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2014-05-26 ●弁理士一次試験お疲れ様でした。 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 弁理士一次試験受験された方、お疲れ様でした。

2014-03-09 ●平成25(行ケ)10261 審決取消請求事件 商標権「けやき」 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本件は、『平成25(行ケ)10261 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「けやき」平成26年3月5日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140306093107.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標法第4条第1項11号の商標の類比の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 清水節、裁判官 池下朗、裁判官 新谷貴昭)は、


『1本願商標について

 本願商標は,「けやき」の平仮名を横書きして成り,構成文字に相応して,「ケヤキ」の称呼を生じ,「欅」の観念を生じるものである(乙1)。



2引用商標について

(1)外観

 引用商標は,「けやき」の文字,「中央式典」の文字及び「町田駅前会堂」の文字を組み合わせて成り,その構成中,左側下段に,やや特徴的な細字で「町田駅前会堂」の文字を横書きし,その上段左側に接して,太目のゴシック体で小さく付記するように「中央式典」の文字を横書きし,これらの右側に,やや離して,「けやき」の文字を,毛筆手書き風の特徴のある字体で,顕著に,特に大きく表された「け」の文字の引き延ばされた第2画の下に,「や」と「き」の文字を大きく,3文字まとまりよく配するという,特徴的な態様で表されており,各構成文字の異なる書体,大きさ及び位置からみて,外観上,三つの構成部分が不可分一体に認識されるものとはいえず,分離して看取し得るものである。


 そして,左側の上下二段の構成文字部分は,下段の「町田駅前会堂」がやや特徴的な字体ではあるものの,いずれも漢字のみから成り,互いに接して横書きされていることから,一体的に把握されるのに対し,「けやき」の文字部分は,左側の構成文字部分からやや離れて,特徴のある字体で,大きく顕著に,まとまりよく表されており,「け」と「や」と「き」の配置に特徴があることからすると,「けやき」の文字部分が,最も強く,看る者の注意を引く部分ということができる。


(2)観念

 引用商標中,「けやき」の文字部分からは,「欅」の観念を生じる(乙1)。「中央式典」の文字部分のうち「式典」の文字は,「儀式」等の意味を有する語であり(乙2),葬祭業者の名称として「○○式典」なるものが多数使用されている実情がうかがえる(乙3〜11)ことからすると,「中央式典」の文字部分からは,「中央式典という葬祭業者」との意味を表したものと理解できる。「町田駅前会堂」の文字部分のうち「会堂」の文字は,「集会のために設けた建物」等の意味を有する語である(乙12)ことから,「町田駅前会堂」の文字部分は,「町田駅前にある集会を行う建物」との意味を表したものと理解できる。


 そして,引用商標の「けやき」の文字,「中央式典」の文字及び「町田駅前会堂」の文字は,前記(1)のとおり,分離して看取されることから,全体として特定の観念を生じるとは認められないが,左側の上下二段の漢字部分は,一体的に把握されることから,「中央式典という葬祭業者と関連する町田駅前にある集会を行う建物」との観念を生じるものと認められる。


 したがって,引用商標は,各構成文字において,互いに,観念的なつながりはなく,全体が一体不可分のものとして認識されるものではないが,前記のとおり,構成中の「けやき」の文字部分に相応して「欅」の観念を生じるとともに,「中央式典」及び「町田駅前会堂」の文字部分に対応して,「中央式典という葬祭業者と関連する町田駅前にある集会を行う建物」との観念も生じるものである。


(3)称呼について

 引用商標は,(1)のとおり,その構成中の各構成文字が,外観上分離して把握されるものであり,(2)のとおり,左側の上下二段の漢字から成る構成部分を除いて,各構成文字における観念的な関連性も認められない。そして,その構成文字全体から生じる「チュウオウシキテンマチダエキマエカイドウケヤキ」の称呼は,22音と長く,一気に称呼するのは困難である上,引用商標の指定役務中の葬儀の執行が,人の死亡という突然に生じることが多い出来事に伴って短期間に済ませなければならないものであり,遺族,関係者等の精神的混乱の中でも執り行われ得ることからすると,簡易,迅速が尊ばれる引用商標の上記指定役務の取引において,引用商標に接する取引者,需要者は,「チュウオウシキテンマチダエキマエカイドウケヤキ」の22音を常に全体として称呼するとみることはできず,外観上,看る者の注意を最も強く引く部分である「けやき」の文字部分から「ケヤキ」の称呼を生じることもあるというべきである(なお,左側の上下二段の構成部分から生じる「チュウオウシキテンマチダエキマエカイドウ」の称呼も,同様に冗長なものと認められる。)。


