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deku_decさんの読書メーター
 

2016-05-28 Fate/strange fake 3

Fate/strange fake 3

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内容(「BOOK」データベースより)

偽りの聖杯戦争を生贄として、本物の聖杯戦争を喚び起こす。それが黒幕たちが執り行った大掛かりな仕掛けだった。黒幕陣営が召喚せし新たなる英霊達。そして、プレラーティの雇った若き傭兵シグマが喚び出してしまった“エクストラクラス”の正体とは―。シグマはまだ知らない。彼が喚び出したモノが、英雄とも神魔の類とも表しがたい、一際異常な『現象』であるという事を。雇い主の好奇心を満たす為の要素でしかなかった彼が、最大のイレギュラーとして戦いに巻き込まれることも…。開戦の日の夜明け。スノーフィールドという歪な戦場に、全てのピースが揃おうとしていた。最後に組み上げられる絵の完成図すら、誰一人想像できぬままに。

 ネタバレあり。

 1年ぶりの新刊。そうやって間が空いていて通常の聖杯戦争よりも大分サーヴァントもマスターも多く、それだけ登場人物の多い作品で群像劇で視点がころころと変わるので、正直この人どういう立ち位置だったっけという思うことが多かった。復習しないとな。

 そうして今まで一挙にキャラクターをどんどん登場させていたので、今回で登場人物は出揃ったとあとがきにも書いてあり、4巻では『バトル成分多めになりそうな感じ』ということで、これからどうなっていくのか楽しみ。

 まだ脱落した陣営もないし、現在はまだまだ序章で今後どのくらいのペースで物語が動いていくかはわからないけど、陣営の数を考えても相当長い物語となりそうなので、このペースなら完結はかなり先になりそうだ。

 主人公的なポジションのアヤカ・サジョウは単純に巻き込まれ・流されてきただけかと思いきや、「沙条綾香」とは見た目もそっくりだが別人だということが判明して、どうも不穏な裏事情がありそうな気配が出てきて、そこらへんも気になるところ。そして彼女の相棒のセイバー獅子心王だったか。この人はリアルに結構ぶっとんだことをやらかしている歴史的人物だから、セイバーの奔放ぶりや「『座』にできるだけ多くの歌と英雄譚を持ち帰りたい」(P182)という発言も納得する。

 Σ(シグマ)、自我の薄い道具のように手駒として使われる青年。本人が今後ランサーとして強化されていくというのは面白いね。どうやって強化されていくのか、気になるな。そして彼は冬木の四次聖杯戦争で切嗣の助手だった久宇舞弥の子供か! 

 昏睡した少女マスターの夢での思いから、スノーフィールドという街が聖杯戦争というかなり危なっかしいことをやっているのに、誰も出られないという牢獄のような場所へと変わることになる。

 フラットが(遠坂)凛と知り合いだったり、魔術の世界が小さいということもあるのだろうが、ちょこちょこと他シリーズでのキャラの名前が登場しているのはちょっと嬉しいね。私は他シリーズはstay nightとzeroくらいしかわからないけど、他にも他シリーズの人物の名前が出ていたり関係をほのめかされているのもあるのだろうな。

 群像劇だけど、今のところこのシリーズの主人公的なポジションにいるのはアヤカ・サジョウ、そして本人が力をつけることになりそうなΣもそれっぽくなりそうな気がする。

 そしてギルガメッシュとティーネは、4次のイスカンダルウェイバー的な関係と立ち位置で、途中敗退するけどサーヴァントの存在によってマスターは成長するという感じになりそう。

2016-05-27 崩れゆく絆

崩れゆく絆

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内容(「BOOK」データベースより)

古くからの呪術や慣習が根づく大地で、黙々と畑を耕し、獰猛に戦い、一代で名声と財産を築いた男オコンクウォ。しかし彼の誇りと、村の人々の生活を蝕み始めたのは、凶作でも戦争でもなく、新しい宗教の形で忍び寄る欧州の植民地支配だった。「アフリカ文学の父」の最高傑作。

 kindleで読了。

 「訳者まえがき」によれば、この小説はアフリカ文学の金字塔と呼ばれるような有名な作品みたい。

 『十九世紀後半、ちょうどイギリスの植民地支配が始まる直前の時代、現在のナイジェリア東部州に位置する、ウムオフィア(森の人びと)という架空の土地』を舞台に、当時のイボ人の社会の姿、そしてイギリスの植民地支配・布教によって、それまでのイボ社会・伝統が突き崩されていく様を活写した物語。

