🪷葵上は冷たくなってしまった【源氏物語158 第九帖 葵31】あらゆる蘇生法を試すものの 葵上は亡骸であることを証明するだけであった。 これまで物怪《もののけ》のために 一時的な仮死状態になったことも たびたびあったのを思って、 死者として枕を直すこともなく、 二、三日はなお病夫人として寝させて、 蘇生《そせい》を待っていたが、 時間はすでに亡骸《なきがら》であることを証明するばかりであった。 もう死を否定してみる理由は何一つないことをだれも認めたのである。 源氏は妻の死を悲しむとともに、 人生の厭《いと》わしさが深く思われて、 所々から寄せてくる弔問の言葉も、 どれもうれしく思われなかった。…