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2017-02-17 青きドナウの乱痴気

青きドナウの乱痴気

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青きドナウの乱痴気―ウィーン1848年 (平凡社ライブラリー)

青きドナウの乱痴気―ウィーン1848年 (平凡社ライブラリー)

内容(「BOOK」データベースより)

つるはしやスコップをかついで市内にながれこむ労働者、銃をとる女たち…。ウィーン48年革命を、無名の民衆の血のかよう歴史の現場としてあざやかに再現した、社会史の傑作。

 1848年ウィーンでの革命騒ぎ、そして当時のウィーンの街の様子や民衆の姿が書かれる。そうした当時の街や民衆の姿の描写が面白い。

 ウィーン19世紀初頭の人口は21万弱だったが、1850年には約43万人と倍増する。地方からウィーンに来た貧しい人々の中には、下水道で寒さを凌ぐ者もいた。また雨が降るたびに雨水で流れた金属などを探しに下水道に潜る人もいた。

 『ウィーンもまた呼売りの街である。さまざまな物売りや移動する手工業職人たちが路上をやってくる。』(P53)『子供たちの遊び場所でウリアルクブレーツェル売りも、すでに一八世紀の風俗画のなかにおさめられている。丸型、角型、ハート形、さらに八の字型など、さまざまな形に棒が死を焼いて、子供たちのほか、市外区の場末の飲み屋や近郊のホイリゲでワインのつまみに売り歩く。』(P59)江戸時代についての本を読んでいてもそうだが、こうした呼売りとかは今はない日常を感じさせてくれるものだから、読んでいてなんかいいなと思える。

 『ボヘミアモラヴィア、ガリツィアのユダヤ人は、あらかじめ「戸籍」の数が法的に定められていて、たとえばボヘミアは八千六百の戸籍数しか許されていなかったから、ユダヤ人の場合、結婚して家庭をもてるのはほぼ長子に限られていた。』(P64-6)そんな制限が存在した場所もあっのか。

 『どの家にも街路に面した入口に重く大きな木の扉がある。昼間は開け放しのままで、夜間は錠がおろされる。扉を抜けて暗い穴倉のような地階に足を踏み入れると、階段の下にたいていはハウスマイスターの住居がある。』(P150)市内区の門限は十時で市外区の門限は九時と決まっていた。酒盛りをしていてその時間までに家に帰れなかったりすると、ハウスマイスターにいくらか(六クロイツァー銅貨が相場)支払って開けてもらう。『当時のウィーン庶民生活を記録文学風に描いた詩人グロース=ホフィンガーも、『ウィーンあるがまま』の二冊目をハウスマイスターの生態描写にあてている。家の戸を開けてもらうにも、相場の六クロイツァーやるだけじゃ、ベルを半時間も鳴らしてからやっと、喚きながら起きてくる。旧クロイツァー出すと、無愛想だがすぐ開けてくれる。十五クロイツァーも出すと、とはぱっと開き「お帰り」「お休み」の挨拶つきで、ランプも灯してくれる。三十クロイツァー出す殿方には、住居の戸口までランプで先導し、「旦那様のお手にキスを」などとぬかす。』(P152)こうした生活感のあるエピソード、面白い。

 ウィーンの女子労働者の賃金は非常に少なく、売春を副業としなければならない者も多かった。『当時のかなり正確な統計数字が残っているのだが、この時期のウィーンでは生まれた子供の二人に一人は私生児だった。おまけに生まれた子供の三分の一は捨子として捨子院に収容された。最も捨子といっても、臨月近い母親がまず収容されて、産んだ子は施設からよそに貰われて行く場合が多い。(中略)この種の施設は、ヨーロッパのどこでもそうだったのだが、収容された子供は大部分大人にならないうちに死んでしまう。ウィーンのばあいもこの種の施設ができてから一八三九年までの五十四年間に、収容された子供がのべ十八万人、施設で死んでしまった者が十四万人、一定年齢に達してともかく施設を出ることができた者はわずか二万人だった。』(P232)数字としてみると、かつての孤児院の死亡率の想像以上の酷さに引く。 

 1848年3月13日、学生と連帯した労働者暴動が起きる。『皇帝側近の支配層は、リーニエ外や市外区で荒れ狂うプロレタリア暴動を目の当たりにして、急遽市民・学生の武装を許した。七千の兵でもあの火の柱を消すのは無理だと、軍の報告もあったからである。』(P90)

