和紙と蒟蒻糊で作った直径10メートルの水素ガス気球に爆弾と焼夷弾を吊るし,高度1万メートルのジェット気流にのせてアメリカ本土を直撃する!昭和19年11月,悪化した戦局打開を図る起死回生の秘密兵器は,過酷な戦争の渦中とも思えぬ幻想的な姿を見せて,太平洋岸の三基地から飛翔していった.日本人に潜在する奇抜な頭脳と行動力の結晶…その誕生から終焉までを克明に描く――. 太平洋戦争末期,旧日本軍が独自に開発した「風船の軍事利用」.秋季から冬季には関東~東北にかけ,上空8,000メートルから12,000メートルの高度で偏西風が吹く.最速は時速300キロメートルに達する.これに乗じて,福島県勿来,茨城県大津,…