ヤクザ映画と西部劇

日本のヤクザ映画をご覧になったことは?

私自身、子供のころに高倉健さんや勝新太郎さん、鶴田浩二さん、池辺良さんなどの作品や、最近では北野武監督の「アウトレージ」シリーズなどを観ている程度で、それほどの知識はありません。映画史をみてみると、おそろしい数の任侠ものシリーズが存在しているのがわかります。

今回、シネマ部の新しいメンバーの東Kさんの担当でした。

彼が、学生のころに観て、たいへん感動した作品だということで・・。



日本の任侠ものと言えば、悪い親分や政治家や社長を、義理と人情に厚いヒーロー的主人公が、勧善懲悪で懲らしめるパターンや、渡世の義理人情のため、自分を犠牲にして破滅の道を選ぶというような内容のものが圧倒的に多い。

今回の作品は、少し毛色が異なるものでした。

市警の刑事(菅原文太)が、ひとりのヤクザ(松方弘樹)に情けをかけ、惚れ込んで、その結果、自滅していくというストーリーです。

上司である県警の捜査官に梅宮辰夫。悪徳政治家に金子信雄という判で押したような典型的キャスティング。これに、ピラニア軍団と呼ばれた大部屋の俳優陣(室田日出男、川谷拓三など)が絡みます。

大声で恫喝し、どたばたと出入りが行われる。女性を道具のように扱うシーンや、殺戮のシーンでは、ジタバタとカッコよくとはいきません。かなりリアルな演出の深作欣二監督の作風。

最後のシーンの必要性で、議論が盛り上がりました。

レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッド・バイ」のようにはいかなかったけど、男の友情に取り組んだ作品として評価できる内容。

昭和の時代に無数に製作された任侠ものシリーズの元をたどれば、やはり欧米映画の西部劇のアイデア借用から始まっていることは間違いないでしょう。「網走番外地」に登場する酒場は、まるで西部劇のサロンそのもの。畳が敷いてあったりしますが・・。

もちろん、逆輸入の形でハリウッドに影響を与えた作品も存在します。



その代表が、黒沢監督の「七人の侍」ですね。

志村喬三船敏郎は、ほんとうに素敵でした。

この映画に影響を受けて、「荒野の7人」が作られたのはご存じの通り。



侍映画や任侠もの、あるいは西部劇、マカロニ・ウエスタン、ギャングものなんかでも、大きく二つの傾向があると感じます。

実際にはあり得ないようなパターンで、どんどん人を、1本の刀で切り捨てたり(居合の専門家によると、実際には、竹光だからできるのであって、真剣だと重さと血糊で3〜4人が限界だそう)、撃ち殺す(なぜか銃弾飛び交う中、主人公は無傷)など、映画的演出に走ったエンターテイメントな作品。

一方で、リアルでCOOLに、事実に則し、登場人物の内面の心情に迫る作品も存在(先日の「許されざる者」など)します。

きっと、何本かは、ご覧になったことがおありかと。

しかし、やはりスマートさでは、圧倒的にハリウッド映画に軍配が上がります。

ゴッドファーザー」や「ワンスアポン・ナ・タイム・イン・アメリカ」のようにスマートさはない。現在では、邦画もスマートでお洒落になったものですが。



その歴史の流れでのエポック的な存在が、三船敏郎主演の「用心棒」とイーストウッド主演の「荒野の用心棒」と言われています。



このあたり、長くなりますのでまたの機会に。

東Kさん、シネマ部では初めての任侠もの。

担当、ありがとうございました。