 その暴動を前に宮廷側も譲歩し宰相メッテルニヒが辞任が決まり、そして彼は夜逃げのようにウィーンから逃げだすことになる。最後の要求の憲法樹立も、早い時期に憲法審議のための全領邦議会を招集し、市民層も参加させると皇帝が約束したことでひとまず落着。

 宮廷内の反メッテルニヒ派が、メッテルニヒ辞任に追い込むためにデモの動きを知りつつ野放しにしていた。そしてメッテルニヒ追放が実現したはいいが、今度の事件は彼らの想像以上に大きく過激になった。

 ウィーンで国民軍が作られる。民衆の運動の高まりを受けて皇帝ウィーンから脱出する。学生たちで作っていたアカデミー兵団は、夏休みで帰郷して冷静になりウィーンの騒動で命を捨てることもないと思い直し、そのままウィーンに戻らなかった者も多かった。そのため10月のウィーン革命の最終局面ではアカデミー兵団は当初の四分の一の規模になっていた。

 そしてウィーン革命は10月に皇帝軍に負けて終わる。

2017-02-16 FLESH&BLOOD 3

FLESH&BLOOD 3

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FLESH & BLOOD3 (キャラ文庫)

FLESH & BLOOD3 (キャラ文庫)

 kindleで読了。ネタバレあり。

 今回はナイジェル回。

 海斗はビスケットに潜む穀象虫に最初は驚いていたようだが、もう慣れたというのは適応力高いな。そして航海長ナイジェルに罰を与えながらも、彼は不器用な人間で悪い奴でないことがわかっているから嫌いになれない。そのように感じたことで、海斗はこの世界に来て我ながら寛容になったと思い内心苦笑いする。

 ジェフリーがカイトの善良さと脆さを見て、生命の危険などから遠いところで育っていたのだろうと思い、たぶんジパングならそれでも安穏と生きられたのだろうが、ジェフリーの世界ではその性質は命取りになりかねないと危惧している。カイトが未来人ではなくジパングから来たとごまかしたことで彼はそう思っているのだが、実際の当時(戦国)の日本の荒っぽさを思うと、そのギャップにくすりとくる。

 スペイン商船を襲撃して勝利して、船ごと戦利品にするという私掠船としての活躍が書かれる。ジェフリーは鹵獲した船の船長から情報を引き出すために、歓待している風に食事に誘う。食事する場である船長室の食卓をコーディネートする。海斗がそうした細やかなところでの活躍しているのがいいね。

 そのスペイン人船長の言葉で、日本で活動しているのは(史実の)イエズス会ではなくフランシスコ会だということが明らかになる。そのことで海斗はこの世界は自分の知っているものと良く似ているけれど、微妙に異なった平衡世界であることがわかる。だからその時代についてかなりの知識を持つ海斗がジェフリーのことを知らなかったと合点がいくと同時に、自分の予言(史実の知識)が通じるか不明だということに激しく動揺する。

 そして時代の流れを史実に近づけなければと意識を新たにする。ドレイクに向かって自信をなくしたといっているときは、予防線を張っているのかと思ったが、どうやら少し偽りを述べてより有利にことを運ぼうとしたら、重大な結果に繋がりそうになったため海斗はそういったようだ。そのこともあって今後は不確定要素を省くために、余計なことはすまいと自らを戒める。

 ドレイク神意(予言)に基づいた自信を持って狂信的にも見えるくらいで、ジェフリーはそれを危ぶむ。そうした変化の描写もあるので、未来が不確定になって史実と変わるのではないかという不安が生じる。

 ビセンテの船が再びジェフリーと海斗の前に姿を現す。今回は白兵戦となり、海斗はナイジェルと共に身を隠す。そのときにナイジェルは自分の過去のことなどを怯える海斗の気を紛らわせるために語る。今回も無事撃退する。

 そしてジェフリーはどうやらナイジェルが海斗に惚れたようだと感じる。

2017-02-03 先生と私

先生と私

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先生と私 (幻冬舎文庫)

