Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

郵政社長人事雑感

すでに報じられているとおり、亀井静香金融・郵政担当相が、元大蔵事務次官斎藤次郎氏を次期日本郵政社長に起用することを発表しました。
この人事については、斎藤氏が細川政権時代に小沢一郎幹事長と関係が深く、細川政権崩壊のきっかけとなった国民福祉税導入にも深く関わっていたことから、小沢氏の意向ではないかという声も聞かれます。*1
しかし僕は、斎藤氏が大蔵省出身で、かつては「10年に一度の逸材」と言われたほど能力のある人物であることを考えると、「財務省が郵政を握った」という見方の方が重要ではないかと思います。
1990年代まで、郵便貯金の莫大な資金は財政投融資制度を通じて、大蔵省資金運用部によって特殊法人に融資されていました。その際、融資に対する金利国債金利よりも1%上乗せすることで、郵貯事業は収益を得ていました。この上乗せ分は税金から出ていたわけです。2001年に郵貯は自主運用に変わり、上乗せ金利も打ち切られたことから、郵貯が赤字にならないために民営化が行われたわけです。


しかし、どうも今回の人事はこのような歴史の流れを反転させて、「新財投」とでも言うべき制度への一里塚となるのではないかと疑っています。かつての財投では大蔵省資金運用部が運用を行っていたわけですが、「財務省が郵政を握った」となると、日本郵政がかつての資金運用部の役割を果たすことになるのはないかと思います。皮肉にも郵貯の「自主運用」が財務省の権限を強めてしまうわけです。
もっとも僕の予想が当たるかどうかは分かりませんが、今後「郵政改革見直し」の名の下に郵貯の資金を誰が握ることになるのか、注意して見た方が良いと思います。

*1:この話については、id:finalventさんの「元大蔵事務次官斎藤次郎・日本郵政社長: 極東ブログ」が詳しいです。

普天間基地問題雑感

「溜池通信」の「かんべえの不規則発言」で、かんべえさんがこんなことを言ってました。

<10月23日>(金)


(中略)


○そもそも、国同士で決めた「日米同盟再定義」に対して、「われわれはその当時、野党として反対していた」と言ってみたり、「核の先制不使用をアメリカに働きかける」などとゴーマンかましてみたり、最近の岡田外相の発言は「アンタ何様?」という印象がある。インテリジェンス畑出身で、冷静さには定評のあるゲーツ国防長官も、「やってられね」とあきれ返っているのかもしれない。

○ではこのまま放置しておくと、日米関係はどうなるのか。過去にもドイツやフランスや韓国など、いろんな国で「親米政権からそうでない政権へ」という交代はありました。そういうときのアメリカの対応は、しばらくは様子を見る。それでどうにもならんとなったら、さすがに引いていく。今度のケースで行くと、「米軍再編はやめました。グァム移転もしません。このまま普天間に居座ります」となるのではないか。それでは国益を損なうことになってしまいます。

○新政権には、何とかこの辺の事情を学習してほしいと思います。でないと細川政権と同様に、「日米関係でつまずいて短命政権」てなことになりかねません。知らないこと知らないと、少し謙虚になって周囲の意見を聞いてみる方が良いと思いますぞ。

かんべえの不規則発言



確かに普天間基地辺野古沖への移転は、海兵隊グアム移転などの米軍再編の一部ですから、鳩山政権があくまでも反対を貫くなら、アメリカが「だったら全部やめた」となる可能性もありますね。これはオバマ大統領訪日中止*1よりも由々しき事態です。
確かに沖縄の基地負担を軽減するために、米軍基地を県外や国外に移転しろというのは正論ですが、今回の再編が中止になってしまうとアメリカの反発が強まってしまうので、国外移転はもはや困難になってしまいます。また県外に移転するにしても、移転先の候補すら出ていない状況では実現は非常に難しいでしょう。ちょっとでも移転先候補の地名が出ようものなら、その地域の反対運動が手をつけられなくなるのは間違いないですしね。社民党あたりは真っ先にその反対運動に乗っかるでしょう。
そうなると、今後、沖縄の負担を軽減することは非常に難しくなります。


だから少しでも沖縄の負担を軽減しようとするならば、今回の米軍再編は受け入れて、むしろもう一つの大きな問題である日米地位協定改定問題で、アメリカに譲歩を迫る方が得策だと思います。地位協定改定で問題となっているのは、取り調べの際に弁護士立ち会いを認めないといった、人権の対する配慮が低い(少なくともアメリカはそう思っているでしょう)日本の捜査のあり方ですが、この問題は自民党政権よりも民主党政権の方が解決しやすいでしょうから。

*1:もしオバマ大統領が日本を素通りして中国へ行ったら、クリントン時代の「ジャパン・パッシング」の再来となり、これはこれで困った事態ですが。