 『アフリカの「過去」を鮮やかに描き出すと共に、植民地支配がアフリカにもたらした衝撃を見事に捕らえた点です。とりわけ強調すべきは、ヨーロッパ人との遭遇が、アフリカ人の視点から、かれら自身の経験としてとらえ直され、描かれているところです。』そうした意味でも意義深い小説。

 過去のアフリカの生活の様子が書かれているのは非常に興味深く面白い。そうしたありし日の、自分の知らないある文化の社会・伝統・生活について詳細に書かれているのを読むのはそれだけでも面白い。そうした内容的な興味深さもあるし、物語もシンプルで読みやすいので想像以上に楽しめた。

 例えばエグウグウという先祖の霊に村の実力者が扮して、その仮装をしたまま執り行う裁判の描写とか、あるいは独特の言い回しとか、宴会の様子とか。

 主人公オコンクウォは、怠惰な父を持った影響で子供の頃から苦労を重ねた。そのせいで彼は自分にも他人にも厳しくなり、また成功や名誉にこだわる(侮られることを何よりも嫌う)人物となる。そうした性質と時代の節目が悪い具合にかみ合った結果、悲劇的な最期を遂げる結果となる。

 オコンクウォはイケメナフ少年を村同士の争いで人質として何年も預かっていた。彼はイケメナフを息子のように思い、愛していた。しかしどうした理由でか彼を殺すことになって、最期は自分に助けを求めたイケメナフを臆病者と思われるのを怖れて切りつけて死に至らしめることになる。それは彼にとっても非常に気が沈む出来事であり、友人オビエリカはそうするべきではなかったといい、息子のイウェイェにもトラウマを与えた出来事であった。

 第一部は一つの村の中で収まる話で、第二部で過失致死で村外追放になって母の出身村へ行ったその地でのことが描かれ、第三部で再び元の村に戻ってきて悲劇的な結末を迎える。そして第二部ではじめて白人の話がでてきて、第三部で元の村に戻ってきたときに村が大きく変容している事を知る。そしてイギリスの権力と宗教がきたことによる共同体の急激な崩壊を見ることになる。

 そうした主人公の身の回りしか移さない物語の規模の小ささもまた良い。そういう小さくて秩序だった村の伝統が、わけもわからぬままに短期間で崩壊することで困惑し、反発するうちに悲劇的結末へと至る。規模が小さいことで、大局的に見ればありふれたケースではなく、個人の悲劇になることでより印象深いものとなる。

 もっと何かエピソードを重ねるかと思ったところで案外さらりと終わったが、そうしたあっさりとした結末もいいね。ありふれた悲劇であることとか、オコンクウォの取り残された空虚な中で死んでいったということが感じられるとか、色々とあっさりとした終わりの理由を見つけられるしね。

 訳者の解説、イケメネフの死によって共同体の内部に伝統的な規律に対する異論・葛藤がでてくる。そうした内在的な異論・批判は新たにきたキリスト教に回収される。『アチェベが傑出しているのは、キリスト教植民地主義の論理をとらえたうえで、それを唯一の悲劇の要因とはせず、むしろ触媒として描いているところだろう。』

2016-05-25 魔法科高校の劣等生SS

魔法科高校の劣等生SS

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内容(「BOOK」データベースより)

二〇九六年度『全国魔法科高校親善魔法競技大会』。司波達也が、魔法兵器『パラサイドール』運用試験計画を阻止すべく『裏』で行動を起こしていた頃。『表』側では、魔法科高校生たちの熱戦が繰り広げられていた。モノリス・コードの選手・吉田幹比古のエピソード『竜神の虜』。新競技ロアー・アンド・ガンナーの選手・エイミィのエピソード『ショットガン!』。アイス・ピラーズ・ブレイクの選手・雫と花音のエピソード『一人でできるのに』。黒羽姉弟のエピソード『目立とうミッション』。そして、レオとエリカのエピソード『薔薇の誘惑』。書きおろしを含む連作短編集、登場!