先生と私 (幻冬舎文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

誕生から高校入学までの15年間、両親・伯父・副塾長・牧師…多大な影響を与えた先生たち。知の“巨星”の思想と行動の原点を描いた自伝ノンフィクション


 kindleで読了。

 著者の中学時代の話が書かれる。中学時代に通っていた塾の先生との交流など、著者が中学時代にした大人との交流の話が主に書かれている。

 少年時代の著者は無線好きでアマチュア無線の資格もとった。その無線の話。そして父の話。中学時代に塾に通うようになって、そこの先生たちとの話。山田義塾で出会った国語の先生、早慶学院で出会った数学の先生などと授業外でも色々と話していたという話。そして高校受験の話。そして高校に入る直前にした一人での北海道旅行の話が書かれている。

 塾の先生たちが中学生の佐藤少年を子ども扱いせずにはなしているのはいいな。その交流で『元副塾長や数学の先生を通じて、同年代の生徒たちよりも、大人の社会の雰囲気を、一足先に知った。』(N3262)

 中学時代に大人に対するのと同じように接してくれる人たちがいた。そういう関係性っていいね。大人たちとそうした交流ができたのは、著者がそういう対応させるだけ成熟していると思われていたほどしっかりしていたということだろう。そうした交流もあって徐々に興味が無線などの理系的なものから人文的なものへと移っていった時期のことを書いている。

 山田義塾から独立して新しい塾(早慶学院)を開く先生にスカウトされて、著者が慕っていた国語の先生もその塾で教鞭をとるといわれたこともあって、通う塾を変えた。

 その後その国語の先生はそこから更に独立するということになる。その話を聞いて直接国語の先生(副塾長)にそのことを尋ねると、塾長との方針の違いといった塾の内情まで話してくれた。そこまで真摯に話してくれる大人を先生に持てたというのは間違いなくいいことだよね。

 中学時代にソ連への関心が芽生えて、早稲田高等学院ではロシア語が勉強できると知って、そこを目指してみようという気になる。受験で出る内容が異なる(浦和は問題は難しくないが合格ラインとなる点数が高く間違いは許されない、早稲田は問題が大変難しいが合格ラインとなる点は低め)ということもあって、それは勧めないといわれた。しかしロシアへ興味があると知った元副塾長は、山田義塾で国語を教えている岸田先生はソ連レニングラード国立大学で日本語を教えていた先生だといって、引き合わせてくれた。

 結局早稲田高等学院への受験は失敗してしまったが浦高には合格。

 そして浦和高校に入る直前の春休みに、翌夏のソ連と東ヨーロッパへの旅行を前に、予行演習として一人で北海道旅行をすることになる。

 北海道旅行ではユースホステルに泊まる。そのホステルでの浪人生や高校生との交流など旅行についての想い出が書かれる。

 そして北海道旅行後、高校の入学式にでた後の父との会話でこの本は締めくくられている。

2017-01-28 FLESH&BLOOD 2

FLESH&BLOOD 2

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FLESH & BLOOD2 (キャラ文庫)

FLESH & BLOOD2 (キャラ文庫)


 kindleで読了。ネタバレあり。

 海に出た海斗は、16世紀の船舶は荒波でひどく揺れ船酔いで大変苦しむ。積み込んだ水はひどいもので口にできず、エールも口に合わずで、何も飲めずに更に体調が悪くなる。そんな海斗を看病する船長のジェフリー。

 その船酔いから回復した海斗は、他の怪我人や病人たちの世話をする。船での役割がなかった海斗はその役割を活き活きとこなしている。海斗がフランス語も片言だけどいけて、それが役に立つという展開はいいね。

 いったん補給のために寄航することに決めたが、船に病人が出ているから、上陸させたがらない。その相手に海斗は片言のフランス語聖書エピソードを用いながら、熱弁をふるって上陸の許可を貰う。未来知識とは関係のないところでの主人公の活躍するところがあるのはいいね。

 彼のそうしたはしっこさはわりと好き。現代知識もあって、そこに多芸さとミステリアスさも加わっているから、ジェフリーが惹かれるのも納得かな。

 ジェフリーは彼が孤独で誰かに必要とされたい。そのように海斗を理解するごとに好意は深まっていく。もちろん好いているからこそ、その新たな一面に引かれていくのだろうが。

 ユグノーの街、スペイン商人も来ると聞いて、海斗はこの街はカトリックと戦っていて敵なのに何故と驚き、ジェフリーがどの宗派が払おうと金だと笑う。現代人と16世紀の人間だと、感想が逆でもおかしくないのにそうじゃないというところが面白い。

