「宇宙食でいいよね」そんなふうに言っていた。宇宙食を食べたことはないけれど、私たち夫婦の意見は一致していた。それほど「食べること」に執着がなかった。「空腹を感じなければ、食べなくてもいい」──それが、ふたりの共通認識だった。 …少し矛盾しているけれど。私たちは美食家ではなかったけれど、美味しいものは食べたかった。ただ、話題の店にわざわざ出向くことはない。夫は新しい店を嫌い、外食もいつも決まった店だった。もちろん行列店には並ばない。「待つこと」ができない人だったから。 義母は料理が得意だった。懐石料理を自分で作り、見た目も鮮やかで品があった。夫のお弁当は、幕の内弁当ではなく“松花堂弁当”。職場で…