中央線文士。1969年、三重県鈴鹿市生まれ。明治大学文学部中退。『sumus』同人。
在学中からフリーライターとして執筆活動を開始。
著書 『借家と古本』(スムース文庫、コクテイル文庫) 『古本暮らし』(晶文社)
編著 『吉行淳之介エッセイ・コレクション』(全四巻、ちくま文庫)
尾崎一雄(荻原魚雷編)『新編 閑な老人』(中公文庫、2022)を読んでいる。 いままで尾崎一雄を読んだことはなかったが(でも本は何冊か持っている、はず)、荻原魚雷さんが好きなので読んでみた。 すると「退職の願い」(1964)という短編にこんな文章を見つけた。 つくづく思うことは、自分が、一個の人間としても、社会人としても、いかに素人か、ということだ。六十四歳になってそんなことに気がついた。(p.42-43) そう、そうなんだと、首が折れそうになるほど何度も頷いてしまった。私は53歳だけど、本当にそういう感じがする。 尾崎は続けてこう書く。 もっとも、ここで云う素人に対する玄人というのが、どうい…
「中年の本棚」(荻原魚雷 著)を読みました。 著者が43歳から50歳まで雑誌『scripta』に連載したものをまとめた エッセイ集。 中年に的を絞ったいろんな分野の本が紹介されている。 昨年(2020年)8月29日(土)、毎日新聞書評欄「今週の本棚」で 紹介され、図書館で予約し回ってきました。 中年っていったい何歳くらいを言うんだろう。 定義はいろいろあるようだが、だいたい40歳~55歳くらいを指すようだ。 厚労省の調査では、0~4歳を幼年、5~14歳を少年、15~24歳を青年、 25~44歳を壮年、45~64歳を中年、それ以上を高年としているそう。 私のイメージは40代~50代前半で、私自身…
荻原魚雷さんの『中年の本棚』という本を見つけた。 中年の本棚 posted with ヨメレバ 荻原魚雷 紀伊國屋書店出版部 2020年07月31日頃 楽天ブックスで見る Amazonで見る Kindleで見る 私は今年40歳。 昔から言われている 「四十にして惑わず」 という言葉について考える。 40歳になったら迷いがなくなるなんて、本当なのだろうか。 迷ってばかりの人生に終止符が打たれるなんてことが、本当にあるのだろうか? そんなことを思いながら、荻原さんの本をめくる。 すると冒頭で、 「四十初惑」 とあった。 そもそも「四十にして惑わず」という言葉は、人生が50年だった時代の話。 今や人…
・ 中年の本棚:荻原魚雷著のレビューです。 中年の本棚 作者:荻原魚雷 発売日: 2020/07/31 メディア: 単行本(ソフトカバー) まだ知らぬ中年本との出会いを求めて覗いてみた! 個人的には比較的自分の年齢にこだわりなく、その時の興味や気分に合った本を手に取ってきたので、トータルしてみるといつの時代も「読書」に関してのカテゴリーもそれほど変わらず読んでいると思う。 変わったな....って、顕著に感じるのは「雑誌」ですかね。昔は定期購読していた雑誌もあったけど、今はほとんど読まなくなった。スマホで「無料読み放題」をパラッと見るぐらいで、買うこと自体なくなってしまったかな。 前置きが長くな…
魅惑の「中年」本ガイド 2020年刊行。紀伊國屋書店出版部の無料冊子「Scripta」の2013年春号~2020年冬号にかけて連載されていたものを加筆修正のうえで単行本化したもの。 筆者の荻原魚雷(おぎわらぎょらい)は1969年生まれのライター、文筆家。『古書古書話』『日常学事始』『本と怠け者』『古本暮らし』などの著作がある。 内容はこんな感じ いずれは誰にでも訪れる「中年」時代。自分の人生の限界が見えてくる。気力、体力共に衰え、職場では上司からの圧力と、部下からの突き上げで板挟みになる。親の介護、配偶者や子との人間関係。悩みは尽きない。 15年にわたって「中年」をテーマとした書籍を収集してき…
人生の土台となる読書――ダメな人間でも、なんとか生き延びるための「本の効用」ベスト30 作者:pha ダイヤモンド社 Amazon 著者は冒頭で述べる。読書には「すぐに効く読書」と「ゆっくり効く読書」の2種類があると。 前者は仕事術やライフハックなどの実用書の読書。今の状況をちょっとだけ改善するのには有効だが大きく人生を変えるのには向いていない。 後者は小説やノンフィクションや学術書などの一見実用性がなさそうな読書。根本的な生き方を変えるにはこちらの読書が有効だ。 「すぐに効く読書」が今まで知っている枠組みの中で役に立つものだとしたら、「ゆっくり効く読書」は、その枠組み自体を揺さぶって変えてく…
