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2018-01-25 ●平成28(ワ)5739 意匠権・民事訴訟「美容用顔面カバー」平成29年2 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成28(ワ)5739 意匠権・民事訴訟「美容顔面カバー平成29年2月7日 大阪地裁』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/502/086502_hanrei.pdf)について取り上げます。


 本件は、意匠権侵害差止請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、裁判所の争点(1)(本件意匠と被告意匠の類否)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官 森崎英二、裁判官 田原美奈子、裁判官 大川潤子)は、

『1 争点(1)(本件意匠と被告意匠の類否)について

(1) 登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされており(意匠法24条2項),この類否の判断は,両意匠を全体的に観察することを要するが,意匠に係る物品の用途使用態様,更には公知意匠にない新規創作部分の存否等を参酌して,当該意匠に係る物品の看者となる需要者が視覚を通じて注意を惹きやすい部分を把握し,この部分を中心に対比した上で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かによって類否を決するのが相当であると解される。

(2) 被告意匠の構成態様について

 ・・・

基本的構成態様

 ・・・

イ 具体的構成態様

 ・・・

(3) 本件意匠の要部について

ア 美容用顔面カバーの用途,使用態様

 ・・・

イ 公知意匠について

 証拠(乙1,乙5,乙6,乙8,乙9)によれば,顔の輪郭に合わせて外側に凸となる曲線の形状をしたシリコン樹脂製シートのパック用マスクであって,目,鼻,口部に孔が開けられ,耳部には,紐状の耳掛け部があるもの(乙1)や,人の顔と同型の,顔の輪郭に合わせて外側に凸となる曲線の形状をしたラテックス製の美顔用面であって,目,及び鼻孔部に孔が開けられ,耳部には耳を覆うように面の輪郭が一体形成され,顔面に当接させる耳掛け部として,長楕円形の開口部が設けられているもの(乙5)が,公知意匠として存在していたこと,また,シート状の不織布等を素材とするフェイスマスクにおいては,鼻部が孔でなく,鼻尖部でコの字状に切り込みを設け,鼻の形状に合わせて隆起する形状のものが公知意匠として存在していたことが認められる。


ウ 本件意匠の要部の認定

 美容用顔面カバーの用途,使用態様のほか,上記認定に係る公知意匠からすれば,本件意匠の基本的構成態様は,本件意匠に係る物品である美容用顔面カバーにおいて,通常考えられる形態であって新規な形態とは認められず,本件意匠において新規で創作性の認められる部分は,その具体的構成態様における以下の点,すなわち輪郭の形状において,こめかみから顎上部にかけて外形に沿った凸状の筋が設けられている点,鼻部において,鼻の形状に合わせて両目付近から鼻尖部まで連続的に隆起しており,隆起部分の脇に谷折りとなる略直線を構成する点,耳部において,耳を開口部の外形に沿って凸状の筋が構成されている点という具体的構成にあるといえる。


 そして,上記(1)の美容用顔面カバーの需要者が選択時に物品が顔にフィットする形状であるかとともに,使用状態に影響する目,鼻及び口の部分の形状,さらには装着のための耳掛け部の形状に注目することを考慮すれば,顔面にフィットするよう立体的に形成された美容用顔面カバーにおける鼻部の具体的な形状,耳掛け部周辺の具体的形状が需要者の注意を最も惹く部分であり,これらが本件意匠の要部であるといえる。


(4) 本件意匠と被告意匠との対比

共通点

 ・・・

差異

 ・・・

ウ 以上により検討するに,被告意匠と本件意匠の上記イ認定の差異点は,上記(3)で認定した本件意匠の要部にもかかわるものであると認められる。そして,その中でもとりわけ,被告意匠は,鼻部において,両目部の孔の内側付近から鼻尖部まで連続的に隆起し,正中線に沿ったその頂点の折り込み線が,明確な鼻梁を構成している上,両目部の両端,あるいはハート形である口部に尖った形状の部分が現れることも合わさって,全体に鼻筋の通った引き締まった顔立ちの印象となっているといえるのに対し,本件意匠は,鼻尖部が丸型であり,また鼻梁を明確に認識できないだけでなく,両目部及び口部がいずれも単純な楕円形であることから,全体にのっぺりとした印象を与えるものであるといえ,これらから,両意匠を全体的に観察した場合,看者である需要者に与える印象は異なっているということができる。


 したがって,両意匠は類似するということはできないというべきである。


結論

 以上のとおり,被告意匠は本件意匠に類似せず,被告に意匠権侵害が認められないから,その余の点を判断するまでもなく,原告の被告に対する請求はいずれも理由がない。


 よって,原告の被告に対する請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。

2018-01-24 ●平成28(ワ)675 損害賠償請求事件 意匠権「靴底」民事訴訟 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成28(ワ)675 損害賠償請求事件 意匠権「靴底」民事訴訟 平成29年2月14日 大阪地裁』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/618/086618_hanrei.pdf)について取り上げます。


