訓読 >>> 秋さらば今も見る如(ごと)妻ごひに鹿(か)鳴かむ山ぞ高野原(たかのはら)の上 要旨 >>> 秋になると、ご覧のように、妻恋の鹿の声が聞こえてくる山です、この高野原の上は。 鑑賞 >>> 長皇子(ながのみこ)が、自身の邸宅(佐紀宮)で従兄弟の志貴皇子と宴(うたげ)した時の歌。時期は不明。「秋さらば」は、秋になると。「今も見る如」は、今も見ている如くに。「高野原」は、奈良市佐紀町の佐紀丘陵から西南の一帯で、「高野原の上」は、佐紀山。「鹿鳴かむ」と詠んでいるのは、中国の詩集『詩経』に載っている、賓客を遇するときに詠じる『鹿鳴』の知識を取り込んでいるとされます。『鹿鳴』は、明治期に建てら…