 海斗を狙うスペインのビセンテも偶然この街へ寄航する。

 他者と違う(現代人であり、東洋人である)ことで孤独感を深める海斗。ジェフリーはそんな彼を励まそうと、凄い能力がありそれが君を守ってくれるから心配は不要だといった。それで海斗は内心さらに落ち込む。占い師という最初の嘘からくるすれ違い。ジェフリーはただ励ましたいだけだが、海斗はもし俺がそうでなかったらと考えてへこんでしまう。1巻での友人和哉との齟齬もそうだったが、そう簡単には変わらないか。

 海斗が身体を洗っているときに口ずさんでいたQueenの歌をジェフリーが気に入って(未来人だと明かしていないから、自分で作ったのかという問いに海斗は首肯してごまかしたので)褒めている。こうした現代の歌とか文化的なものが、それ以前の時代の人間が気に入るというエピソードは好きだわ。チート物は技術や物になりがちだから、それ以外で喜ばれるという話もいいよね。

 和哉との別離を思い出し後悔でジェフリーの前でないてしまう。そんな海斗をジェフリーは慰めて、海斗は彼のことが好きだと思う。しかしその思いが保護者に対するものか兄弟へのものか、それとも恋なのかは自分でも未だにわからない。

 ジェフリーは海斗が持つ能力と、それで抱える重圧をかわいそうに思っている。そのことからも既に彼は占い師の能力を超えて海斗にひかれていることがわかる。

 船に帰る前に街でビセンテと邂逅。そこから何とか難を逃れるも、ビセンテの船と対決することになる。その説明を求められて、ジェフリーはナイジェルに海斗の正体(占いの能力)を明かす。そして海斗はナイジェルに謝られた。これでナイジェルの警戒心も解けた。そして彼は病人のために献身的に働く海斗の姿を見たことで海斗に好感を持つ。

 逃げるジェフリーと海斗の船をビセンテの船が追いかける。ジェフリーは船の性能で劣っているから、何とか知略で相手の船を浅瀬に乗り上げさせようとする。単に切りあい、打ち合いではない戦いもいいね。

 そして何とか切り抜ける。しかしビセンテは敵方の登場人物だけど、悪い人ではないと思うから失態を繰り返して大丈夫かなと心配になる。

2017-01-21 世にも奇妙な人体実験の歴史

世にも奇妙な人体実験の歴史

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内容(「BOOK」データベースより)

性病、毒ガス、寄生虫。麻酔薬、ペスト放射線…。人類への脅威を解明するため、偉大な科学者たちは己の肉体を犠牲に果敢すぎる人体実験に挑んでいた!梅毒患者の膿を「自分」に塗布、コレラ菌入りの水を飲み干す、カテーテルを自らの心臓に通す―。マッド・サイエンティストの奇想天外、抱腹絶倒の物語。



 主に果敢なチャレンジをした自己実験者たちのエピソードなどが書かれている。医学系の話が多め。奇人伝的でもあるかな。

 1章「淋病と梅毒の両方にかかってしまった医師――性病」はジョン・ハンターの話。淋病と梅毒は同一か別の病かを確かめるために、淋病患者の膿を自身の性器を傷つけた上に付けた。そうすると梅毒の症状もでた(実は淋病患者は梅毒も感染していたためそうなった)ので、同一の病だと考えたというエピソードが紹介される。しかしその前の解剖を盛んにしたジョン・ハンターの話、当時の墓泥棒の話や現代の秘かに遺体の臓器を横流ししていたところがあったという話が枕として書かれているが、この章に限らず分量的には枕の方が分量が多いのも珍しくない。

 2章は麻酔薬の話。危険な薬物もかつてはカジュアルに使われていたという話、そして本題である麻酔の自己実験者の話が書かれている。『麻酔の先駆者の四人が、麻酔剤を自分でテストするうちに中毒者となった。』(P59)

