ワインを飲みながら絵を描くというワークショップに参加した。美大生が講師をする体験型アートショップというもので、その日は6号のキャンバスにパレットナイフを使って、一種のポップアートを制作する回だった。見本では人の顔や犬の顔が描かれていたけれども、好きな題材で良いと言われたので、私は酒瓶を十八本とグラスを一つ描いた。 誘ってくれた友人は「うまい」と言ってくれたけれども、「誰でもすてきな絵が描けます」というのがそこの謳い文句で、作業自体も約三時間。上手下手はあまり関係ない。もし差があるとしたら、高校の美術の授業でア…