読書録

読書整理用のダイヤリーから移行しました19/1/26土~

男はなぜこんなに苦しいのか

 ネットの普及で従来の営業手法が通用しない、終身雇用と年功序列の崩壊とリストラの圧力、成績主義の導入で頑張っても査定は相対評価で下がる、女性の社会進出で職場や家庭でのストレス増加など、時代の変化の中で、かつては大黒柱として期待されていた男のあり方が変化し、新たなアイデンティティを模索しないと、とても生きづらい世の中になってきたことが、さまざまな事例から浮かび上がる。


発行所の朝日新聞出版のサイト⇒ http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=17694


 先に読んだ以下の本とも共通するのは、従来の「男」に求められた「強く動じず」というあり方を、柔軟に考えていくということか?
『男性漂流』( http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20160202 )や
『執着 生きづらさの正体』( http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20151220


 とても盛りだくさんの内容で、備忘録として以下をメモ↓
◇タバコをやめろと否定されることで生じる不安感や不快な思いは、「不安を軽くし怒りを和らげる作用」があることから、逆に吸うことへの引き金になりかねねない。提案として、1)タバコを吸う時間帯など記録し、2)心が熱中できるものをタバコ以外に変え、週末に何か興味あることを作ることで、ドーパミン効果やリラックス効果を得て、3)依存となるトリガー(居酒屋や吸う友人など)を探しそこから距離を置くp46-49


◇1969年に発表されたピーターの法則p57は、能力主義の階層社会では、能力の限界まで出世してしまうと、有能な平社員は無能な中間管理職になる、別な能力が必要→p62:昇進に伴う環境変化に適応できる柔軟性が十分かどうかの把握がキー


◇人事評価が頑張ってもCで違うことを言われやる気をなくすケースがあり、p74:「相対評価は本来ならまずまずという業績の人をランクを落として評価することにもなり、これが社員のモチベーションを失わせたり、プライドを傷つけてしまうことになる」⇒p77:仕事のプロセスを認め目標を明確にした評価を行わないと、せっかくの優秀な人材を失うことになる←これはまさにかかえている問題かと感じる部分がある。


◇職場の雰囲気や、同僚同士、上司とのコミュニケーションは、メンタルヘルスにおける重要なポイントであるp81→「あいさつ」で出向いたときに雰囲気でわかるp112→メンタル部分の改善は、確実に生産性をアップさせるp262〜「働いている人に対する思いやりと一体感、モチベーションを上げるための対策で、あいさつや情報共有など。 トップがプロセスや努力をわかってくれるという安心感が、不安を取り除く〜265


◇著者は、ベストセラーになった「鈍感力」には反対で、繊細や感じやすい男性も生き残れるようにすべきとも主張している(p92)。こうした男性を支援するために、直接、情報、共感の各支援と、援助への期待という4つの種類があると紹介する(p100)⇒アメリカ人のカウンセラーの教えとして、「頭上にオレンジ1個p107」、自分の目をそこから見るようにすると物事が変化して見え、相手の感情に巻き込まれないようにするための手助けになる←というのは覚えておきたい。


◇コントロールタイプの中間管理職は、一過性には業績を上げることは確実だが、長期的に見ると組織内の雰囲気が悪化し、社員がモチベーションを失って業績の悪化が予想されるp133→上司は自慢話はしてはいけない、きちんと聞く部下を評価するp135(入稿した原稿のミスで、当時の学長は怖れずにどんどん進めという=すべての責任を引き受けるのが究極の上司で何度もない)


マズローの欲求五段階説のトップは「自己実現願望」だが、その上のより高次な「自己超越願望★」として、「★自分がしていることが他人の幸せに貢献するような次元の人生」を指摘p178←このところ読んだり見たりしている、「幸福論」も、まさにこの部分が充足されないと得られないのではないかと感じる。


◇配偶者に求めることの性差として、『パートナーと気持ちが100%通う10の法則』(三笠書房 ウィラード・ハーリ博士)があり、男性は妻に魅力的な女性を、女性は夫に愛されていることを感じさせてくれる表現をしてくれることを第一に求めるというp191→夫は妻にコミュニケーション不足の解消として、1)金とモノで解決したと思わず感謝とねぎらいを、2)相手に対する関心、3)手伝えない時は相手をねぎらうp200


◇喪失を救う「つながり」p222→SNSで影響を受けやすいのは女性p229、フォロワーが多く使用頻度が高いほど充足感は強い→p241『ツイッター幸福論』( http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20120227 読んでいたことを検索で思い出す…)研究で、気持ちが前向きになる人たちは、現状を客観的にとらえ、なるべくポジティブな言葉で投稿p241


◇カラセクのジョブストレインモデルp235、縦軸に仕事のコントロール(自由)度、横軸に仕事の要求度で、自由度が高く要求度が低い左上が新入社員や異動直後など最もストレスをためにくい。要求度が高い研究職やCEOは、忙しいが元気。要求が高く自由度が低い消防士など右下は、ストレスをためやすい。どちらも低い左下は管理人など成長機会に乏しい


◇ストレスを消す5つの基本は、p249、1)深呼吸、2)適度に体を動かす、3)睡眠、4)金庫地を話せる仲間や家族、5)自然とのふれあい→ストレスのリジリエンス(傷ついても回復する力)のポイントは、p253、1)性格傾向、2)もののとらえ方、3)サポートしてくれる人の有無
日本医科大学のホームページを参照→ http://home.nms.ac.jp/stress/index.html
(性格傾向の把握で交流分析の説明ありp254 5つの要素など 略)
★危機を救う「首尾一貫感覚p257=SOC:Sence of Coherence」アントノフスキーによるナチ強制収容所体験をしても不調に陥らなかった人30%の特徴
1)把握可能性「将来や先行きの見通しがつく」
2)処理可能感「何があっても何とかなるという思い」
3)有意味感「出合うことや起こることには何か意味がある」
→「こういうことは起こりうることで、しかし自分はなんとかやっていけるはずだし、このことは大変でも意味があることだ」と思い、挑戦だと受け止めて乗り切っていけるような資質p258+汎抵抗資源として、客観性、社会とのつながり、知識やサポートへのアクセス、情報を得ることができるスキルなどを柔軟に活用し乗り切ることが回復力になる


←この部分は、小澤竹俊さんの『いのちはなぜ大切か』( http://d.hatena.ne.jp/MrBooPapa/20080314 )に出てくる、人を支える3つの柱「将来の夢」(時間の柱)、「大切な人との関係」(関係の柱)、「自分の自由」(自律の柱)の3つを、また思い出した。


{4/17-22読了、記入は24}