呆れる愚策・子ども手当て&配偶者控除

人事尽くして怒らず待つ。修行アラ僧のテーマ。
ああ、でもこれはとっても難しい。特に「怒らないこと」はとっても難しい
日々が「怒らない」修行

今日の修行は子供手当てと配偶者控除問題相手に心を静める」こと。

毎朝眠い目をこすりつつ、マンション階下のポストで新聞を取り出す。労働者である修行アラ僧が読むのは、日経新聞。実は定期購読をいつ辞めようかと思い悩んで早10年。同僚とか取引先との話題づくりには必要なんですよね〜。しかし、最近は「私の履歴書」も選択的にしか読まないし、そんなに時間の余裕もないので、斜め読み、すくい読み。そういや私のソウルメイトは新聞の論点・重要情報をぱっとつかむのが上手いんだよな… 

6月14日(月)の朝刊3面を開けた途端に目に飛び込んできたのは「子供手当て 再設計に難題 〜満額断念、配偶者控除廃止が焦点」。こ、こ、子供手当て! そして配偶者控除。日本の税制、いや年金、健康保険、などあらゆるシステムが「モデル家族」と呼ばれる夫婦+子供2人をベースに作られている現状に疑問を持っている修行アラ僧に対し、この記事は今日の修行を与えたもうた…

子供手当ては平成22年6月から支給開始。初年度は半額支給で、中学校終了までの子供一人につき、月額13,000円をその父母等、子供を監護しかつ生計を同じくしている人に支給するもの。具体的には、今まで児童手当を受給していた人以外は、市町村への「子ども手当て認定請求書」の申請手続きをし、認定通知を受領、そして市町村からの振込を受けることになる。この6月には4〜5月の2か月分が振り込まれ、次は10月に6〜9月の4か月分、そして来年2月に今年10月〜来年1月分が振り込まれるという、「後払い」。一人年間156,000円、満額になったとすると312,000円。支給額の合計は2.7兆円と言われている*1。満額になるとこの倍の5.4兆円。 

子ども手当ての目的は、少子高齢化が進む日本で時代を担う子どもの育ちを社会全体で応援するため、そして先進諸国の中でGDP費で子育てにかける予算がもっとも少ない国だとか*2 まあそうだけれど。

志は高く、されど金が無い、というのが現状らしい。 日経新聞によると、前鳩山政権時代に制度設定されたこの手当て、やっぱり財源確保も難しいので見直しを迫られている、と菅新首相が表明。 元々2010年度は半額支給で今月から支給が開始され、2011年度からの満額支給にする予定だったものを、追加部分については、保育サービスなどの「現物支給」に振り返るなどの方向修正も検討したいとのこと。 既に打ち切られた「年少扶養控除」に加え「配偶者控除」の打ち切りも検討中。至極当たり前じゃん…と思ったら、政府内では慎重論が根強いらしい…なぜか。 

日経新聞上には、中村健二税理士の協力を得て作成したという、「子ども手当てで手取り収入がどう変わるか」のシミュレーションが掲載されていた。子ども手当てによる収入押し上げ効果から児童手当、不要控除廃止、配偶者控除廃止の収入押し下げ要因を引き、300万円、500万円、700万円、1500万円の年収層別、そして共働きか専業主婦かの世帯別にその影響を算出したもの。 世帯設定は、子ども1人の場合と2人(そう、モデル家族)の場合。

もちろん満額支給で様々な控除が維持される場合が一番インパクトは大きい。「モデル家族」で年収1000万円の世帯なんて406,000万円の増収。でもこれは財源ないしダメでしょ。 逆に、半額支給で控除も廃止される場合は子ども2人で年収が300万円、500万円の世帯以外は13,000円〜163,000円の減収。あ、ちょっと待てよ。 実はとばっちり受ける、子どもゼロ世帯では配偶者控除が廃止されると54,000円〜158,000円の減収になってる! それって不公平?

不公平って言えば… 子ども手当てもおかしいし、実はそもそも配偶者控除だって変なんじゃないの?

なぜなら、

(1) 子ども手当てには所得制限がない。 今更でかい字にしなくても、周知の事実ではありますが、これは大事です。 キャッシュフローリッチのエリートサラリーマンも、企業家も、誰でも貰える。厚生労働省のホームページ内にある「子ども手当てについて一問一答」では子ども手当てを設けた趣旨の説明として、「子育て世帯からは、子育てや教育にお金がかかるので、経済面での支援を求める声が強い」と説明している。 でも、そもそも年収1000万円とか、1500万円とかそれ以上貰ってる人に「手当て」なんて必要ないはずでは? 貰った世帯が「有難うございます、ご恩は忘れません、私どもの子ども達はお国のために頑張ります」なんて喜んだり感謝したりするもんでもない。エリート世帯の専業有閑マダム主婦で子ども二人だと、満額支給、配偶者控除維持だと307,000円増加するらしいけど、そんなに子育て大変なら、車をBenzやBMWVolvoなんかから国産車に変えて、子どもを公立学校に通わせればそれでいいのではないんですか?小学生の99%、中学生の90%は公立学校に通ってるんですよ! 東京都では26%の子どもが私立中学に通い、私の住むS区では31%が私立中学に進学してるとか。 中学校までは義務教育です。 手当て貰うくらいなら、公立中学で立派に育てることを考えてはいけないんだろうか? ちなみに修行アラ僧はS区の公立小学校、公立中学校で育ててもらいました。