昨年末から妻、次女、あたしと、 なんとなく具合が悪かったのだが、 元旦早々に休日診療所にて「陽性」診断をいただき、 ひとり元気だった長女も二日遅れて、「陽性」の。 喪中の「しきたり」をよく知らない身に、 強制的に「お正月封じ」をしてくれたウィルスに感謝。 いや、なに、その感謝。 ぐったりと、まさに寝正月。 果たして健康体であったらどこまで動いていたか、 なんとなく胸を張って寝込めるのはありがたいやら、 それでも具合が悪いのは、気が滅入ることでもある。 気が滅入ることでもあるのだが、からだ元気、ココロしんどい、 というアンバランスと比べると、案外、ココロしんどい、 からだもしんどい、「え?お前さ…
年末は自分らしくなくバタバタしていましたが、おかげさまで無事に年を越せました。2022年も生き延びられたので満点ということにしておきましょう。 2023年は異動が予想されていることもあり、自分にとってはそれなりに動きのある1年となりそうです。今度はどんな仕事をすることになるのでしょうか。しかしどんな仕事をするにしても健康を大事にしたいですね。未だに肺炎の薬を服用していますから。いつになったら薬から解放されるのでしょう。 暗い話になってしまったので、2022年のマイベストを挙げていきましょう。 家電 Meta Quest 2—完全ワイヤレスのオールインワンVRヘッドセット—128GB Meta …
昨夜、高円寺「抱瓶」で、宮内悠介・ぴっぽ夫妻、荻原魚雷と私で「古本バンド」忘年会。宮内くんとはバンド以来。ぼくが「あれは楽しかった。もう一度やりたい」と熱望する。本番ではいろいろうまくいかなかったが、スタジオ練習と打ち上げが無性に楽しく忘れがたい。来年、ぴっぽさんの本が出るとのことで、それに合わせて、どこかで人を集めてイベントとして再結成したいと強く熱望。地方からお呼びがかかれば、バンを仕立ててツアーも、と夢は広がる。ぼくのなかでは、楽しさを☆5つで示せば、あれは星5つであった。オリジナル曲を作ろうと盛り上がる。魚雷くんには「『靴下の穴』という曲を作ってくれ」と頼んでおく。 この夜の話の割合は…
本の買取強化中です。JR小倉駅北口「小倉の古本屋」古書城田(旧ブログです) JR小倉駅北口(新幹線口)の古本屋、古書城田です。北九州市内をはじめ福岡県内&近県、本の出張買取、本の遺品整理を行なっています。大量歓迎です。査定無料、出張費無料です。どうぞご相談くださいませ。 絵入スペイン語辞典 (昭和59年 第27版) 瓜谷良平:監修 大学書林 もの思う葦 (昭和39年) 太宰治 大和書房 宮沢賢治論 佐藤泰正墨署名入 佐藤泰正著作集 6 (1996年) 佐藤泰正 翰林書房 (宮沢賢治) ズバリ直言 月ロケットは革命する (昭和34年) 辻政信 東都書房 改造社の時代 戦中編 日支事変より横浜事件…
尾崎一雄と意外な接点があった 新編-閑な老人 (中公文庫 お 33-3) 作者:尾崎 一雄 中央公論新社 Amazon コロナ禍で中断していた東京出張に3年ぶりに行ってきた。某学会での特別講演(とはいっても30分という短いもの)を依頼され、ここのところその準備、特に30分におさめるには何度かリハーサルが必要。今は、iPhoneでパワポファイルを見ながら同時に音声を録音できる。30分に収まったところでその音声ファイルを何度か聴いておけば、まあ大きな間違いは起こらない。便利な時代になったものだ。 というわけで、10月は本が読めていない。その特別講演のネタ本を3冊ほど取り上げておく予定だが目標の10…
40代に入ってから、読書の傾向にはっきりとした変化があって、平たくいうと、小説を読まなくなった、というか読めなくなった。 本屋やインターネットで話題になっていたり、何かしらの賞を取った小説、これまで好んで読んでいた作家の続編など、いろいろ手にとって読み始めてみても、どうも話にすっと入っていけない。どんな話も何だかリアリティを感じないというか、どこか冷めた目で読んでいて、読み進めていくほどに興味を失ってしまう。 40代になるまでの人生で、転職した会社が転職前の会社を買収したり、離婚して親権を争ったり、ツイッターがきっかけで結婚したりと、自分の人生にもそれなりにユニークな出来事があったせいで、自分…