 本件は、部分意匠の意匠権に基づく損害賠償請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、意匠の類否の判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官 森崎英二、裁判官 田原美奈子、裁判官 大川潤子)は、

『1 争点1(被告意匠は本件意匠と類似するか)について

(1) 本件意匠の構成

 ・・・

(2) 本件意匠の要部

意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するが,その際には,意匠に係る物品の性質用途使用態様,さらに公知意匠にはない新規創作部分の存否その他の事情を参酌して,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と相手方意匠が,意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを観察することが必要である。


イ そこで,まず,本件意匠の要部がどこにあるのかについて検討すべきところ,本件意匠に係る物品は靴底であって靴の一部を構成するものであるが,後掲の各証拠によれば,つま先部に比して踵部に厚みのある靴底において,?靴底の周に溝等を刻むことにより複数の層を重ね合わせたように見せた靴底(乙8から乙13),?複数の層を重ね合わせ,うち一枚の層の厚みを変化させることにより踵部に厚みを持たせた形状とした靴底(乙13),?正面視において,ミッドソールが3層に分かれ,踵部から土踏まず部までをA層からC層の3層構造,土踏まず部からつま先部までをA層及びC層の2層構造とする構成の靴底(乙13),?正面視において,ミッドソールが3層に分かれ,踵部から土踏まず部までをA層からC層の3層構造,土踏まず部からつま先部までをB層及びC層の2層構造とする構成の靴底(乙14)が公知であることが認められ,これらからすると,踵部に厚みのある靴底において,複数の層を重ね合わせ,あるいは重ね合わせたように見せた靴底はありふれたものであり,土踏まず部付近を境として,ソールの層数を変化させる構成自体も,そのような靴底のなかで,厚みを変化させる一つの手法ということができ,

 したがって,本件意匠のうち基本的構成態様そのものは,新規な創作部分ではないということができる。


 そして,そもそも靴底及びこれと一体となった靴は,その用途目的に応じて基本的な形態が定まっているものであることからすると,需要者は,まず,その購入目的に沿った基本的な形態の靴の類型を選択し,さらに,その中で具体的形態の差異に注目するものと考えられるから,このような観点のもと,上記公知意匠を踏まえて本件意匠についてみると,本件意匠については,?靴底を構成する3層のソールの側面がいずれも膨らむような形状を有していて,?正面図において,A層右上端部とB層右下端部,B層の右上端部とC層の右下端部がそれぞれ連続し,背面図においては,踵部のA層左上端部とB層左下端部,B層左上端部とC層左下端部がそれぞれ連続し,その境目を凹部分とした略「く」の字型を形成しており,?右側面図において,A層左右上端部とB層左右下端部,B層左右上端部とC層左右下端部はそれぞれ連続し,その境目は凹部分とした略「く」の字型を形成しており,?左側面図において,B層左右上端部とC層の左右下端部が連続し,その境目は,直線に近い略「く」の字型を形成しているものであることに特徴がみられ,この具体的な形状に需要者の注意が惹かれるものと認められる。そして,本件意匠は,これら四つの要素が相俟って,需要者に対し,3層のソールの1層ごとが,革素材の部材を実際に重ね合わせたように見せるとともに,全体としての一体感を保ち,全体に丸みを帯びた柔らかな美感を起こさせているということができる。


 したがって,本件意匠の要部は,前記?を基本として,?ないし?の特徴が出るようA層ないしC層を重ね合わせた点にあるというべきである。


ウ なお原告は,本件意匠において,A層が上部から底部にかけてなだらかな丸みを帯びた面からなるやや末広がりの形状とした構成も要部であると主張するが,その形状は右側面図から十分は看取し得ず,またその形状だけでは靴底の形状として際立った特徴というには足りないから,これが,需要者の注意が惹かれる特徴的な構成とまでは認められず,前記のように,そのような形状のA層とそうでないB層との関係性において,その接合する形状が略「く」の字型を形成する構成とすることによって,革素材の部材を実際に重ね合わせたように見せる特徴として評価されるべきであるから,この点だけを取り出して要部ということはできない。


(3) 被告意匠の構成

 証拠(乙1,乙2,乙4)及び弁論の全趣旨によれば,被告意匠の構成態様は,次のとおりと認められる(被告は,「靴底」を物品とする本件意匠と対比すべき対象となる被告製品の部分としては,被告が特定した被告意匠にさらにD層を含んだ被告特定意匠を用いるべき旨主張しているが,証拠(甲14)によれば,D層なるものは,被告製品のアッパー部分と靴底部分の接着時に,その接着部分を装飾するための部品にすぎず,見た目にも機能的にも靴底とはいえない部材であるから,靴底を物品とする本件意匠と対比すべきは,被告製品の靴底のうちD層を除いた部分であって,被告意匠によるのが相当である。)。


