ーーーー講義録始めーーーー この概念は、古代中国の儒教に由来し、身を修め、家族や共同体を大切にする倫理観として発展しました。日本では明治期に「モラル」との対訳で「道徳教育」が導入され、個人と共同体という二つの次元で人間の生き方を問う領域として位置づけられています。 道徳は、人間が本能に従う「動物的存在」であると同時に、普遍的理念を抱きつつ、文化や現実世界の中で生きる「理性的存在」でもあることを前提とします。つまり、道徳は理論的に「よく生きるとは何か」を考えさせ、実践的に「どう行動すべきか」を導くものです。 このとき、「よく生きる=幸福」との関係が問題になります。たとえばプラトン『国家』に登場す…