尾道パブルイスでのライブでは藤井君をはじめ彼の妹のむつこさんや色々な方々が手伝って下さり、気持ちよく歌うことができた。疫病が蔓延する前、私はこんな感じで色々な街に歌いに行き、その街の人に助けてもらい、良くしてもらいながら活動してきたのだったと改めて思い出す。いかにいつも独りで立っているような顔をしてローンウルフ(この言い方は西村賢太に影響されている!)を気取ったところで、いつもその街に私を呼んでくれる人あっての自分の活動である。本当にありがたい夜だった。 次の日は夕刻まで街を歩いた。行く先は決めていた。半年前の尾道滞在の際に教えてもらった「そごう」という喫茶店を再訪するつもりだった。所謂、観光…
8月某日 7時起床。朝はハムエッグとコーヒー。行きの車内で奥山侊伸「昭和のテレビと昭和のあなた」を読み始める。通常シフト。昼は五反田「夏至南風」でタコライス。タバスコをかけすぎて口の周りがひりひりする。大崎図書館へ週刊読書人と図書新聞を読みに行ったら先週号のまま。雑誌コーナーに「正論」があったのでめくってみる。巻末の「メディア裏通信簿」は意外にまともなことが書かれていた。所々に軍歌を称えるページがあり、全体的におじいちゃん向けの雑誌のようだった。この日は出社人数が少なくのんびりモード。定時退社。帰宅するとモニターラックが置き配されている。夜は「あゆみ」へ。ビール、刺し盛り、冷酒2、緑茶ハイ。美…
去年の初めから毎週土曜日の夜に更新していた文章をテーマ別に二冊のエッセイ集にまとめた。まとめた以上は沢山の方に手に取ってもらいたい。初めに売る場所は五月末に東京で開催される文学フリマにしようと思った。というのも、前年末にコロナ禍に入って久方ぶりに客として訪れた文学フリマがとても楽しかったので、次はぜひ出店したいと思ったのだ。 文学フリマの数日前に東京へ向かった。 当日、新幹線は豪雨の為に何度か停車しながらも、牛歩のごとくじりじりと東海道を進み、夕刻にはそれでもちゃんと東京へ着いた。 ホテルに荷物を置いて向かう先は高円寺だった。遅れを取り戻そうと急いだ分、やけに早く着いてしまった件の街で時間を持…
「新編 閑な老人」 尾崎一雄著 荻原魚雷編 2022年 中央公論新社 「暢気眼鏡」で芥川賞を受賞した作家の作品集。 作品を読むのはこれが初めてだったが、「昔日の客」(関口良雄著)に出てきた古書店主と作家のエピソードを元にした小説があり、一気に距離が縮まった感じがした。 本の一番最後に収録されていた「生きる」という随筆が心に残った。 「巨大な時間の中の、たった何十年というわずかなくぎりのうちに、偶然在ることを共にした生きもの、植物、石・・・ 何でもいいが、すべてそれらのものとの交わりは、それがいつ断たれるかわからぬだけに切なるものがある。在ることをともにしたすべてのものと、できるだけ深く濃く交わ…
ようやく尾崎一雄(荻原魚雷編)『新編 閑な老人』を読み終えた。 それで、もっと尾崎一雄を読んでみたいと思ったのだが、いま新刊で手に入るのはこの本と岩波文庫ぐらいしかない。 私はその岩波文庫も持っている(ような気がする)。それだけでなく、古い新潮文庫や旺文社文庫も持っている(はずだ)。……が、どこにあるのかわからない。 まあ、それはいい。いつものことだ。整理整頓能力のなさはいまに始まったことではない。 なので、こういう時は本を探すのをすっぱり諦めて(というか、最初から探す気もなく)また(古)本を買うのである。こうして際限なく本が増えていく。 こういう場合に私がよく買うのが、昭和に刊行された日本文…
引き続き尾崎一雄(荻原魚雷編)『新編 閑な老人』(中公文庫、2022)を読んでいる。 この本は短編と随筆で構成されているのだが、一番最後に「生きる」(1963)という短い随筆が収録されている。 この中で尾崎は「私は退屈ということを知らない。何でも面白い。」と言い、こう書いている。 巨大な時間の中の、たった何十年というわずかなくぎりのうちに、偶然在ることを共にした生きもの、植物、石ーー何でもいいが、すべてそれらのものとの交わりは、それがいつ断たれるかわからぬだけに、切なるものがある。在ることを共にしたすべてのものと、できるだけ深く濃く交わること、それがせめて私の生きることだと思っている。(p.2…