 ・・・


(4) 本件意匠と被告意匠との対比

共通点

 本件意匠と被告意匠とは,基本的構成態様において共通している。


イ 差異点

 本件意匠と被告意匠との具体的構成態様における差異点は,次の点である。

 ・・・


(5) 本件意匠と被告意匠との類似性について


 以上を前提に,本件意匠と被告意匠との類否について検討すると,前記認定の差異点のうち,差異点(4)イ(エ)ないし(カ)(A層ないしC層の厚みの比率の差異)は,数値により確かめられる差異であるが,部位による比率の変化の度合いが似ているので,異なる美感をもたらすほどの大きな差異とはいえず,むしろ微差というべきである。


 他方,被告意匠は,正面図,背面図,右側面図及び左側面図のいずれにおいても,3層のソールのうちB層とC層の関係が,本件意匠のそれと被告意匠のそれとでは異なり,被告意匠では,C層が下側の連続した2層からはみ出していて,その境目に略逆L字型の直角部分を形成するなど明らかに下の2層の周面とは視覚的連続性を欠いており,加えてC層の側面形状における膨らみが他の層よりも小さいことも,その視覚的印象を強めているが,これらの差異は本件意匠の要部にかかわる部位におけるものである。


 そして,その結果,被告意匠は,3層からなるソールのうちC層部分が他の層とは異なる存在感を持ち,それが特徴となって全体に頑丈な印象を与えるものとなっていて,3層のソール全体が一体感を保ち,丸みを帯び柔らかな美感を起こさせる本件意匠とは異なる美感を起こさせているといえる。


 なお,原告は,本件意匠と被告意匠の上記差異が,被告製品がアッパーと靴底を糸で縫い付ける構造であることからもたらされたもので,設計上の微差であるように主張するが,視覚を通じて異なる美感を起こさせるものである以上,それが製造工程に由来するものであるからといって無視してよいわけではなく,設計上の微差をいう上記原告主張は失当である。


 また本件意匠と被告意匠は基本的構成態様において共通しているが,基本的構成態様は公知意匠にも見られ,少なくとも本件意匠の要部に係るものではないから,需要者の注意を惹くものとはいえない。


 したがって,被告意匠は,本件意匠とその要部において異なり,その結果,本件意匠と被告意匠との差異点の印象は,両者の共通点の印象を凌駕し,全体として異なる美感を起こさせるものというべきであるから,被告意匠は,本件意匠に類似するものと認めることはできない。


2 以上によれば,その余の争点につき検討するまでもなく,原告の請求には理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。

2018-01-23 ●平成28(ワ)7185 意匠権侵害差止請求事件「植木鉢」民事訴訟 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成28(ワ)7185 意匠侵害差止請求事件「植木鉢」民事訴訟 平成29年5月18日 大阪地裁』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/839/086839_hanrei.pdf)について取り上げます。


 本件は、意匠権侵害差止請求事件でその請求が棄却された事案です。


 本件では、意匠の類否の判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 �癲松宏之、裁判官 田原美奈子、林啓治郎)は、

『1 登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされており(意匠法24条2項),この類否の判断は,両意匠を全体的に観察することを要するが,意匠に係る物品の用途使用態様,更には公知意匠にない新規創作部分の存否等を参酌して,当該意匠に係る物品の看者となる需要者が視覚を通じて注意を惹きやすい部分を把握し,この部分を中心に対比した上で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かによって類否を決するのが相当であると解される。


2 本件意匠及び被告意匠

 添付公報,甲5及び6並びに弁論の全趣旨によれば,本件意匠は,別紙「本件意匠の形状」の「裁判所の認定」欄記載の,被告意匠は,別紙「被告意匠の形状」の「裁判所の認定」欄記載のとおりであると認められる。なお,本件意匠が特定されていない旨の被告の指摘は,添付意匠公報の図面合理的解釈すれば,背面図における外側枠体部の下端が下に向かって凸状となっている部分は誤記理解されることから,特定を欠くものではない。


3 本件意匠の要部

(1) 本件意匠に係る物品である植木鉢の用途,使用態様等

 本件意匠に係る植木鉢は,給水用のボトルを倒立状態で保持するための保持孔が背面側のフランジ部に形成されたものである。(甲4)


 そして,本件意匠に係る植木鉢が,主として,学童向けのあさがお等の育成に用いられるものであることからすれば,本件物品の需要者は,学童あるいは初等教育機関教員であるといえる。これらの需要者は,植物の世話をしたり,給水用の容器であるペットボトル等を入れ替えたりすることから,植木鉢を背面の斜め上から見下ろすことになるため,本件意匠においては,その上部に主として注目するものと考えられる。