(4)小括

 以上によれば,引用商標は,外観において,視覚上分離して看取されるものであり,観念においても,左側の上下二段の構成部分を除いて,各構成文字が相互に結合して特定の観念を生じるものではなく,各構成文字を分離して観察することが,取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえず,外観上,看者の注意を引く「けやき」の文字部分が,強く支配的な印象を与えるものであることからすると,当該文字部分が,独立して自他役務の識別標識としての機能を果たす部分であるとみるのが相当である。


 したがって,引用商標に接する取引者,需要者は,役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「けやき」の文字部分をもって取引するものということができ,引用商標は,「けやき」の文字部分から「欅」の観念及び「ケヤキ」の称呼を生じるものである。


3対比

(1) 本願商標と引用商標の外観,観念及び称呼の比較

 本願商標は,上記1のとおり,「けやき」の文字から成り,「欅」の観念及び「ケ

ヤキ」の称呼を生じるものである。引用商標は,上記2のとおり,「けやき」,「中央式典」及び「町田駅前会堂」の文字から成り,その構成中,「けやき」の文字部分から,「欅」の観念及び「ケヤキ」の称呼を生じるものである。


 そうすると,本願商標と引用商標は,その全体の文字構成において相違するとしても,「けやき」の構成文字において同一であるから,外観において共通する部分があり,「欅」の観念及び「ケヤキ」の称呼を同一にするものである。


(2)取引の実情

 乙13〜23によれば,葬祭業者が自己の業務を宣伝広告するに当たり,式場の所在地名と,会堂,会館,式場等の建物を表す語を組み合わせた表示を使用していることが多いものと認められ,その表示は,式場の所在地や役務の提供場所を取引者,需要者に認識させるものであるから,自他役務の識別標識としての機能は弱いということができる。引用商標においても,その構成中,「町田駅前会堂」の文字部分は,「町田駅前にある(葬儀のための)建物」との意味を有し,引用商標に接する取引者,需要者は,「役務の提供場所」の表示と認識することが一般であるから,出所識別標識として認識されることが少ないものと認められ,「中央式典」の文字部分及び「けやき」の文字部分が,役務の出所識別標識として認識され得る部分といえる。


 そして,指定役務中の葬祭業の分野における取引者,需要者は,これらの役務についての専門業者に限らず,広く一般の消費者が含まれるから,役務に対する注意力は必ずしも高いものではなく,上記2(3)のとおり,簡易,迅速な取引が尊ばれることからすると,引用商標に接する取引者,需要者は,その構成中,最も強く看る者の注意を引く部分である「けやき」の文字をもって取引に当たる場合も少なくないものというべきである。


(3)まとめ

 以上によれば,本願商標と引用商標は,その全体の外観構成において相違するとしても,「けやき」の構成文字において同一であって,外観において共通する部分があり,「欅」の観念及び「ケヤキ」の称呼を同一にするものであるから,これを同一又は類似の役務に使用したときは,その出所について紛れるおそれのある類似の商標である。したがって,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした審決の認定,判断に誤りはない。


(4)原告の主張について

 原告は,引用商標は全体として一つの商標として一体的に看取されるようにデザインされており,本願商標と引用商標とでは、外観上共通する要素も見当たらず、両者は全体の印象が大きく異なるので、外観上の差異は明らかであると主張する。


 しかし,引用商標が,一体的に看取されず,「けやき」の文字,「中央式典」の文字及び「町田駅前会堂」の文字に分離して看取し得るものであり,とりわけ「けやき」の文字部分が看る者の注意を引くことは,上記2(1)に判示したとおりである。


 原告は,引用商標中の「中央式典」及び「町田駅前会堂」の表示からも観念が生じるから,引用商標と本願商標とは観念上も相紛れるおそれはないと主張する。確かに,「中央式典」及び「町田駅前会堂」の表示から一定の観念は生じるものの,引用商標に接する取引者,需要者は,その構成中,最も強く看る者の注意を引く部分である「けやき」の文字をもって取引に当たる場合が少なくないことは,上記(2)に判示したとおりである。


