ヘヴィメタルのジャンル、ムーヴメントの一つ。「L.A. METAL」「LA METAL」
1980年代初頭からロサンゼルスのハリウッドからMOTLEY CRUEが誕生したことにより、それまでのヘヴィメタルバンドには存在しなかった、髪を逆立て、化粧といったグラムロックのようなメイクに、カットTシャツといった派手なルックスのバンドたちが登場する。'84年にはRATT、W.A.S.P.、DOKKEN、STRYPERなどが続々とデビュー、全米チャートでも健闘し、日本でも国内盤がリリースされ、その後来日公演も行うほど人気に。
キャッチーな楽曲、派手なルックスのメンバーとセクシー美女(?)が登場するPVがラジオやMTVで頻繁にオンエアされるようになり、それまで硬派、マニアックなファンが多かったヘヴィメタルにティーンや女性層を巻き込むようになったことで一大ブームを生むことになる。またRATTのウォーレン・デ・マルティーニ、DOKKENのジョージ・リンチら、個性豊かなペイントギターを愛器としたテクニシャンギタリストも注目を浴びるようになり、LAメタルは当時のギターキッズたちにも大きな影響を与えた。
ほかにもROUGH CUTT、KEEL、GREAT WHITE、LIZZY BORDENなど数多くのバンドが出てくるが、オレゴンのBLACK’N BLUE、アリゾナからはICONのように、各都市からLAへ活動拠点を移すバンドも多かった。ハリウッド周辺のWhiskey A Go Go、Troubadour、Country Club、Gazzari's、The ROXY Theatreといったクラブでは連日メタルバンドのショウがブッキングされており華やかであったが、WARRANTがデビューする'88年あたりに異変が起こる。GUNS N' ROSESの登場により、メイクするバンドが激減し、タトゥーやウェスタンブーツといったワイルドでバッドボーイなスタイルで、ブルージーなR&Rを演奏するバンドが多くなる。
その後もPRETTY BOY FLOYD、TUFFといったLAメタルのムードを残すバンドも登場していたが、1990年代に入るとストリートR&R系バンド、さらには'90年代の象徴であるグランジのムーヴメントにシーンを完全に奪われることになる。
現在では当時のLAメタル系バンドをその髪型から「ヘアバンド(hair band)」などと多少軽蔑した表現で称されることもあるが、RATT、POISONなどツアーを行っている現役のバンドも存在している。
尚、LAメタルと謂う呼称は日本のみで、海外では「グラム・メタル」や、「ヘア・メタル」と呼ぶ。
Hollywood Rocks: The Ultimate Guide to the 1980's Hollywood, California Rock-N-Roll Music Scene
ヤング・ギター・アーカイヴ (Vol.1) LAメタル (シンコー・ミュージック・ムック)