(2) 公知意匠

 乙3公報ないし乙10公報には,本件意匠の登録出願前に,植木鉢へ給水するための給水容器,給水容器のホルダー,給水容器の保持具等として,給水容器挿入用の円形孔部を形成したものが記載されていることから,給水容器の挿入部の形状が円形孔部である意匠は公知であったと認められ,また,ペットボトル等本体が円柱状の給水容器を差し込む用途の物である以上,円形孔部はありふれた形状であるといえる。他方,これらの公報に記載された植木鉢へ給水を行うためのペットボトル等の給水容器やそのホルダー等は,植木鉢と連結された別の容器に設置されるもの(乙3公報,乙8公報,乙9公報,乙10公報),植木鉢のフランジ部にホルダー等別部材を引っかけるもの(乙4公報,乙5公報),植木鉢内の土に差し込むもの(乙6公報)であり,乙7公報に記載されている植物栽培器は,栽培容器に溜めた養液において植物を栽培するもので,土を入れる栽培床に給水するものではないが,細長い形状の植物栽培器の上部に設置する細長い栽培枠体の一端に養液収納容器(養液タンク)の取付部が形成され,酸素供給手段を装着する部分を置いて隣接するその余の部分に土入れ部である栽培床が形成されており,養液収納容器の取付部と土入れ部である栽培床が,栽培枠体として一体となっているものであることが認められる。


(3) 要部の認定

 本件意匠の物品にかかる植木鉢の用途,需要者の注目する部分のほか,上記(2)の公知意匠からすれば,本件意匠の基本的構成態様における給水ボトル挿入用の円形孔部は,公知の意匠であって新規な形態とは認められず,また,公知の意匠として,土を入れる容器と水分を供給する容器を取り付ける部分とが同一の枠内で一体となったものがあることからすれば,本件意匠において新規で創作性の認められる部分は,給水容器の保持部が植木鉢の内側に入り込む形で一体となっている形状,すなわち,円形孔部が植木鉢の背面の上方に内側に侵入する状態で内側枠体部及び土入れ部背面部が形成され,円形孔部の一部が外側に突出する状態で外側枠体部が形成されている点にあるといえる。


 そして,上記(1)のとおり,本件意匠の物品に係る植木鉢において,需要者は通常植木鉢の背面の斜め上から見るもので,本件意匠の上部である円形孔部及びその周辺の意匠に注目することからすれば,枠体部の奥になって見えなくなる土入れ部背面部を除いた,植木鉢の背面上方に形成された給水ボトル保持部を形成する枠体部の形状が要部であるといえる。


 この点,原告は,本件意匠の要部は,円形孔部の中心が植木鉢の背面の両角を結んだ線上付近位置するように形成され,かつ,植木鉢の背面の中央付近で円形孔部の内側への侵入範囲と外側への突出範囲とが概ね同程度となっている点である旨主張する。確かに,本件意匠は,それまでの公知意匠にない,給水容器の保持部が植木鉢に入り込む形で一体となった形状である点において新規であるが,給水ボトル保持部の内側が円形孔部であることはありふれた形態であることからすれば,原告の主張は植木鉢の背面と枠体部の位置関係だけをいうに等しいものであり,上記のとおり,需要者が斜め上から見る場合,原告が主張するような円形孔部と植木鉢のフランジ部との位置関係だけでなく,給水ボトルの保持部がどのような形をしているかについても注目するはずであり,それを加味して全体として美感を形成しているといえることからすれば,原告の主張は採用できない。


 また,被告は,外側枠体部の下端の形状についても要部である旨主張するが,植木鉢の背面上方から見た場合,外側枠体部の下端は死角となる部分であり,上から給水ボトルを差し込む際も下端の形状を見ることはないから,この点を要部とみることはできない。


4 本件意匠と被告意匠との対比

 ・・・

(3) 類否

ア 以上を踏まえて検討すると,上記のとおり,本件意匠と被告意匠は,基本的構成態様が共通しているところ,土入れ部背面部自体は要部ではないが,植木鉢の背面上方に円形孔部が形成された枠体部は本件意匠の要部であることからすれば,円形孔部が形成された枠体部が植木鉢背部の内側に侵入して形成された枠体部を有する本件意匠と被告意匠とは,一定の美感の共通性が生じているといえる。


