こうした運命に出逢う日を予知していましたなら、 どこよりも私はあなたとごいっしょの旅に 出てしまうべきだったなどと、 つれづれさから 癖になりました物思いの中にはそれがよく思われます。 心細いのです。 伊勢人の 波の上漕ぐ 小船《をぶね》にも うきめは刈らで 乗らましものを あまがつむ 歎《なげ》きの中に しほたれて 何時《いつ》まで 須磨の浦に眺《なが》めん いつ口ずからお話ができるであろうと思っては 毎日同じように悲しんでおります。 というのである。 こんなふうに、 どの人へも相手の心の慰むに足るような愛情を書き送っては 返事を得る喜びにまた自身を慰めている源氏であった。 【源氏物語 第十…