 短編集。達也たちが二年のときの九校戦にまつわる話が収録されている。あとがきを読むと、本編で二年の九校戦をやっていたのが13巻のときで2年前だそう。そして確かその頃から短編で雑誌に掲載すると聞いて、短編集として出るのを待っていたが案外時間がかかったな。年月的にはそれほどでもないのだが、その間に本編がずいぶんと巻を重ねているからそういう印象がある。

 「龍神の虜」幹比古が「神童」と呼ばれるほど才能があったのに二科生で入学することになった原因の出来事が語られる。何かがあって魔法を上手く使えないようになったということは、最初から書かれていたので具体的なことは明かされていなかったので、ついにその出来事の詳細が見れたのはちょっと嬉しい。

 喚起魔法で竜神という強大な精霊と繋がった時に限界のスピードで魔法式を作らされたから、それで感覚がおかしくなったということのようだ。そして前年の九校戦で達也がアレンジした魔法式でそのとき以上のスピード、本当の限界のスピードを経験したことで、錯覚から逃れられたということのようだ。

 前回の九校戦は思っていた以上に幹比古にとって転機となった出来事だったようだ。

 たしか前年の一条・吉祥寺らの三高チームとの対戦の最後での、このままでは全部達也のおかげになってしまう。だが、それに甘えることは矜持が許さないと意地を見せていたと思う。

 その箇所を以前読んだときは確かに達也のおかげもあるけど、全部というのはずいぶんいうな、チームメンバーとしてしっかり仕事をしているのに、自分の役割を小さく見積もりすぎではと思ったものだ。しかしそうした事情を聞くと、彼にとっては確かな実感から出た言葉だったのかもと今更ながら思った。

 「ショットガン!」明智エイミィが主役の話。達也は彼女が代表となった新競技に参考の吉祥寺が得意とするインビジブル・ブリットを使用することを提案。実際の競技でアレンジを加えたインビジブル・ブリットが使われているのを見た、吉祥寺はショックを受けて、優勝確実と目されていたその種目で優勝を逃す。

 「一人でできるのに」雫と花音がコンビを組んでのアイス・ピラーズ・ブレイクの話。吉祥寺の策は次善に見抜かれ既にそのときのための魔法まで用意されて、その策を用いて直ぐに三高があっさりと負けた。そうして再び吉祥寺はがっくりすることになる。

 今回の短編集では吉祥寺がやられ役となっていてかわいそうだな。同年代では達也についで頭が切れるキャラである吉祥寺の想像を上回って、彼を驚かせることで、達也のアイデアを凄いと思わせられるというのはわかるけどね。

 「目立とうミッション」黒羽の双子が主役の短編。四葉当主の真夜から四葉家の分家に黒羽がいるという真偽不詳の噂を立て、そして二人の活躍を見せて、司馬兄妹への注目をそらさせよという使命を受ける。

 そしてそのミッションの一環で、四高の先輩から達也を紹介してもらい初対面と装う。そのとき四高の先輩は達也を特別ハンサムでないが、その落ち着いたたたずまいが格好良いとの評価をしている。達也はイラストは普通に格好良いから顔は普通といわれても、そう? と思っていたけど、この情報を聞いて、ようやくそう思えばいいのだという納得する落としどころを見つけたような気がする(笑)。

 「薔薇の誘惑」レオとエリカの話。実は二人の祖父が親しい関係だったことが明かされる。レオの祖父はローゼン家が作った調整体魔法師で、エリカの祖父はローゼン家からレオの祖父と共に出奔した人物。

 第一世代の調整体魔法師の性能を受け継ぐレオをなんとか手に入れようとするローゼン家の悪だくみにレオ・エリカのコンビが対峙することになる。

 エリカの祖父がレオの祖父とともにリスクを犯してローゼン家から出奔したのに、あたかもローゼン家がレオの祖父を他国に移してやったという風に事実と逆のことをいけしゃあしゃあといって、恩を売ろうとしているのはいらっとする。しかしレオはそんな言葉に全くなびかないのでよかった。

2016-05-23 図解 戦国史

図解 戦国史

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図解 戦国史 歴史がおもしろいシリーズ

図解 戦国史 歴史がおもしろいシリーズ


 kindleで読む。戦国時代は人気のある時代だけど、信長秀吉家康というメインの流れ以外はあまり知らないので、この本を読む。

 図解で2ページごとに区切っているから、あまり突っ込んだ話もなかったのもあるけど意外と知っていること多いなという印象。そんなにその時代について書かれたものを読んだとは思っていないが、知らず知らずのうちに色んなところで知ったこの時代の知識というのは案外多いものだと確認することになった。