 しかし,本件意匠の要部である枠体部の具体的形状において,両意匠は多くの点で異なっている。すなわち,本件意匠と被告意匠は,内側枠体部,外側枠体部がある点については共通するものの,本件意匠においては内側枠体部も外側枠体部も円形孔部の円弧に沿うようにほぼ円形であるのに対し,被告意匠は,平面視において,内側枠体部は略台形状で直線的な形状であり,外側枠体部についてもなだらかな山状の形で,その稜線部分が直線状であることから,その印象は異なっている。また,本件意匠においては,内側枠体部の上面が外側枠体部の上面に比して低い段差状に形成されているのに対し,被告意匠においては,内側枠体部の上面が外側枠体部の上面より高く,しかも,両者の間に中央枠体部が構成され,中央枠体部の上面が内側枠体部の上面から外側枠体部の上面を連結する外側に凸の円弧状に形成されていることから,両者の枠体部の上面の凹凸は異なっており,上から見た印象を異なるものとしている。


イ 以上の点をふまえ,本件意匠と被告意匠を全体としてみると,両意匠はいずれも植木鉢背面内側に入り込む給水ボトル挿入用の円形孔部を形成する枠体部が存在することによって一定の印象の共通性は生じるものの,その枠体部の構成,枠体部を構成する各部の高さやその形状が異なることにより,本件意匠は,枠体部が円形孔部に沿ってほぼ円形で,背部から見た場合,奥まった内側枠体部が手前に見える外側枠体部の上面より低い形状になっていたとしてもさほどの段差感を受けることがないから,全体的に丸くシンプルな印象を受けるのに対し,被告意匠は,内側枠体部が略台形,外側枠体部が山形といった直線的な形状をしており,さらに,外側枠体部が内側枠体部の上面より低くなっていることから,内側枠体部の形状がより看取しやすく,また,枠体部の上部において内側,中央,外側部分が凸凹になっていることとも相まって,直線的でごつごつした印象を受けるものであるから,それぞれの意匠を全体として観察したときに,本件意匠と被告意匠とが類似の美感を生じるとまでは認められず,両意匠が類似しているということはできない。


結論

 以上によれば,被告製品は本件意匠と類似しないから,原告の意匠権を侵害するものではなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用負担につき民事訴訟法61条を適用し,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。

  詳細は、本判決文を参照して下さい。

2018-01-22 ●平成29(行ケ)10083 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「旨み成 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成29(行ケ)10083 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米」平成29年12月21日 知財高裁』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/337/087337_hanrei.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審決の取消を求めた審決取消請求事件で、請求項1に係る部分が取り消された事案です。


 本件では、取消事由(明確性要件に係る判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 高部眞規子、裁判官 山門優、裁判官 片瀬亮)は、

『2 取消事由(明確性要件に係る判断の誤り)について

⑴ 明確性要件について

 特許法36条6項2号は,特許請求の範囲記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となり,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うなど第三者利益が不当に害されることがあり得るので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面考慮し,また,当業者の出願当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

⑵ 本件発明について

ア 特許請求の範囲の記載

 本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の記載は,前記第2の2のとおりであり,本件発明は,玄米粒において,⒜表層部から糊粉細胞層までが除去され亜糊粉細胞層が米粒の表面に露出しており,⒝米粒の50%以上に「胚芽の表面部を削りとられた胚芽」又は「胚盤」が残っており,⒞糊粉細胞層の中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している「肌ヌカ」のみが分離除去されてなることを特徴とする,旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の発明である。

イ 明細書の記載

 ・・・

製造方法の記載の有無

 前記イのとおり,本件明細書には,運転条件(搗精の条件)が調整された摩擦式精米装置適用することによって,本件発明に係る無洗米の前段階である,前記ア⒜⒝の米を製造することが可能である旨(【0028】〜【0035】)や,型式(無洗米とする方式)が特定され運転条件が調整された無洗米機を適用することにより,上記無洗米の前段階である米から,前記ア⒞の本件発明に係る無洗米を製造することが可能である旨(【0041】)が記載されている。


 そうすると,請求項1における「摩擦式精米機により搗精され」という記載は,本件発明に係る無洗米の前段階である,玄米粒の表層部から糊粉細胞層までが除去され,亜糊粉細胞層が米粒の表面に露出しており,米粒の50%以上に「胚芽の表面部を削りとられた胚芽」又は「胚盤」が残っている米の製造方法を記載したものと解するのが相当である。また,請求項1における「無洗米機(21)にて」とは,上記無洗米の前段階である米から,糊粉細胞層の中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している「肌ヌカ」のみが分離除去された,本件発明に係る無洗米を製造する方法を記載したものと解するのが相当である。


 以上のような特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載によれば,請求項1は全体として,物の発明である「無洗米」を特定する事項の一部に製造方法が記載されているということができる。