 原告は,引用商標の称呼が22音と冗長だからといって、引用商標の複雑な構成から「ケヤキ」のみの称呼が生じ得るとの認定は失当であると主張する。しかし,引用商標全体からの称呼が冗長なことは明らかであり,引用商標の「けやき」の文字部分が注目されて「ケヤキ」のみの称呼を生じることもあることは,上記2(3)に判示したとおりである。


 原告は,引用商標権者は関東圏で複数の葬儀及び婚礼の式場を所有し運営しているが,原告はにて地域に根ざした運営を行っているから,葬儀の執行というサービスの特異性を考慮すれば,本願商標と引用商標とは出所の誤認混同を生じるおそれはないと主張する。


 しかし,葬儀の執行を中心とする当該指定役務であっても,商標を使用しての広告宣伝がインターネットを通じて全国的に行われることは明らかであるから(乙3〜11,13〜23),これを利用する一般の取引者,需要者が,類似する商標の使用によって出所の誤認混同を生じるおそれは否定し難く,しかも,引用商標権者における原告主張の事業運営状況が今後変動しないものと認めるに足りる証拠はない。


 原告は,引用商標から「けやき」の部分のみを抽出して類否を検討するのは誤りであると主張する。しかし,審決は,結合商標である引用商標から複数の観念及び称呼が生じることを前提として,そのうち出所識別機能の強い「けやき」の部分から生じる観念及び称呼が本願商標から生じる観念及び称呼と同一であるため,外観上の相違及び「けやき」以外の部分から生じる観念及び称呼の相違にもかかわらず,両商標は類似すると判断したものと解され,「けやき」の部分のみを抽出して類否を検討したものではなく,その判断に誤りはない。


 したがって,原告の主張は,いずれも理由がない。


第6結論

 以上によれば,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。

2014-03-08 ●平成22(ワ)39625 職務発明補償金請求事件 その他 民事訴訟 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

  本日は、『平成22(ワ)39625 職務発明補償金請求事件 その他 民事訴訟 平成26年2月27日 東京地方裁判所 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140306142929.pdf』について取り上げます。


 本件は、職務発明補償金請求事件です。


 本件では、本件発明により被告が受けるべき利益の額についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 三井大有、裁判官 志賀勝)は、


『1 争点?(本件発明により被告が受けるべき利益の額)について

(1) 本件発明により被告が受けるべき利益について


 特許法35条は,職務発明について特許を受ける権利が当該発明をした従業者等に原始的に帰属すること(同法29条1項参照)を前提に,? 使用者等が従業者等の職務発明に関する特許権について通常実施権を有すること(同法35条1項),? 従業者等は,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権(以下「特許を受ける権利等」という。)を承継させたとき,相当の対価の支払を受ける権利を有すること(同条3項),?その対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならないこと(同条4項)などを規定している。


 これによれば,特許法35条3項が規定する相当対価支払請求権は,従業者等が職務発明について使用者等に特許を受ける権利等を承継させた時点で,発生するとともに,その額も定まるものと解される。もっとも,相当対価支払請求権の額は,上記時点までの資料だけで定めることが困難であるから,承継前の事情だけでなく,職務発明により使用者等が受けた利益の額等,承継後の事情をも参照して定めるのが相当である。


 また,職務発明により使用者等が受けるべき利益とは,職務発明の実施や職務発明についての特許を受ける権利等の行使又は処分等により使用者等が得られると客観的に見込まれる利益であって,職務発明と当該利益との間に相当因果関係があるものをいうと解される。


 具体的には,使用者等において,職務発明を自ら実施することによって得られる利益や,職務発明を他人に実施させることによって得られる実施料,職務発明についての特許を受ける権利等を譲渡することによって得られる譲渡利益等が挙げられる。


 もっとも,使用者等は,職務発明について従業者等から特許を受ける権利等を承継しなくても,特許法35条1項の趣旨に照らせば,職務発明がされた時から職務発明について通常実施権を有するものと解されるから,使用者等が職務発明を自ら実施することによって得られる利益は,使用者等が通常実施権を行使することによって得られる利益を控除したいわゆる超過利益に限られるというべきである。


 そして,超過利益は,使用者等が職務発明の実施を法律上又は事実上独占することによって生じるから,補償金支払請求権が生じ得る出願公開の時から特許権の消滅又は処分の時までに生じた利益に限られるものと解される。