 ページの下の段に、そのページで扱っている事柄に関連した小説や映画、歴史の本等の紹介がなされている。それも気になった出来事の本をチェックできたり、あるいはその紹介で読みたくなるものもあっていいね。「戦国の堅城」とか『一六の城の攻め方と守り方を徹底解説・実際に現場を訪れて考察し、各城の評価をしている点が特徴です。』(P62)と書いてあるのを見て読みたくなった。ただ、ムック本だから品切れなのが残念。あと、「戦史ドキュメント 賤ヶ岳の戦い」も面白そうだ。まあ、これもamazonで品切れだけど。

 深く突っ込んだところはないにせよ室町時代から戦国時代の多くの出来事を一通り見ることができてよかった。とりあえず今後は地域別の戦国時代の本で何か面白そうなものがあったら読んでいこうかな。

 応仁の乱の東西両軍の大将である山名持豊細川勝元嘉吉の乱で将軍を暗殺した赤松満祐を山名持豊(宗全)が倒したが、その赤松氏を細川勝元が力添えして再興したことに山名持豊(宗全)が強く反対したことで、両者の対立が表面化した。

 室町幕府の実力者だった細川政元修験道にのめりこんで妻帯せず、子供を作らず、養子をとった。そして晩年には軍事を赤沢朝経に、政務を安富元家・斎藤元右に負かさせきりにしていた。

 彼は養子を九条家からは澄之を、一族の阿波守護家から澄元を、備中守護細川家から高国をとって、そこから家中が澄之派と澄元派で分裂し、澄之派が澄元を後継者にと考えていた政元を香西元長が謀殺し、澄之が細川家行使と将軍に認めさせるも、澄元派は高国の助けを得て澄之を滅ぼす。しかし3つの家から養子とってきたら、そりゃもめるだろう。そうした中々に混沌とした状況を知って、細川政元についてちょっと興味が湧いてきた。

 斎藤道三は父が土岐氏の重臣長井家に仕えて武士となり出世して、彼の代で下剋上で国取りしたのか。wikiを見てみたら、油売りだったのは彼の父の松波庄五郎(長井新左衛門尉)。

 村上義清武田信玄と何度も戦って、勝ったり負けたりしたが最後は上杉謙信の下に落ち延びた。そしてその能力で上杉家で5万石の城主となり、上杉家の重臣として養子景勝に継ぐ地位を得た。あまり知らなかった人物だが、そうした話を聞いてちょっと興味がわく。

2016-05-22 魔法科高校の劣等生 19

魔法科高校の劣等生 19

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内容(「BOOK」データベースより)

死体を操る魔法で自爆テロを敢行させるという残酷な計画を企てた魔法師・顧傑は、気配を消して日本に潜伏していた。この自爆テロ事件によって、世論が魔法師を糾弾しはじめ、人間主義の勢力が勢いづく中、十師族は黒幕の捜査を決める。十文字克人、七草真由美、一条将輝と協力して司波達也は顧傑の行方を探す。しかし、手掛かりを掴んだ達也の前に思わぬ敵が立ち塞がる。USNA軍。米軍最強の魔法師部隊スターズのナンバーツー、ベンジャミン・カノープス少佐も参戦するこの『顧傑』争奪戦は、思わぬかたちで達也を『激怒』させ…!


 今回で師族会議、対顧傑編も終わり。本編は250ページ程度で終わり、その後に「一条将輝転校日記」が80ページ程度ある。次回はついに本編ではスキップされていて、二年次の九校戦の短編集がでるということで楽しみ。そしてその次、『次章では達也たちも最終学年に進級します。『魔法科高校の劣等生』もいよいよクライマックスに突入です。』(P336)とのことなのでそれも楽しみだ。

 前回深雪たちが暴徒に囲まれていたところで終わっていたが、今回達也が深雪を助けにきた。そしてその事件の後処理で困ることならずに終わってよかった。

 東道青波という『かつての第四研のオーナーであり今は四葉家のスポンサー』(P82)であり、他のスポンサーもしている相当な大物が登場。黒幕にもなっても不思議でない立位置の魔法界の大立者だが、今後どう物語と絡んでくるのか気になる。

 エリカの兄である千葉寿和警部が顧傑にゾンビみたいになって操られて、達也は友人の兄に最終的に手を下すという役回りになってしまう。達也も対処に迷っていたので元に戻す術があるかもしれないと期待したのだけど、最終的にそのような結果となった。今までそうした味方側のネームドキャラが死亡したことは、別シリーズや過去の話としてならあっても現在の話としては(たぶん)なかったから、ちょっと驚いた。

