友好150年の使者フランス艦隊来航

Blueforce2008-04-09

本日、フランス海軍のドック形強襲揚陸艦ミストラルFS Mistral L9013と駆逐艦デュプレクスFS Dupleix D641が東京港15号地若洲木材埠頭に寄港した。
本年は開国直前、1858年に日仏修好通商条約が調印されて150年目の年ということで、日仏友好150周年を記念して日本でもフランスでも数々の催し物が開催される予定だが、今回の寄港は公式行事ではないものの、この記念の年に外交儀礼として派遣されたものと思われる。当初の予定ではまさかの大物!?も検討されていたようだが、実際に来航したのは、それにはさすがに負けるが常連のタヒチニューカレドニアの南太平洋部隊ではなく、本国からはるばるやってきた最新鋭の初訪問艦であった。

0700過ぎ、東京港第3航路を木材埠頭に向かって入港するミストラル。本来、前日の8日1000に入港の予定であったが、当日は関東各地で4月の最大降水量記録を更新!したというほどの大荒れの天気、風も強く湾内までやって来たものの、乾舷の高い船体が災いして?水先人を乗せることができず岸壁を目前にしてアウト! 錨地で一夜を明かしたらしい。
今回、平日の入港につき、どうしても休めない時期なので日曜日に予定されている出港のみに焦点を絞り、出港は見送ることにしていたのだが、1日ずれたことにより、1000の入港予定が早まることが予想され、先日の東京湾フェリーでの出勤前撮影に続いて休まずに朝方撮影で済ませることができるかと期待して行ってみたところ・・・狙った通りの結果になった。フネもヒコーキも、予定が変わったり天気に翻弄されたりして、鉄板の勝負に負けたりすることもあるけど、こういう無欲の勝利というのも時々あるから面白い。

乾舷の高い独特のフォルムを初めて日本に現したミストラル。同艦は老朽化が進んだウラガン級揚陸艦2隻の代艦として、同数の2隻が建造されたフランス海軍初の強襲揚陸艦ネームシップの当艦ミストラルは2006年12月、2番艦のトネルTonnerre L9014は2007年3月就役と、文字通りの最新鋭艦である。今回の来航にあたって、2隻とも東アフリカの旧仏領であるジブチに寄港しており、どちら来るかは比較的直前になるまで不明であった。もちろん、どちらの艦が来てもクラス自体が初来日となるわけである。
満載排水量は2万1,500t、全長199m、建造中の海自「ひゅうが」より排水量で2割方大きく、また同種のドック形揚陸艦である「おおすみ」形のほぼ倍という極めて大形の艦で、ヘリ8機、艦内のウエルドックにCTM・LCM級揚陸艇4隻、車両60両、揚陸部隊450名を搭載可能という。ちなみに、フランス海軍はホバークラフト形揚陸艇・LCAC保有してはいないが、ウエルドック自体の規格はLCACが2隻収容できるように設計されている。
主機はディーゼル、推進システムはポッド式推進器2基を備えたディーゼルエレクトリック方式で、エンジン出力は1万9,000馬力、これにより発電器を回転し生み出した電力を推進用と艦内電源用に配分する、これからの艦艇推進システムの主流とされる統合電気推進方式を採用しており、360度回転可能なポッド式推進器のため舵は装備していない。また、艦首にはバウスラスターを装備している。速力は19ノット。船体は建造費低減のため、商船構造とのことである。

アイランドのアップ。ガラス張りで展望室のような上部ブリッジが目を惹く。マストは最新鋭艦らしくモノコック構造。前部マストのトップに装備されるのが恐らく対空捜索・また自己防衛システム用のMMR-3D多機能レーダー。煙突はディーゼル艦のため複数の排気筒を持つが、ファンネルのフェアリングを持たずフレームで囲む独特なスタイル。

