運河沿いの道は広葉樹から射す木漏れ日でまばらな陰影があり、それが風に揺れていた。大きな運河ではない。一隻の小舟程度の幅だった。自分はその道にたまたま巡り合わせただけで南西方向にある村へのサイクリングの途上だった。 一艘の船がゆっくり進んできた。幅5m、長さ10m程度の船だった。キャビンの屋根で女性が日光浴をしており横にはシェパードがこれまた飼い主と同じ格好で横たわっている。自転車が二台積まれ船尾近くに申し訳程度の操舵室がある。そこには上半身裸の男性が舵を切っていた。船尾にはためくのは黒・赤・黄の横縞。ドイツの国旗だった。その下に縦縞の青・白・赤の旗が掲げてあるのはフランスの国内を旅しているとい…