続「法科大学院認証評価」の読み方

日弁連法務研究財団による法科大学院評価が話題になったと思ったら*1、その翌日に「大学評価・学位授与機構」による法科大学院認証評価の結果が発表された(談合してるのかと・・・(笑))。


報道されているとおり、北海道大学千葉大学一橋大学香川大学愛媛大学連合)の各法科大学院に「不適合」という結果が出ている。


この中でも特に北大や一橋大といった大学は、いずれも学部教育の伝統を有し、法科大学院制度導入後も個性的な制度運営で知られていた学校だけに、驚きを持って受け止める方もいらっしゃるのかもしれないが、「不適合」の理由として挙げられているものの中身を見れば、

北海道大学大学院法学研究科法律実務専攻は、大学評価・学位授与機構が定める法科大学院評価基準に適合していない。
理由:基準6-1-4を満たしていないため。
その具体的な内容は、次のとおりである。
○入学者選抜において、3年課程と2年課程を併願した場合の3年課程の選抜については、法学未修者に対しても学修評価枠において主として法律科目試験の成績が考慮されており、法科大学院において教育を受けるために必要な入学者の適性及び能力等が適確に評価されているとはいえない*2

と教育内容そのものとは無関係の理由だったり、

一橋大学大学院法学研究科法務専攻は、大学評価・学位授与機構が定める法科大学院評価基準に適合していない。
理由:基準3-1-1及び基準3-1-2を満たしていないため。
その具体的な内容は、次のとおりである。
○法律基本科目に配置されている一部の授業科目について、同時に授業を行う学生数が適切な規模に維持されていない。(基準3-1-1及び基準3-1-2関連)

と都内のブランド校にありがちな理由だったり、と、そんなに大騒ぎするような話でもないだろう、と個人的には思っている*3


この種の評価の見方については、先日のエントリーで書いたとおりなのだが、さらに付け加えるならば、むしろここで注目すべきなのは、報告書に記載されている「優れた点」だろう。


例えば、北海道大学については以下のような記載がある。

当該法科大学院の主な優れた点として、次のことが挙げられる。
○知的財産法分野について、文部科学省「21世紀COEプログラム」の「新世代知的財産法政策学の国際拠点形成」と連携して、授業科目「知的財産法」、「現代知的財産法A」、「現代知的財産法B」、「現代知的財産法C」及び「現代知的財産法D」において、特許法著作権法だけでなく不正競争防止法や商標法に及ぶ授業内容が展開されている
○すべての専任教員の授業負担が年間20単位以下にとどめられている。
自習室については、学生総数と同数以上の自習机が整備され、十分なスペースが確保されている。
○学生の自習机からパソコンを使用して図書及び資料を検索することが可能であるほか、自習室と法科大学院図書室の距離が近いことから、自習室と法科大学院図書室との有機的連携が確保されている。

そもそも「知的財産法」という科目を設けている法曹養成大学院で、「商標法や不競法を十分に教えていない」とすればそれは由々しき事態である。


特許がらみの紛争に弁護士が関与する機会は決して多くない*4し、紛争の内実としても、商標法や不競法に関する事件の方が、純粋な「法律家」の素養が試される余地は、圧倒的に多いからだ。


ゆえに、本来ならあえて「優れた点」として挙げるような話ではないと思うのであるが、現状が必ずしもそのようなニーズを満たす状況になっていない中で*5、行うべきことをきちんと行っている、という点は、やはり強調されてしかるべきであろう。


あと、最後の二点については、これらが満たされてさえいれば、自分で勉強できる学生にとっては必要十分とも言えるわけで*6、少なくとも「知財法を積極的に勉強したい学生」の視点から見れば、上記3点だけで十分2〜3年投資するに値する大学、ということが言えると思う。


「不適合」という見かけに騙されてはいけない。


そして、個々の「不適合」事由の違いを看過して、

「教育の質には改善の余地がありそうだ」(日本経済新聞2008年3月28日付朝刊・第42面)

と括ってしまうのは明らかにミスリードだと思うのである。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20080327/1206636184

*2:http://www.niad.ac.jp/sub_hyouka/ninsyou/hyoukahou200803/houka/hokkaido_h200803.pdf

*3:対応を迫られる当事者の方々には気の毒な話だと思うのだが。

*4:基本的には弁理士の職域だと思ったほうが良い。特に審決取消訴訟なんてものはなおさらだw

*5:これは東大、京大といった学校でも同じ。

*6:逆に言えばそれが「優れた点」になってしまうあたりに、現在の法科大学院生の置かれている環境の貧困さが如実に顕れているわけだが・・・。

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