NOVA 2

1作目と違って、ふだんあまりSFを書かないような作家の短編が中心のSFアンソロジー。僕としては1作目のほうが好きだったけど、ジャンルSF特有のジャーゴンを多用した作品が少ないおかげでこちらのほうがとっつきやすいかもしれない。とくに津原泰水「五色の舟」が傑作すぎて、これを読めただけでもう満足してしまった。短編なのに一人生終えたような読後感がある。
以下、それぞれを解説。ネタバレなし。

神林長平「かくも無数の悲鳴」

宇宙海賊的なアウトロー野郎がなぜか人類の命運を背負わされたよくわからない賭けに身を投じるという、ふわふわとした話。神林的な、読者置いてけぼり感が強い。

小路幸也レンズマンの子供」

ジュブナイルすぎる。

法月綸太郎「バベルの牢獄」

脱獄小説ということなんですが、オチがわかったとたん脱力します。脱力小説。

倉田タカシ「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」

もはや読めない。

恩田陸「東京の日記」

管理社会化が進む日本を書く。オーウェル「1984年」をすごくライトにして傍観者に書かせた感じ。

田辺青蛙「てのひら宇宙譚」

結婚おめでとうございます。円城塔先生。

曽根圭介「衝突」

隕石衝突の際にじたばたする人類の話。この人の文章はなんか素人くさいんだよなあ。

東浩紀クリュセの魚」

あいかわらず文末が「た。」で終わりすぎだろ。もう少しなんとかならないのか。でも内容は興味深い。火星で主権なき社会が生まれ、それを地球の主権国家が食い物にしようとしたりしなかったり。

新城カズマ「マトリカレント」

この人の文章もあまり好きになれない。水棲人の話。

津原泰水「五色の舟」

傑作。文体がすごい。開始10秒で引き込まれる。このアンソロジーで一番上手い。見世物小屋を営む一家の話。

宮部みゆき「聖痕」

虐待児童が親を殺して裁かれるという社会派ミステリかと思ったら斜め上をいく展開に。しかしどこかお行儀のいい理詰めな感じもする。

西崎憲「行列(プロセッション)」

百鬼夜行的ななにか。よくわからない。