 さらに,超過利益の算定は,特許法102条3項の趣旨に照らせば,使用者等が職務発明を自ら実施することによって得られる利益から使用者等が通常実施権を行使することによって得られる利益を控除する方法によるだけでなく,使用者等が職務発明を自ら実施することによって得られる売上高から使用者等が通常実施権を行使することによって得られる売上高を控除したいわゆる超過売上高に,他人に通常実施権を許諾すれば得られたはずのいわゆる想定実施料の率を乗じる方法によってもすることができると解するのが相当である。


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。

2014-03-06 ●平成25(行ケ)10174 審決取消請求事件 特許権「回転角検出装置」 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成25(行ケ)10174 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「回転角検出装置」平成26年2月26日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140304164021.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審決の取り消しを求める審決取消請求事件で、訂正を認めた無効審決の取り消しが認容された事案です。


 本件では、取消事由1(訂正要件の判断の誤り)における訂正要件の判断の誤りについての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 富田善範、裁判官 大鷹一郎、裁判官 齊藤巌)は、


『1取消事由1(訂正要件の判断の誤り)について

(1)本件明細書の記載事項等


 ・・・省略・・・

(2)訂正要件の判断の誤りについて

原告は,本件訂正の訂正事項aは,本件特許の設定登録時(本件訂正前)の請求項1では,「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて」,磁気検出素子の2種類の各端子が端子毎に同じ方向へ引き出されるものであったのが,本件訂正後の請求項1では,「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の少なくともいずれかは各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて」と訂正され,磁気検出素子の少なくとも1種類の端子が端子毎に同じ方向へ引き出される態様のものも含み得ることになり,実質上特許請求の範囲を拡張するものであるから,本件訂正は,特許法134条の2第9項において準用する同法126条6項に違反する旨主張するので,以下において判断する。


(ア)本件訂正前の請求項1の記載は,「磁石を有し,被検出物の回転に伴って回転するロータコアと,このロータコアの磁石の磁力を受けて前記被検出物の回転角度を検出し同じ

配列の3つの端子を有し且つ同形状を有する複数の磁気検出素子と,2つは前記磁気検出素子の出力を外部に取り出し,また1つは前記磁気検出素子に電源電圧を外部から印加し,さらに1つは前記磁気検出素子を外部に接地するための,少なくとも4つの外部接続端子とを備えた非接触式の回転角度検出装置であって,前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置され,前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて前記外部接続端子のいずれかと接続されていることを特徴とする回転角度検出装置。」というものである。


 上記請求項1の記載によれば,「複数の磁気検出素子が夫々有する3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子」にいう「少なくとも2つの同一位置に配置された各端子」とは,各磁気検出素子がそれぞれ有する3種類の端子のうち,少なくとも2種類の各端子を意味し,本件発明では,磁気検出素子の2種類の各端子が,端子毎に同じ方向へ引き出されて,4つの外部接続端子のいずれかと接続されていることを理解できる。


(イ)一方,本件訂正後の請求項1の記載は,「磁石を有し,被検出物の回転に伴って回転するロータコアと,このロータコアの磁石の磁力を受けて前記被検出物の回転角度を検出し同じ配列の3つの端子を有し且つ同形状を有する複数の磁気検出素子と,2つは前記磁気検出素子の出力を外部に取り出し,また1つは前記磁気検出素子に電源電圧を外部から印加し,さらに1つは前記磁気検出素子を外部に接地するための,少なくとも4つの外部接続端子とを備えた非接触式の回転角度検出装置であって,前記磁気検出素子の3つの端子は,電源電圧を印加する信号入力用,信号出力用,及び接地用の端子であり,前記複数の磁気検出素子は,並列に180度逆方向で配置されて3つの端子は前記磁気検出素子の同一面より引き出され,前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の少なくともいずれかは各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子の少なくともいずれかと接続されていることを特徴とする回転角度検出装置。」というものである(下線部は本件訂正による訂正箇所である。)。


 まず,上記請求項1の記載によれば,本件訂正により,「磁気検出素子が夫々有する3つの端子」が「電源電圧を印加する信号入力用,信号出力用,及び接地用の端子」の3種類であることが特定されるとともに,「磁気検出素子が夫々有する3つの端子」が引き出される起点が「磁気検出素子の同一面より」であると特定されたことを理解できる。


 次に,上記請求項1の「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子であって前記信号入力用及び前記接地用の少なくともいずれかは各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子の少なくともいずれかと接続されている」との文言によれば,磁気検出素子の「前記信号入力用及び前記接地用の少なくともいずれか」の端子が,「前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子の少なくともいずれか」と接続されていることを理解できる。