 なお,本件審決は,本件訂正により,請求項1の「更に前記精米機による搗精後に,無洗米機(21)に供給し」という記載が削除されたものの,同訂正は物の製造方法を含む記載に係る技術的意義を拡張・変更していないことからすると,請求項1の全体の記載は,本件訂正前と同様に,上記記載と同義と解せる記載がある場合に該当し,物の製造方法が記載されている旨認定した。しかし,本件訂正により上記記載が削除された結果,本件訂正後の特許請求の範囲請求項1には,これに対応する部分は存在しない。したがって,仮に,上記記載を削除したことによって,本件訂正前の物の製造方法を含む記載に係る技術的意義を拡張・変更していないとしても,そのことを理由に,本件訂正後の特許請求の範囲請求項1に,本件訂正前と同様に,上記記載と同義と解される物の製造方法に関する記載があるとは認められず,本件審決の上記認定判断は誤りである。


⑶ 本件発明の明確性

物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合(いわゆるプロダクト・バイプロセスクレームの場合)において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られる(最高裁平成24年(受)第1204号同27年6月5日第二小法廷判決民集69巻4号700頁参照)。しかるに,原告は,本件特許の出願時において上記「無洗米」をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在することについて,主張立証しない。


他方,前記最高裁判決が,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると判示した趣旨は,特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるが,そのような特許請求の範囲の記載は,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが不明であり,権利範囲についての予測可能性を奪う結果となることから,これを無制約に許すのではなく,前記事情が存するときに限って認めるとした点にある。

 そうすると,特許請求の範囲に物の製造方法が記載されている場合であっても,上記一般的な場合と異なり,当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが,特許請求の範囲,明細書,図面の記載や技術常識から一義的に明らかな場合には,第三者の利益が不当に害されることはないから,明確性要件違反には当たらない。

ウ そこで検討するに,本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の記載は,前記第2の2のとおりであり,本件発明は,玄米粒において,⒜表層部から糊粉細胞層までが除去され亜糊粉細胞層が米粒の表面に露出しており,⒝米粒の50%以上に「胚芽の表面部を削りとられた胚芽」又は「胚盤」が残っており,⒞糊粉細胞層の中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している「肌ヌカ」のみが分離除去されてなることを特徴とする,旨み成分と栄養成分を保持した無洗米の発明であることが記載されている。


エ また,前記1及び前記⑵イのとおり,本件明細書には,?本件発明は,白米でありながら旨み成分と栄養成分を保持した無洗米を提供することを課題とするものであること(【0005】),?玄米,分搗き米,胚芽米などの食味が良くないのは,おいしさの足を引っ張る物質(米粒表層部の表皮,果皮,種皮,糊粉細胞層までの層)が残っているせいであり,それらが除去されている完全精白米でも,洗米して炊かないと食味が良くないのは,精米過程において,糊粉細胞層の細胞壁が破られ,その中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に「肌ヌカ」として付着されているからであること(【0014】,【0015】),?一方,胚盤や亜糊粉細胞層は米粒の栄養成分及び旨み成分を多く含有しているので,これを可及的に残すとともに,食味にマイナス作用を与える糊粉細胞層やそれより表層の物質,いわゆるぬか層成分や,胚芽の表面部を可能な限り除去すればよいこと(【0023】),?従来の精白米に,食べやすいが栄養成分が少ない精白米か,栄養成分が多いが極めて食味がまずいものしかなかったという問題を解決するには,摩擦式精米機での精米過程において,可能な限り亜糊粉細胞層と胚盤又は胚芽の表面部を除去した胚芽を残るようにした上,亜糊粉細胞層が表面に露出した時に搗精を終わらせる必要があるところ,運転条件(搗精の条件)が調整された摩擦式精米装置を適用することによって,本件発明に係る無洗米の前段階である,前記ウ⒜⒝の米を製造することが可能であること(【0028】〜【0035】),?また,精米機で仕上げられたままでは肌ぬかが表面に付着しているため,無洗米機にて肌ぬかを除去し,無洗米に仕上げる必要があるところ,型式(無洗米とする方式)が特定され運転条件が調整された無洗米機を適用することにより,上記無洗米の前段階である米から,前記ウ⒞の本件発明に係る無洗米を製造することが可能であること(【0041】),?本件発明の無洗米は,その表面が亜糊粉細胞層に覆われ,全米粒のうち,胚盤又は表面を除去された胚芽が残った米粒の合計数が50%以上を占めているため,従来のご飯とは異なったおいしさがあること(【0043】)が記載されている。


 他方,本件明細書には,本件発明に係る無洗米の前段階である前記ウ⒜⒝の米を製造するために摩擦式精米機により搗精し,かかる米から前記ウ⒞の本件発明に係る無洗米を製造するために無洗米機を用いるということのほかに,摩擦式精米機により搗精される米が前記ウ⒜⒝以外の構造又は特性を有することや,かかる米を無洗米機により無洗米としたものが,前記ウ⒞以外の構造又は特性を有することをうかがわせる記載は存在しない。


