Touch of Evil
1958年、白黒
メキシコとの国境にあるアメリカの町で、自動車の爆破事件が起き有力者が殺される。事件に居合わせたメキシコ政府の高官ヴァルガス(チャールトン・ヘストン)が調査に乗り出し、やがてアメリカの警部クィンラン(オーソン・ウェルズ)の捜査に疑念を抱く。
映画の冒頭、3分18秒にわたるワンシーン・ワンカットのクレーン撮影は、映画史上つとに知られる有名シーン。自動車に爆弾が仕掛けられ、徐行で国境を越えようとするその自動車と、前に後ろに入れ替わりながら歩く主人公夫妻。多くの人でにぎわう国境を越え、ついに自動車が爆発するまでをサスペンスたっぷりに移動撮影している。わずかに見える空にはうっすらと明るさが残っており、夕闇が夜に変わる直前の一瞬を狙って撮影されたものとわかる。
アメリカでの興行は、映画会社の意向による監督の意に沿わない編集もあってかふるわず、オーソン・ウェルズはこの作品を最後にハリウッドを去ることになった。
一方ヨーロッパでは好評で、現在では、陰影を強調した絵作りで悪徳警官が破滅していくさまを描いたフィルム・ノワールの傑作とされている。