(2) 子ども手当ては子育てに関する自己責任を無視している。 この意見には色々反論もあるだろうけれど。 今の時代、普通の大人なら、子どもを育てるということは経済的にどういうものなのか、ということを考えてから妊娠・出産に踏み切らないものだろうか? そして、「子どもが生まれたから一生懸命働こう」と夫婦で考え家計を支えていくものではないのか? 子育ては厳しい、経済的に支援をしてくれなどと大昔は言えなかったはず。 専業主婦の世帯が今なお圧倒的に多いのには驚く。夫はキャリアを積んで好きなことをしているが自分は子育てばっかり、保育所が見つからないから働けない、両立は大変などと言ってくすぶってる女性は多いのでは? 手当ての財源は税金ですよ、所得税も多くを占めるんですよ。 

(3) 配偶者控除は専業主婦を増やし、中途半端なパートで税収機会の損失をもたらす。  自己責任で働こうとしない人が増えるのは、控除のせい。特にサラリーマン世帯では、そもそも年金、健康保険など、ほとんど夫1人前しか払われてないのに妻の分も「払われたことになってる」ので便益は享受。それに加えて自宅にじっとしてる、あるいはちょっとしか働かないだけで控除の対象となる。だからもっと働く気がなくなる。 単身者世帯はその分税金多く支払わされてるんですよ。 税金は国民の義務。享受する便益があるなら義務も果たす、これが普通では? 控除はなくし、税金支払っても相当額の手取りが手元に残るようにしてはどうなんだろうか?

しかも!テレビを見りゃ、子どものためか何か分からない買い物をしてる主婦だらけ!なんなのこれは一体!! 同類に見られたくないからああいうのはやめて欲しい〜!! … いや、怒っちゃいけない。

子どもに手当て、そんなにしたいなら、例えばこんなのどうでしょう。 育つ環境の差が経済力の差なら、その差を小さくすることにフォーカスすべき!

一、直接手当てと環境の充実の二本立てで行くべき。お金は渡しちゃったら何に使われるかコントロールできないですから
一、所得制限は断固として入れるべし。直接「手当て」とするなら、900万円以上の年収の世帯にはゼロでいいでしょ
一、子どもがすくすくと育つためなら、義務教育の学校の充実に使ったらどうでしょう。昼食に加えて朝食出したっていいし、塾の代わりに補講授業をしたり 
一、子ども産んだら自己責任で育てられるよう、配偶者控除は財源があったって絶対廃止。人間働かなければ食べられないんですよ。勤労意欲を持ちましょう
一、保育所は欲しいですよね。私設、公的、のほか、もっと企業内に設置してもらえるよう、補助金をそっちに出してはどうでしょう

そうそう、こんなデータがあります。私の住む地域の学校区域別の年収です。

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S区学校区別平均年収

小学校
順位 学校  平均年収(万円) 学区域(注意書き参照)
1位 M正小学校  742     喜多見8-9丁目、砧8丁目、成城1-6丁目
2位 S田小学校  718     上野毛3-4丁目、瀬田1-5丁目、玉川台1-2丁目
3位 K品仏小学校 713     奥沢6-8丁目、尾山台1丁目、玉川田園調布1丁目、等々力6丁目
4位 H玉川小学校 704     奥沢1丁目、東玉川1-2丁目
5位 H深沢小学校 702     駒沢5丁目、等々力7丁目、深沢1-5丁目

中学校
順位 学校  平均年収(万円) 学区域(注意書き参照)
1位 H深沢中学校 701     駒沢5丁目、深沢1-5丁目、等々力3,7-8丁目
2位 S田中学校   693     上野毛3-4丁目、瀬田1-5丁目、玉川1-4丁目、玉川台1-2丁目、用賀1-2丁目
3位 O沢中学校   692     奥沢1-3丁目、東玉川1-2丁目
4位 T川中学校  689     上野毛1-4丁目、等々力2-3丁目、中町1-5丁目、野毛1-3丁目、深沢5丁目
5位 Y幡中学校  686     奥沢2,4-8丁目、尾山台1丁目、玉川田園調布1-2丁目、等々力6丁目

資料:
Attractors Lab Co. Ltd. のホームページ(http://www.a-lab.co.jp/research/setai-nenshu/05.html
S区のホームページ「通学区域」(http://www.city.setagaya.tokyo.jp/030/d00007680.html

(注意書き)番地による違いまでは反映していません。詳しくは、上記のS区のホームページをご覧ください。あ、何区か分かりますね。


学区域から見ると同じ地域の小学校と中学校が結局1〜5位を占めています。全体として小学校から中学校に上ると、平均年収が下がってますね。例えば、2位のS田中学は、S田小学校と隣接していますが、学区域が広がるからか、あるいは私立学校に出て行くエリート・リッチ世帯の子どもがいなくなるからか、平均年収が大幅に下がります。

何でこんな地域の人たちへの手当てのために税金払わないといけないの?

民主党責任とってよ!
手当てやめようよ! 私は自分で稼ぐよ!
さっさと配偶者控除もなくしてよ! 私はいらないよ!
郵政もひっくり返したじゃん!
なんで働いても働いても税金上ってくの? こんな愚策のために!

これでも怒っちゃだめなんでしょうか?

そうですよね。。。

生きとし生けるものが幸せでありますように。

*1:2010年6月14日日経氏新聞朝刊3面、「成長押し上げ効果」の欄参照。これまでの各種報道では「2.3兆円」とする記述やコメントが多かった。ここでは前提の確認はしていません。本稿の大勢に影響はないのでご了承ください

*2:厚生労働省ホームページより以下参照ください。 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/dl/100407-1a.pdf