高田渡(というもう亡くなってずいぶん経つフォークシンガー)に、日曜日に近くの川まで魚釣りに行き、日がな一日そこで過ごしている、という歌詞の曲があった。日曜日にはあの小川まで行き、朝早くから夕暮れまでずっと、糸を垂れている。酒を抱いて行って、日ごろのウップンを餌にして一日を過ごす。そういう内容の一番が歌われる。そして二番になるとそこに「ジイさん」が登場する。魚釣りの名人のジイさんは、糸を引き上げる時に、しわがれ声をおしこらえて全身に微笑を浮かべる。全身で微笑むというのに嘘がない、本当の微笑みたる小さな幸せのように思える。そして歌詞はそのあとに、多分ジイさんの糸が引き上げられると、ということだと思…