 4章は実験ではなく、変わった食べ物を食べた人の話が書かれていて、他の章とはちょっと色合いが異なる章。

 5章は寄生虫に関する話。『調査の結果は、住血吸虫の感染者が糖尿病や慢性関節リウマチ多発性硬化症を滅多に発症しないことを示している。(中略)体内に侵入した寄生虫は、免疫チームの「オフィスマネージャー」である制御性T細胞によって異物として認識される。制御性T細胞の任務は、宿主の免疫反応を動員して侵入者を撃退することである。人類は常に寄生虫に寄生されてきたから、制御性T細胞はこれまで忙しく働いてきた。おそらく、「慣れ親しんだ同居人」を追い出してしまったために、失業した免疫細胞が暴走し始め、自己免疫疾患を引き起こしているのだろう。/ 一方、寄生虫を利用して病気を治療できるようになるかもしれない。糖尿病になりやすくしたマウスに住血吸の抽出物を与えたところ、糖尿病を発症しなかったという。この実験結果は、人間用の糖尿病開発の可能性を示唆している。炎症性腸疾患の患者に対しておこなわれたじっけんでは、鞭虫を定期的に投与すると症状が消えるという結果が出た。/ 炎症やアレルギーは通常、過剰な免疫反応によって引き起こされる。鞭虫や住血吸虫や鉤虫といった寄生虫は、自分を攻撃してくる宿主の免疫反応を弱めることによって宿主の体内で生き延びる。イギリスのある医学研究所で働いているジョン・タートンは、意図的に鉤虫を体内に取り込んでみたところ、二夏のあいだ花粉症の症状を軽減することができた。鉤虫を駆除すると、アレルギー症状は復活した。』(P124-5)寄生虫の効用。いることで、病気になりにくくなったりアレルギーを抑えられたりもする。花粉症が抑えられるというのはいいなあ。

 12章は第二次大戦下のロンドンでの不発弾処理班の人たちや、良心的徴兵忌避者で疥癬にかかってそれに治療する実験など様々な実験に自ら志願した人たちの話。

 13章「ナチスドイツと戦った科学者たち――毒ガスと潜水艦」第二次大戦期などにさまざまな自己実験をしたジョン・ホールデン、ジャックホールデンの父子の話が書かれる。

 『ジョン・スコット・ホールデンは、空気の室が人間の健康に与える影響について熱心に研究していた。スラム街の住居や工場や下水管の空気を分析・比較した結果、下水管内の空気は学校内のそれよりもましであることが明らかになった。』(P275)このエピソードは思わず少し笑ってしまう。

 ジョンは自分とマウスが同じ濃度の有毒混合ガス(空気と一酸化炭素)を吸入する実験をした。ぐったりするまでの時間がマウスは1分半、ジョンは30分だった。小鳥はマウスよりも代謝速度が速くさらに敏感。『この研究がきっかけになって、有毒ガスの早期警報システムとしてカナリアが導入されることになった。意識を失うと同時に止まり木からおちていじょうをしらせるように、カナリアはかぎ爪が切られていた。』(P276)鉱山のカナリアは、もっと昔からあった知恵なのかと思っていたが、近代に発見・導入されたものだったのね。

 14章「プランクトンで命をつないだ漂流者――漂流」。最も効果的な人工呼吸を確かめる実験のために、『パスクの心臓は十六回停止した。』(P300)というのはすさまじいな。

 漂流した時に生き延びるためにどうすればいいのかの実験。ボンバールは自ら『食料も水を持たずに漂流し、海上で調達できるものだけで生き延びるという実験』(P306)をする。

 彼は中古のゴムボードで大西洋に出る。その漂流中、彼は魚を絞ってでたジュースで水分を確保し、また同じく魚でタンパク質を得た。そしてクジラは人間と同じく体内でビタミンCを合成できないのに壊血病にならないのはその餌に秘訣があると考えて、漂流中網でプランクトンをすくいあげて、小さじ二杯分飲んでいたことで壊血病にかからずに済んだ。

 『日が当たると、あらゆるものの表面が塩の結晶で覆われた。塩が湿気を吸収するため、あらゆるものがいつもジメジメしていた。』(P310)そして嵐にあった時に防水布で雨水を集めても、ゴムボードの中のものは塩がたっぷりついていたので海水よりも却って塩辛くなった。そうした言われないと気づきにくい、想像のつかない不便さや良さなどが書かれているのを読むのは面白い。

 65日後に実験は終了。25キロ減、体中に吹き出物と視力に一時的障害もでたが無事に生還。彼は『四十三日間魚のしぼり汁だけを飲み、十四日間は海水だけを飲んで、彼は生き延びた。魚の目にかぶりつかなかったのはしっぱいだった。彼よりのちに漂流した人が語ったところによれば、魚の目は「真水の塊」だとのことである。』(P314)

2017-01-11 アクセル・ワールド 21

アクセル・ワールド 21

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内容(「BOOK」データベースより)

新生“黒のレギオン”を待ち構えていたのは、加速世界から退場したはずのバーストリンカー、オーキッド・オラクルによる心意攻撃“領土戦の無制限フィールド化”だった。謎の現象に危機感を抱いたシルバー・クロウは、メタトロンと共に最高度情報領域“ハイエスト・レベル”に移行、状況を把握しようとするが、そこに、突如新たなアバターが出現する。白のレギオン“七連矮星”の一人、スノー・フェアリー。そのF型アバターは、メタトロンとハルユキの精神的接続を断たんと攻撃を仕掛けてきた。窮地に立たされた仲間たちを救うべく、ついに黒雪姫とニコが駆けつけるが―!

