最近のもの

勝海舟西郷隆盛」は、両者がどのように関わっていたのか丁寧に書いている。特に、西郷が鹿児島に下って西南戦争で没した後、勝海舟が西郷の復権のために動いているのが興味深い。勝海舟が西郷を顕彰した碑が洗足池にあるらしいので見てみたいと思う。著者の作品はいつも読みづらいが、この新書は比較的読みやすい方だと思う。しかし、自分の研究結果を後の人が採用していないとしてケチをつけたりところどころ論争っぽいのが玉に瑕。著者によれば、晩年の勝海舟が西郷は征韓論者ではなかったと言い張っていたのは日清戦争の先達として西郷が持ち上げられるのに我慢ならなかったからで、自分でも西郷は征韓論者だと分かっていながら言い張っていたんだとか。著者は、際者は題名を海舟と南洲にしようと思っていたが、編集者に反対されたそうで、今の日本では南洲では通じないと嘆いている。
カミカゼの邦」は日中紛争で沖縄が戦場になり、停戦した後の日本で、高速増殖炉をめぐって中国のスパイと琉球義勇兵がドンパチするもの。設定は面白いが暴力描写が無意味に多く微妙。
「レッドアロー…」は2年前の文庫で当時読んだが、改めて再読した。西武沿線の独特な雰囲気について分析されている。著者は、西武沿線と中央線又は東急沿線、団地と戸建て、鉄道と自動車というように、物事を単純な構図にして対立構造に仕立て上げたり、逆に西武天皇制を導き出したりと、自分が思う図式がまずあって、そこに全てを当てはめていくのが得意なようだ。秩父で、西武秩父線が開通したときのことを「維新」と表現していることについて、この維新が昭和維新と解釈すれば秩父宮に関連するなどと牽強付会なことを書いたりもするので読者はひいてしまう。単純な図式に全てを当てはめるのは、後年の半藤一利のような感じ。