元禄7年10月21日。近頃、阿閉孫右衛門・近井義右衛門の噂が色々とあった。道具の華美は今さら切りがなかった。御老中の家老、大身衆はこの両人のところでもてなしを受けることも多かった。近井は料理を振る舞い、献立やそれぞれへの届物の日記が2人のところに残っていた。金を借りたり、その仲介をした者が多かった。阿閉は悪事に染まっており、近井は怖いもの知らずで、弁がたったと。今宵、朝倉忠兵衛が大殿様御下屋敷に参上し、鳴弦(お祓い)を行う。介添には林丹右衛門で、首尾よく勤める。忠兵衛に御褒美として、一度御召の綝子の御小袖ひとつ、白御服ひとつ、御帯ひと筋、御道具の入った長持まで下される。その後斎が始まる。来る2…