 そして,「前記信号入力用及び前記接地用の少なくともいずれか」にいう「少なくともいずれか」とは,「前記信号入力用」の端子及び「前記接地用」の端子の「少なくともいずれか一つの端子」を意味し,また,「前記外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子の少なくともいずれか」にいう「少なくともいずれか」とは,「電源電圧を印加する信号入力用端子」及び「接地端子前記信号入力用」の「少なくともいずれか一つの端子」を意味することは,文理上,一義的に明白である。


 したがって,上記請求項1の記載によれば,本件訂正発明は,磁気検出素子の「信号入力用」及び「接地用」の2種類の端子のうち,いずれか1種類の端子が,端子毎に同じ方向へ引き出されて,外部接続端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子のいずれか一つの端子と接続されている構成のものを含むものと理解できる。


 そうすると,本件訂正前の請求項1では,磁気検出素子の2種類の各端子が,端子毎に同じ方向へ引き出されて,4つの外部接続端子のいずれかと接続されている構成であったのが,本件訂正により,本件訂正後の請求項1では,「信号入力用」及び「接地用」の2種類の端子のうち,いずれか1種類の端子が,端子毎に同じ方向へ引き出されて,外部接続

端子のうち電源電圧を印加する信号入力用端子及び接地端子のいずれか一つの端子と接続されている構成を含むものとなり,磁気検出素子の「信号入力用」及び「接地用」の2種類の端子のうち,いずれか1種類の端子が端子毎に同じ方向へ引き出される態様のものも特許請求の範囲に含み得ることになった点において,本件訂正は,本件訂正前の請求項1について,実質上特許請求の範囲を拡張するものであると認められる。


(ウ)被告は,この点に関し,本件訂正の前後にかかわらず,「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子」の種類は「少なくとも2つ」あり,本件訂正は,この「少なくとも2つ」ある「端子の種類」が「前記信号入力用及び前記接地用の少なくともいずれか」であることを明確にすることによって,2つの同一位置の端子の種類を信号入力用及び接地用の端子に限定したものであるから,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張するものではない旨主張する。


 しかしながら,本件訂正前の請求項1の記載と本件訂正後の請求項1の記載を対比すると,本件訂正により,「前記複数の磁気検出素子が夫々有する前記3つの端子の内の各磁気検出素子の同一位置に配置された端子の少なくとも2つの同一位置に配置された各端子」が「信号入力用及び接地用の端子」の2種類に特定されたことは認められるが,本件訂正後の請求項1の「前記信号入力用及び前記接地用の少なくともいずれか」の文言は,この2種類に特定された端子の「少なくともいずれか一つ」を意味することは,文理上,一義的に明白であるから,被告の上記主張は,採用することができない。


以上のとおり,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張するものであるから,本件訂正は,特許法134条の2第9項において準用する同法126条6項に違反する。これと異なる本件審決の判断は,誤りである。


(3)小括

 以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,本件訂正が訂正要件に適合するとして,本件訂正を認めた本件審決の判断は誤りである。


 そして,本件訂正を認めた本件審決の判断の誤りは,発明の要旨認定の誤りに帰することになるから,この誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。


 したがって,原告主張の取消事由1は理由がある。』


 と判示されました。

 

 詳細は、本判決文を参照して下さい。

2014-03-05 ●平成25(行ケ)10102 審決取消請求事件 特許権「膜分離用スライム このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成25(行ケ)10102 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「膜分離用スライム防止剤及び膜分離方法」平成26年2月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140228103645.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由2(相違点についての容易想到性の判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子、裁判官 小田真治)は、


『2 取消事由2(相違点についての容易想到性の判断の誤り)について


 事案に鑑み,取消事由2を先に判断する。当裁判所は,次のとおり,当業者は相違点に係る構成を容易に想到することができたものと判断する。


(1) 相違点についての容易想到性判断


 前記第2,2(3)イのとおり,本願発明引用発明との相違点は,本願発明は,「膜分離用」のスライム防止剤であるのに対し,引用発明では「冷却水系,蓄熱水系,紙パルプ工程水系,集じん水系,スクラバー水系など」用のスライム防止剤であり,膜分離の用途について記載がない点にある。


