教科書、できました。 さて七月だ。下旬には、将来文筆家志望の若者たちに、なにか参考になることを、よしんば参考にならぬまでも愉しんでいただけるお喋りを、しなければならない。声も滑舌も近年劣化顕著な歯抜けジジイの噺をお聴きいただくわけだ。用心してかからねばならない。 まだ元気だった時分から、お喋りのさいに台本というものを用意したことがない。ノートを読上げる講義のつまらなさには、学生時代にウンザリした憶えがある。たとえ云い損ないや漏れがふんだんに生じても、その場で浮んだ「活きた」言葉で喋らぬことには、お聴きの皆さんに伝わるはずがないと思ってきた。脱線もふいの思いつきも、避けるべきではない。それがライ…