馬借に関する直接的な史料が残っているのは、前記事で述べた「浦・山内馬借」に関するものであるが、「存在感の有無」という形で最も有名なのは、やはり「坂本の馬借」である。 坂本そして大津の町は琵琶湖畔にあり、湖運を通じて多くの物資がこの港町に集まってくる。ここから京に至るルートは、東からの物流の大動脈であったのであり、その陸運の主力を担っていたのが「坂本・大津の馬借」だったのである。 「坂本の馬借」は京に近く、また比叡山に属する存在であったために、各種の史料に横断してよく名前が出てくる――のだが、史料そのものは断片的で、量もそんなに多くはない。坂本の馬借に関する史料はもっと残っていてもおかしくないの…