元禄9年6月7日。まだら雲が空を覆い、昼過ぎると雨が降り始め、夜も雨が降る。成瀬隼人正家来石原甚五兵衛・馬場五右衛門(弾七とも)・権平嫡子吉原助太夫の小番3人は江戸勤めの際、遊里に入り浸っていた。そのため隼人正は体裁が悪かった。この3人は用達藤江弥九郎を恨んでいた。この日も寄り集まって大酒を飲み、自分たちの悪事がばれたのも弥九郎のせいだと騒いでいた。今夜切り捨ててやると親類などに書置を遣わした後、夜半に弥九郎のところへ出かけた。門を叩いて隼人正の使いだ、急ぎの用があるから屋敷へきてほしいと言い残し、蔵王という場所で待ち伏せをした。程なくして弥九郎がやって来るが、3人は怖気づいてしまい、意見がま…