「アーリア人」という言葉には、どこか胡散臭さがつきまとう。 ナチズム、人種主義、優生思想──。現代人にとって「アーリア」は、そうした負の歴史と切り離せない。しかし、本書を読み終えて強く印象に残ったのは、「アーリア」という観念ではなく、その担い手であったイランという文明の不思議な性格だった。 それは驚くほど**節操がない**のである。 もちろん悪い意味ではない。 イラン高原は古来、東西ユーラシアを結ぶ回廊だった。西からはギリシアとローマ、東からはインド、北からは遊牧民族、南からはアラブ世界。巨大な文明が次々と押し寄せる土地にあって、「変わらずにいる」という選択肢そのものが存在しなかった。 だから…