「午前3時の無法地帯」2巻と、女性誌の漫画の流れと雰囲気の魅力



午前3時の無法地帯(2)/ねむようこ(Amazon)


FEEL YOUNG」の注目作「午前3時の無法地帯」の2巻が出ました。
今月の本誌でもセンターカラーです。
これがねむようこさんの2冊目の単行本なんですよね。
1巻が出たのはこの間な印象があります。早いなぁ。


フィーヤンの雑誌カラーはオシャレな系統なんですが、「午前3時の無法地帯」は尖りすぎていない感じが面白さになっています。
私は「サプリ」みたいな独特の演出や、女性向け漫画ならではの表現も大好きです。
でも、この漫画はそういう華やかな演出は控えめで、主人公のももこのイメージと通じる部分があるんですよ。
作品全体と主人公の感じが似ている。
個人的に面白いと思う漫画を改めて考えると結構そうなんですが、そんな丁寧さがあります。



さて、2巻では話にかなり大きな動きがあります。
それを明かすと結構なネタバレになるので伏せて感想を。
伏せてますけども、ちょっとネタバレになってしまっていますのでご了承ください。

恋をすれば力になるし、不安にもなる

ブラックなデザイン会社に勤め、浮気されて元カレと別れたももこの癒しは、同じビルに入っている別の会社に勤める多賀谷さんです。
何というかクマみたいな、穏やかな優しさがあって包容力を感じる男性。


失恋の傷心と日々の激務に追われたももこにとって、気にかけてくれて、仲良くなり和む異性の多賀谷さんに惹かれるのは自然なことでした。
しかも、納期に追われ、ミスを怒られ、変人だらけの同じ会社の人間じゃないときたら!
恋をすれば日々楽しくなります。
毎日ハードな仕事だって、職場付近に好きな人がいて、しょっちゅう食事を一緒にできるとなれば、辞めずに頑張れるってものですよ。



でも、一緒に遊びに行ったりして好意を仄めかしても、正面から応えてくれない。
気持ちを伝えても、好きと言ってくれない。
キスはしても、その先は手を出してこない。
一線を、引かれている。


多賀谷さんと同じ会社の第三者から、彼には秘密があるっぽいことを言われたことがグルグル回っているのですよ。
気になる人、好きな人のそんなことを含みを持たせて嫌味っぽく言われたら気になって気になって、気が気じゃいられません。
そういう判りやすい伏線を張られたら、不穏な展開になるに決まっています。
まぁ、この漫画は仄めかしてはすぐに消化するので、それほど大きな伏線ではないですが。

女性誌のメタファーの雰囲気と流れの魅力

2人で食事に行った先で、ももこの喉に魚の小骨が引っかかりなかなか取れません。
「そのうち取れるよ」という小骨。
その時は取れてませんでした。


「後で解決するだろうけれど、今は引っかかること」という判りやすいメタファー。
午前3時の無法地帯」に限ったことではないのですが、女性誌の漫画はこういった演出が魅力的です。
読者にとってはとても判りやすいメタファーですが、登場人物にとっては日常の何気ない出来事のひとつなんですよ。
さきほどの「次の話で消化される伏線」もそうなんですが、これらは雰囲気と流れを作る要素になっています。



2巻で見てみると、


主人公への、第三者による好きな人の秘密の仄めかし

当事者を介さないところでの秘密の判明

小骨のメタファー

主人公の友人の問題のある恋愛話

秘密が、友人と同種の問題


という要素が1話ごとに入っており、通して読むとすごく流れが良い。
多くの巻数を重ねる漫画が少ない雑誌では、こういった流れが良い作品がかなりあります。
もちろん、初期の伏線が終盤になって回収される作品もあります。
どちらも読んでいて気持ちが良いんですよね。
上手い短篇にも通じる気持ち良さ。
雰囲気ともども好みにハマればすごく面白いです。
だから私は女性誌の漫画も大好きなんだよー!



こんな感じでテンポ良く進み、多賀谷さんの秘密もももこの知るところとなってます。
好きな人ができて気持ちが高揚すれば落とされます。
落とされたら次は…。
来月あたりの本誌で浮上を始めそうで、楽しみですよ。