若洲海浜公園、建設中の東京港臨海大橋の橋脚の間を縫って港内に入るミストラル。今回、友好150年の記念すべきイベントのはずなのに、こんな「辺境」とも言っていいような「木材埠頭」に入港する羽目になったのは、東京港の表玄関である晴海に入るに当たって、大型艦の最大の難関、虹の橋が立ちはだかったため。マストの高さが満潮時の安全マージンに不足しているのに加え、喫水も不足気味なのだとか。
長らくフランス艦艇の海外ツアー充当艦として日本にも数多くの来航歴があるヘリコプター巡洋艦ジャンヌ・ダルク*1も、やはりマストトップが虹の橋に引っかかると完成後には晴海へは入港できなくなり、そのためかどうかすっかり来航が減ってしまった。私が最初に乗った軍艦がジャンヌ・ダルクだったし、本当に、昔は毎年飽きるほど見られたのだ。だから、フランス海軍は決して日本、東京には縁遠い存在ではなく、艦齢も高く退役も近いジャンヌ・ダルクに代わって、また毎年のように来航してもらいたいと思うが・・・ここ木材埠頭にも数年後には東京港臨海大橋が立ちはだかるわけで、こちらのクリアランスは大丈夫なのだろうか。橋脚とマストの関係が見るからにヤバそうだが・・・
なお、今回の入港に際しては、艦の入港期間中ミストラル搭載のヘリ3機、海軍のSA319BアルーエトIII×1機と陸軍のSA341・342ガゼル×各1機が海自館山基地に親善訪問を行う予定であったが、8日の悪天候のため飛来は中止され、予備日程などを設けていないために全面キャンセルされている。

続いて0730過ぎ、ミストラルよりずっと沖に泊まっていたデュプレクスが入港してきた。アクアラインの換気塔、風の塔が後方に見える。

当艦はフランス海軍が7隻保有する対潜汎用駆逐艦、ジョルジュ・レイグ(C70)級の2番艦で、1981年6月就役した。基準排水量3,550tと「あさぎり」型とほぼ同じ、登場時期は「はつゆき」型とほぼ同じというアウトラインを持ち、空母や戦略ミサイル原潜など金のかかる装備が多いために、伝統的に水上戦闘艦の数が少ない2次大戦後の同海軍にあって大型艦では最大の隻数を持つクラス。
主機はCODOG、ガスタービンオリンパスTM3B×2基・5万3,000馬力、ディーゼルはSEMT-ピールスティック16PA6 CV280×2基・1万400馬力と、高速用ガスタービンエンジンはこれも「はつゆき」型と同じオリンパスを装備する。

兵装は前甲板にモデル1968-II・100mm55口径単装砲を1基、SM38エグゾセ艦対艦ミサイル×4*2(写真で左端)、以前紹介した中国海軍の駆逐艦シンセンも装備していたクロタル短射程艦対空ミサイル(8連装発射機・この写真には写っていません)、20mm単装砲(マストと煙突の中間に見える)、220mm魚雷発射管×2を装備する。武器やセンサー類については後日、出港編でやりますので、お楽しみに。

アキバと並ぶオタクの聖地、東京ビッグサイトをバックにしたデュプレクス。フランスはイタリアと並んでオタク文化が盛んな国である。乗組員の中にも左手に見える異様な格好をした建物が何なのかを知っていて、熱い視線を送っている人がいるに違いない。マストに掲げられた信号旗は、手前は同艦のコールサインであるF・A・D・L、奥は上から回答旗?・Hと、もうひと組、第2代表旗?とL、のように読めるが、第2代表旗が頭にくるなんてあり得ないし、どう読めばいいんだこれ!?
さて、本日の仕事はこれにて終了、あとはまたこの間と同じようにオマケの本業に・・・長く続くフランス艦隊密着追っかけシリーズ、いよいよ開幕!

*1:平時には練習艦として運用される

*2:後期建造艦は8基・また新形のMM40を装備