 前記1(2)のとおりの引用例1の記載によれば,引用発明は,次亜塩素酸アルカリ金属塩,スルファミン酸のアルカリ金属塩及びアニオン性ポリマー又はホスホン酸化合物を含有するスライム防止用組成物に関するものであり,引用発明に係るスライム防止用組成物は,冷却水系,蓄熱水系,紙パルプ工程水系,集じん水系,スクラバー水系などの水系に添加され,それにより,これらの水系において発生するスライムが配管等に付着するのを防止して,スライムの付着に起因する障害を防止しようとするものであると認められる。


 そして,引用例2には,前記1(3)のとおりの記載があり,逆浸透メンブラン上の生物被膜を除去又は阻止する方法として,逆浸透メンブランを,ハロゲンを徐々に放出する,結合された形態にある酸化性ハロゲン殺菌剤と接触させて,逆浸透メンブランを消毒して殺菌する方法が記載されている(請求項1)。このうち,「酸化性ハロゲン殺菌剤」は,?「+1酸化状態にあるハロゲンを含む酸化性殺菌剤物質」と?「イミドまたはアミドの形態にある少なくとも一個の窒素原子を含む窒素含有化合物」との組合せで,?のハロゲンが?の窒素と緩く結合することにより結合ハロゲンが形成されたものであり得(【請求項2】),?の例として次亜塩素酸ナトリウムが,?の例としてスルファミン酸が記載されている(【0013】)。上記のとおり,引用例2には,?の例として次亜塩素酸ナトリウムが,?の例としてスルファミン酸が,それぞれ例示されているが,次亜塩素酸塩とスルファミン酸とを反応させると,クロロスルファミン酸塩が形成されること,また,このクロロスルファミン酸塩は,塩素が窒素と結合して結合塩素が形成されたものであって,塩素を徐々に放出するものであることは,技術常識であるから,次亜塩素酸ナトリウムとスルファミン酸とを組み合わせたものも,上記の殺菌剤として使用できることは,当業者にとって自明である。


 そうすると,引用例2には,次亜塩素酸ナトリウムとスルファミン酸を組み合わせて,結合ハロゲンを形成させて殺菌剤とし,逆浸透メンブランをその殺菌剤と接触させて,逆浸透メンブラン上の生物被膜を除去又は阻止することが記載されていることが認められ,このような引用例2の記載からすると,次亜塩素酸アルカリ金属塩及びスルファミン酸のアルカリ金属塩等を含有する引用発明についても,その用途を「膜分離用」とすることは,当業者が容易に想到することである。


 よって,相違点に係る構成は,当業者が容易に想到することができたと認められる。


(2) 原告の主張について


ア 原告は,引用例2のような逆浸透メンブランの分野においては,遊離塩素によって透過膜の劣化が生じるためこれを阻止するという課題があり,そのためにスライム防止剤を添加するのに対し,引用例1の冷却水系,蓄熱水系,紙パルプ工程水系,集塵水系,スクラバー水系においては,このような課題は存在せず,また,引用例1と引用例2とでは技術分野が異なると主張する。


 しかし,上記(1)のとおり,逆浸透メンブラン上の生物被膜を除去又は阻止することは一般的な課題であること,引用例2には,生物被膜を除去又は阻止するために,次亜塩素酸ナトリウムとスルファミン酸とを組み合わせた殺菌剤を使用できることが記載されている以上,逆浸透膜を用いた膜分離処理において,次亜塩素酸アルカリ金属塩,スルファミン酸のアルカリ金属塩を含有するスライム防止用組成物を用いることに困難な点はない。

 よって,原告の主張は採用できない。


イ 原告は,引用例2は,逆浸透メンブランを消毒して殺菌する発明であるのに対して,引用例1のスライム防止用組成物は,消毒・殺菌作用を奏さないものであるから,かかる引用例1と引用例2とを組み合わせることに阻害要因があると主張する。


 しかし,引用例1には,「殺菌効果が得られないような低濃度の組成物の添加量であっても」(8頁18〜19行),「A成分のみを有効塩素として5mg/L・・・添加しても,殺菌効果は発現しない」(18頁2〜4行)と記載されており,これらの記載振りによれば,殺菌効果があるか否かは,濃度(添加量)に依存すると理解するのが合理的である。低濃度の場合に殺菌効果が得られないからといって,引用発明に係るスライム防止用組成物に殺菌作用がないとすることはできず,引用例1と引用例2の組合せが阻害されるものではない。

 

 よって,原告の主張は採用できない。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。