オ 以上のような特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば,本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の「摩擦式精米機により搗精され」という記載は,本件発明に係る無洗米の前段階である前記ウ⒜⒝の構造又は特性を有する精白米を製造する際に摩擦式精米機を用いることを意味するものであり,「無洗米機(21)にて」という記載は,上記精白米から前記ウ⒞の構造又は特性を有する無洗米を製造する際に無洗米機を用いることを意味するものであって,前記ウ⒜ないし⒞のほかに本件発明に係る無洗米の構造又は特性を表すものではないと解するのが相当である。そして,本件発明に係る無洗米とは,玄米粒の表層部から糊粉細胞層までが除去され,亜糊粉細胞層が米粒の表面に露出し,米粒の50%以上に「胚芽の表面部を削りとられた胚芽」又は「胚盤」が残っており,糊粉細胞層の中の糊粉顆粒が米肌に粘り付けられた状態で米粒の表面に付着している「肌ヌカ」が分離除去された米であるといえる。


 そうすると,請求項1に「摩擦式精米機により搗精され」及び「無洗米機(21)にて」という製造方法が記載されているとしても,本件発明に係る無洗米のどのような構造又は特性を表しているのかは,特許請求の範囲及び本件明細書の記載から一義的に明らかである。よって,請求項1の上記記載が明確性要件に違反するということはできない。


被告の主張について

 ・・・

⑸ 小括

 したがって,本件訂正後の特許請求の範囲請求項1の記載は明確であって,これが明確性要件に違反するということはできない。よって,取消事由は理由がある。


結論

よって,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。

2018-01-21 ●平成29(行ケ)10155 審決取消請求事件 商標権「杭」行政訴訟 知 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日も、『平成29(行ケ)10155 審決取消請求事件 商標権「杭」行政訴訟 知財高裁』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/380/087380_hanrei.pdf)について取り上げます。


 本件では、取消事由2(商標法3条2項に該当しないとの判断の誤り)についての判断もが参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 高部眞規子、裁判官 古河謙一、裁判官 関根澄子)は、


『2 取消事由2(商標法3条2項に該当しないとの判断の誤り)について

(1) 商標法3条2項の趣旨

 前記1のとおり,商標法3条2項は,商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみから成る商標として同条1項3号に該当する商標であっても,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができることを規定している。


 そして,立体的形状から成る商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,?当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否,?当該商標が使用された期間,商品の販売数量,広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を総合考慮して判断すべきである。

 なお,使用に係る商標ないし商品等の形状は,原則として,出願に係る商標と実質的に同一であり,指定商品に属する商品であることを要するが,機能を維持するため又は新商品の販売のため,商品等の形状を変更することもあり得ることに照らすと,使用に係る商品等の立体的形状が,出願に係る商標の形状と僅かな相違が存在しても,なお,立体的形状が需要者の目につきやすく,強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである。

(2) 本願商標に係る商品の形状及び当該形状に類似した他の商品の存在

 本願商標は,指定商品である杭の立体的形状に係るものであり,その形状は,(ア)円柱状の中央部分から頭部と先端部に向けて,円錐状の絞り加工部分があり,(イ)頭部側,先端部側ともに,絞り加工部分の途中に1本の外周線があり,(ウ)頭部側については,外周線を越えた後も絞りは続くが,絞り切る前に,絞り加工部分より大径のリング部分及びリング部分より小径の台形部分があり,これが頭部の末端となり,(エ)先端部についても,外周線を越えた後も絞りが続くが,絞り切る前に,絞り加工部分より大径のリング部分及び絞りの線よりも鋭角の線による円錐部分があり,これが先端部の末端となるというものであるところ,前記1のとおり,円柱状の中央部分(上記(ア)),頭部の末端の台形部分(上記(ウ)),先端部の末端の円錐部分(上記(エ))から成る杭は,他にも市販されている。また,上記(ア),(ウ),(エ)の頭部と先端部に向けた絞り加工や,上記(エ)の絞り加工より大径のリング部分,上記(イ)の外周線も,機能又は美観に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであって,本願商標は,杭の形状として通常採用されている範囲を大きく超えるものとまではいえない。


 さらに,本願商標と実質的に同一の形状から成る複数の杭が,第三者の取扱いに係る商品として販売されていること,原告は,これに対して何らの権利行使も行っていないことも認められる(乙20〜22,弁論の全趣旨)。


 したがって,原告商品の立体的形状自体が他の商品にない特徴的なものであるとはいえない。


(3) 使用の実情

ア 本願商標の使用実績・販売数量について

 ・・・

イ 広告宣伝について

 ・・・

ウ 使用による自他商品識別力について

 前記アのとおり,原告商品は,平成6年から23年間にわたり,その形状を変えることなく,継続的に販売され,平成6年から平成27年の間で,販売本数約630万本,販売金額約60億円と一定程度の販売実績を上げていることが認められるものの,そのシェア不明である上,上記のとおり,平成8年9月から平成23年9月までは原告実用新案権又は原告意匠権が存在していたものである。


