6年生になった。…教室の空気が、何だかざわついていた。 クラスのあちこちから聞こえてくるのは、塾の話、模試の話、受験の話。そろばん、ピアノ、バレエ…。え、みんなそんなに何かしら習ってるの? 私はというと一切なし。ゼロ。まっさら。真っ白。何かに通ったことも、辞めたこともない。“習い事”という単語自体が、自分の人生の辞書に載ってなかった。 それでも、周りの子たちが「先生に褒められた」とか「発表会で一人で発表だった」とかちょっとした“プチ輝き”をまとっているのを見ると、うらやましさとは少し違う、何とも言えない“透明な寂しさ”が込み上げてきた。 そして5年生後半から、やたらと急増した“塾行ってる組”。…