奈良盆地の南の方に橿原市がある。そこに、古代の都、藤原京があった。694年から710年まで間、三代にわたって天皇が住まう都であった。それ以前の都は、橿原市の南東、現在の明日香村で、天皇の代替わりごとに新たな宮を造って転々としていた。藤原京は、都としての期間は現在の奈良市にあった平城京へ遷都するまでの16年間に過ぎなかったが、日本史上最初の、唐の都城に倣った碁盤状街路の計画都市だったこともあり、史的に大きな存在である。都域は推定では南北・東西約5kmに及ぶ広大さだが、当時の技術及び経済力では、この短い期間で全域が都市化したとは私は思わない。街路の計画のみで終わった部分も多かったのではないか。 大…