 ネタバレあり。

 白のレギオン側の人間の強力な心意技で、戦いの場を領土戦ステージから無制限中立フィールドに移されたハルユキたち。ハルユキはメタトロンとハイエストレベルで状況確認をしていたら、そこに乱入してきて、二人のリンクを切断する攻撃をしかけてくる。その二人のバーストリンカーに限らず、心意技をキャンセルする心意技などとんでもない心意技を持つ敵バーストリンカーが多いこともあって窮地に陥る。

 主人公らを心意技でできた強固な氷壁に囲んで、その中でポイントを全損させようとする白のレギオン。空を飛べるシルバー・クロウとライム・ベルの二人が辛くもその場から逃れる。現実世界の戻ってニューロリンカーをはずそうとするも、現実世界に戻るためのポータルの前に強力なエネミ―が配置されている。

 ハルユキ達は追いかけてきた敵と交戦して危なくなったところを、トリリード・テトラオキサイドが助けに来てくれる。遠くのポータルまで行こうとするも空間変動の効果が及ぶのは半径二キロでそれより外に行けず、内のポータルにはビーイングがいるだろうし、どうしようと思っているとメタトロンから彼女の本体のいる芝公園地下迷宮(その二キロ内に含まれていた)に行くことを提案される。ダンジョンを攻略してメタトロンは本体で参戦して、他のメンバーを助けに行く。しかしステージが地獄ステージに変化したことで元々消耗していたメタトロンの力を奪った。

 友人である若宮恵を追いかけていた黒雪姫と、彼女とともに行動していたニコも無制限中立フィールドに参戦していた。全員が復活するタイミングで彼女らも戦闘に参加する。

 シルバー・クロウらはローズ・ミレディーを倒し、心意技で空間変更をしたオーキッド・オラクル(若本恵)に会う。なぜ若本先輩がこんなところにいるのかと尋ねると、全損して加速世界の記憶を失っていたが今日になって加速世界の記憶を取り戻したという奇異なことを話される。

 そして彼女の口から白の王の全損したバーストリンカーの復活を研究していて、自身の<親>であるバーストリンカーを復活させるために協力していることが語られる。

 しかしその<親>であるサフラン・ブロッサムを無限EKで全損させたのは、白の王たちであることをハルユキは知っていて、そのことを述べた。それで混乱するオーキッド・オラクル。しかしハルが強く願ったために、強化外装スター・キャスターとの一時的リンクが確立して、そこに内包されていたサフラン・ブロッサムの記憶が若宮恵に語りかける。その言葉で吹っ切れた若宮は黒雪姫と有田ハルユキの味方になることを決心する。

 なんにせよ黒雪姫の親友である若宮恵が自分の<親>のために敵対することになったが、ずっと前からのスパイとかではなく、その目的で黒雪姫に近づいたなんて裏もなかったことにホッとした。

 そのころ主戦場では、赤の王と黒の王の二人が参戦するもいまだに地形やエネミ―たちをけしかけられていたこともあって窮地が続いていた。しかし白のレギオン幹部のアイボリー・タワーがブラック・バイスに変身するなど、白のレギオンと加速研究会は明らかに関係があることはわかった。

 そしてオーキッド・オラクルが味方してくれたことで領土戦ステージに戻り、そこで素早い動きを見せた二人の王のおかげで領土戦に勝利する。

 マッチングリストには加速研究会の名はない。それで計画失敗と思いきや、奈胡志帆子がアイボリー・タワーがブラック・バイスに変身する姿をリプレイカードで録画していた。それが証拠にならないかとレギオンの皆に問いかけたところでこの巻は終わる。

 そういう映像は加工しようと思えばできそうでもあるから証拠になるかはわからないけれど、本当にそれが突破口になったら嬉しいな。