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1969年、東大安田講堂事件を契機に全共闘運動が急激に失速をしていった。

東都新聞社で週刊誌編集記者として働く沢田(妻夫木聡)は、活動家たちの志を共有したいという自分の感情と、ジャーナリストとして必要な客観性の狭間で葛藤していた。

1971年になると、直接的な武力闘争が台頭し始めていた。
沢田は先輩の中平(古館寛治)とともに梅山(松山ケンイチ)と名乗る男から接触を受ける。梅山は「武器を揃え、4月に行動を起こす」と意気揚々と語る。

沢田は疑念を抱きつつもぼんやりとした親近感を覚えるようになるのだった…




観賞日

2011年6月3日







【78点】









学生闘争の時代を描いたこの映画は、
元朝日新聞記者、川本三郎による同名のノンフィクション著作を原作としている。




ちなみに私は原作未読な上に、学生闘争時代の物語については明らかに今まで意図的に避けてきた節がありました。

しかし、今自分が大学生だからこそ過去の大学生・若者がどうであったかを知るために今作品へと足を運びました。























妻夫木演ずるジャーナリスト沢田は純粋すぎるきらいがある。
「優しい」という言葉で表すのが最もわかりやすいが、つまりそれはジャーナリストとしては「甘い」ということにつながるのだろう。


私自身、大学入学当初は記者という職業に興味を持っていた。まあいろいろあってその興味は失われたわけだが、この映画を観てやはり自分が"向いていない"とわかった。

なぜなら、私はこの映画を観ていて新聞社側の考え方ではなく、沢田に共感してしまったからだ。社会からみれば、私は"アマちゃん"なのだろう。







だが、作中での
「学生新聞をつくってるんじゃないんだよ」という三浦友和が演じた東都新聞の社会部部長の言葉が頭に残った。

ああ、そうか。ジャーナリズムはそういうもんだよな。
だから私にとっては"違う"道だ。




















今回の映画で感じるところとしては、
闘争の世代であっても、流れ・惰性で活動をやっている人間、ぼやけた理想しか見えていない人間の存在だ。




結局、現代の若者とは大した根本的な違いはないのではないのか。(そういうと人生の先輩方に怒られてしまうかもしれないが)何が違ったのだろうか。

行動したという事実か?しかし残ったのは焦燥感だけではないのか?



だからこそ今の時代まで諦めの感が残ってきたのではないのか。いわゆる「祭りのあと」のような感覚が続いてきたのではないのか?



まあ自分も積極的に行動した人間ではないので、以上のような暴言をお許しください
(笑)。

























やはりこの映画の見所は、

妻夫木演ずる純粋すぎるジャーナリスト沢田と松ケン演ずる虚栄を張る若者にある。


沢田の"優しさ"というぶれる感情が妻夫木に非常にマッチしている。






また『ノルウェイの森』では学生闘争がさかんながらも冷めていた若者を演じていた松ケンが、学生闘争の思想に燃える若者を演じたこともかなり注目ポイントだ。

学生闘争に燃えている若者は、若者ゆえの尊大さか。あるいは優秀な人間だと思おうとする愚劣さに溢れている。
(ある意味作品を観ている自分自身への戒めになるわけですが)




対照的な役だったが、
しかし『ノルウェイの森』での若者と同様に、松ケンは"欠けている"若者を見事に演じきった。

要するにけっこうなクソ野郎てことだ。

GANTZ』のような作品では現れることの無かった松ケンの演技の魅力・巧さがはっきりとでたと言えるだろう。






だが、最後の最後にもっていったのは妻夫木だ。



ラストで非常に長いシーンながら、この映画を締めるにふさわしい、「ある行動(心情の溢れ方?)」が素晴らしすぎた。伏線も見事に回収した。いや、バレバレだったけども、だがバレバレでもこのレベルを見せ付けられると圧倒される。

そして『悪人』でみせたあのラストシーンと同じような印象を覚えたのだった。

















2人をつないだのは本と音楽だった。
中でも音楽は非常に大きい。


この世代は
ビートルズ世代であったりして、いわゆる音楽がマスパワーで世界を変えようと働きかけられた時代の象徴であることは間違いない。




映画音楽をみると、
BGMはバンド、クラムボンのミトが担当している。

これが「妙な」BGMに仕上がっている。
「トーンッ」という音のように"虚"、"空"というイメージが頭に浮かぶもので、この音楽が映画全体のどことない空しさを代弁している。








さらに、名曲をカバーした主題歌も聴き逃せない。


実は
主題歌であるこの曲がこの映画を+3点した要因だ。

真心ブラザーズ奥田民生という何とも渋くカッコいい組み合わせから生み出される、英語詞、日本語詞の融合された音楽。


郷愁的な雰囲気が映画のエンディングとしては最高のものとなっている。





My Back Pages/真心ブラザーズ奥田民生
視聴はコチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=VhqTJqsfIWQ

























この映画が週間チャートで10位から外れてしまった現実は正直悲しい。


有名役者を使った映画が、初公開週でトップ10に入らないということは大ゴケしたという事だからだ。この有名キャスト陣で興行収入が少ないのは明らかにヤバイと思います。


だが、冒頭でも述べたとおり今作品は大学生である自分達も観ておくべき映画だと思うし、ある意味遠いものだった70年代への接点となる映画だと私は強く感じる。









↓予告編はコチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=yRmFoYR0vYg