 また,前記イのとおり,原告商品のカタログや漫画冊子が頒布されたり,新聞や雑誌等にも掲載されるなどの宣伝広告活動が行われ,多数の展示会において展示され,他の業者のカタログやインターネット販売サイトにも掲載されたことが認められる。


 しかしながら,上記のとおり,原告広告宣伝等には,原告商品の立体的形状の表示がないものも多数存在する一方で,そのほとんどに「くい丸」の文字商標が付され,展示会の会場にもくい丸の文字商標が掲げられていたことが認められる。文字商標の使用態様を見ると,原告のカタログには,表紙に,文字のみからなる「くい丸」商標,又は,「くい丸」との文字商標が太い横長の楕円に囲まれた中に記載されたもの(以下「楕円で囲まれた『くい丸』商標」という。)が付されている上,カタログの内部や裏表紙にも,文字のみからなる「くい丸」商標や,楕円で囲まれた「くい丸」商標が表示され,新聞広告には,楕円で囲まれた「くい丸」商標のみを掲載したものもあり(甲24の4〜7),展示会の会場にも,楕円で囲まれた「くい丸」商標が,大きく目立つように掲示されており,「くい丸」の文字商標が,強く印象に残る態様で表示されていることが認められる。


 また,原告広告宣伝等において,本件全体形状や本件頭部形状のイラストや写真が表示される場合には,頭部側の大径のリング部分の下に,楕円で囲まれた「くい丸」商標が表示されている。


 そうすると,原告広告宣伝等に接したり,展示会に赴いたりした取引者,需要者は,「くい丸」の文字商標により,記載ないし展示された杭が原告の商品であることを認識し,商品の出所確認するものと認められ,原告商品の立体的形状によって,商品の出所を認識したとはいえない。


(4) 小括

 以上のとおり,?原告商品の立体的形状は,他の同種商品にはない特徴的なものとはいえないこと,?一定の販売実績を挙げてきたものの,そのシェアは不明であり,実用新案権や意匠権が存在していたこと,原告商品の広告宣伝展示が継続して行われたとしても,取引者,需要者は,併せ使用された「くい丸」の文字商標に注目して自他商品の識別を行ってきたと認められること,これらの事情を総合すると,原告商品の立体的形状が,文字商標から独立して,その形状のみにより自他商品識別力を獲得するには至っていないというべきである。


 したがって,本願商標は,使用をされた結果自他商品識別力を獲得し,商標法3条2項により商標登録が認められるべきものということはできない。


(5) 原告の主張について

 ・・・・

エ 原告は,原告実用新案権,原告意匠権の存続期間満了後に,本願商標と実質的に同一の形状から成る杭が,第三者の取扱いに係る商品として複数販売されていることは,原告商品の立体的形状が自他商品識別機能や品質保証機能を備えているが故にこれに便乗するものであると主張する。


 確かに,本願商標と実質的に同一の形状から成る他社商品に関するインターネット上のウェブサイトには,「【くい丸】と同型・同品質!さらに!まとめればまとめるほど,あの【くい丸】よりもお買い得!!!」「<杭 ジェネリック杭 アルマックス社製>…まとめ買いでくい丸よりお得!」(甲129,乙20の2),「くい丸と同じ形状です。」(甲130,乙21)との記載があり,これら販売業者においても,その販売商品が原告商品の後発品であることを認識していることが推認される。


 しかしながら,原告は,平成23年9月2日に原告意匠権の存続期間が満了するまでは,原告実用新案権又は原告意匠権に基づき原告商品を独占的に実施していたことを推認できるところ,実用新案権や意匠権の権利者が,考案や意匠を一定期間独占できることは当然であり,実用新案権や意匠権に基づく一定期間の独占の結果として,その権利範囲に含まれる商品の形状又はこれに類似する商品の形状について,権利者の業務に係るものとして知られたことをもって,直ちに商標登録に必要な自他識別力を備えたことにはならない。商標権は,存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができることを踏まえると,実用新案権や意匠権の対象となっていた立体的形状について商標権によって保護を与えることは,実用新案法や意匠法による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じかねず,事業者間の公正な競争を不当に制限することになる。

 したがって,実用新案権や意匠権の対象となっていた立体的形状について権利による独占とは無関係に自他識別力を取得した等の特段の事情の認められない限り,使用による自他識別力を取得したと認めることはできない。そして,上記の検討結果に照らすなら,本願商標について,かかる特段の事情があることを認めるに足りる事情が存在することを認めることはできない。


 そうすると,原告実用新案権,原告意匠権の存続期間満了後に,原告商品の類似商品が販売されている事実をもって,原告商品の立体的形状が自他商品識別機能を有することを推認することはできない。


(6) まとめ

 以上によれば,取消事由2は理由がない。


結論

 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。

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