🌷懐妊した藤壺を寵愛する桐壺帝【源氏物語70 第五帖 若紫13】 初秋の七月になって宮は御所へおはいりになった。 最愛の方が懐妊されたのであるから、 帝のお志はますます藤壺の宮にそそがれるばかりであった。 少しお腹《なか》がふっくりとなって 悪阻《つわり》の悩みに 顔の少しお痩せになった宮のお美しさは、 前よりも増したのではないかと見えた。 以前もそうであったように 帝は明け暮れ藤壺にばかり来ておいでになって、 もう音楽の遊びをするのにも適した季節にもなっていたから、 源氏の中将をも始終そこへお呼び出しになって、 琴や笛の役をお命じになった。 物思わしさを源氏は極力おさえていたが、 時々には忍…