毒婦暦:邦枝完二 1915年(大4)時事新報に連載。 1916年(大5)日東堂刊。 (どくふごよみ)邦枝完二が23歳で新聞に連載した出世作。江戸時代に毒婦として記録された8人の女の小伝。8篇の内3篇は戯曲仕立てになっている。前に読んだ「江戸名人伝」と同じように、各人の人生の一場面を切り出して描くことで、その人物の性格や気質が肖像画のように浮かび出てくる妙味がある。ただし今回の場合は全員が悪事に染まった人間であり、甘言や裏切りで目的をうまうまと成就しても各話ともすっきりした感じにはならない。 人間の心理には「悪がはびこる」ことを肯んじ得ないという「勧善懲悪」の思考を抑えることはできない。それとも…