 顧傑の死亡は確認したが、USNAの介入で死体も確保できなかった。そのようにUSNAが単なるやられ役ではなく描写されたことはよかった。

 しかしそのことで魔法師(十師族)で彼を捕らえるか始末することで、巷間の反魔法師の風潮を改めさせるという当初の目的を達成できずに終わる。そのためそうした世間の不安という漠然としたもの、目に見えないゆえに抗しがたい魔法師に対する不信感という強力なデメリットは持ち越される結果となった。

 藤林中尉は千葉警部の死によって、自責の念にかられ、そして自分が彼に好意を抱いていたことを知る。なにごともなければ直ぐ何かあったということはないにせよ、いずれ何かあっただろう二人がこういう形で関係が終わるのは切ないな。

 「一条将輝転校日記」日記形式でこの事件の最中に一高に通っていた一条の内面が綴られる。もっと大人な印象があったので、この日記に書かれている思っていた以上に歳相応な高校生らしい一条にちょっと和む。

2016-05-20 日本人の給与明細

日本人の給与明細

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内容(「BOOK」データベースより)

貧窮問答歌」を詠んだ万葉歌人山上憶良の年収は1400万円だった―!?古代から近世まで、米や土地などの値段を手がかりに、先人たちの給料を現代のお金に換算。ノンキャリア菅原道真王朝のOL・紫式部脱サラ兼好法師戦国武将岡左内財テク大田南畝の出張旅費など、いにしえのひとびとの生活を浮き彫りにする。古典資料を丁寧にひもとき、現代の私たちに通じる悲喜こもごもを、物価を軸に読み解く。




 米価換算で色々な時代のさまざまな物の値段が紹介されたエッセイ的な本。当然現代とは物の価値の相対的関係が異なるから参考程度だけど、やっぱり現在の円で換算してくれるのはわかりやすいからいいね。

 そしてこの種の値段の話は江戸時代の値段の話ならばそれなりにあるのだけど、それ以外の時代奈良時代平安時代みたいな時代の値段の話を書いてくれているのは珍しいし、そうした時代の色々なものの値段の話はほとんど知らないので面白かった。他にも鎌倉時代、室町・戦国時代江戸時代の話もある。

 また、巻末に奈良時代平安時代中世江戸時代のそれぞれの物価表が置かれているのはありがたい。そして巻末だけでなく諸所で図(例えば「万葉家人の官位別給与一覧」や「遣唐使の出張旅費」など)が挿入されていたりするのも嬉しい。しかし安かったからkindleで買ったが、こうした物価表などがついてくるならば紙の本で買ったほうが、気軽に手繰れるから、そのほうが便利だったかもなとちょっと後悔。

 そして各時代ごとに数編にわかれていて、一編ごとに実際の人物や物語の人物などをピックアップしてその人の話をして、その人を例にとってある事柄にまつわる金の話がなされる。その話を通じて、さまざまなものの金額などが書かれている。そうしたある人物に焦点を当てて、その人と金についての話がされているが、そうした金の話は生活感もでるから、扱われている話が身近なものに感じられる。おかげで読みやすくて面白かった。

 『平安時代の強盗窃盗は、盗品の価格を布に換算して刑量を決定する。』調書で盗品の値段を銭・布に換算してくれていることで当時の物価がわかるというのは面白い。

 位(くらい)を買う。地方豪族などがひとまずの目標とした従五以下より低い外従五位下を買うとすると、一文=六十円とすると、約六千万から一億二千万の値段となる。官位を買うとなると裏の役得があるため、さらに高くなる。

 三条西実隆の1526年の収入の内訳の図を見ると荘園からの収入、座・渡り場よりの収入、アルバイト(古典の講義や、色んなものに字を書くこと)が三本柱の収入だったようだ。1537年に正二位内大臣で亡くなった彼でも相当アルバイトの比率が高いな。そして座・渡り場よりの収入というのが、かなりあったということは知らなかったのでちょっとそれについて興味がわく。あと、もっと低い位階の貴族たちは荘園もっと遠慮なく取られていただろうから、もっとアルバイト頼りだったろうなと感じる。

 同じ戦国時代の貴族山科時継はかつて十数カ国に五十箇所以上の荘園があったが、応仁の乱以後の侵略が激しく、荘園八箇所銭二十九貫文(約140万)の収入に。そのため調薬で収入を得ることになる。