日々の読書を糧にして-備忘録と駄文感想 このページをアンテナに追加 RSSフィード

deku_decさんの読書メーター
 

2017-01-21 世にも奇妙な人体実験の歴史

世にも奇妙な人体実験の歴史

| 世にも奇妙な人体実験の歴史を含むブックマーク 世にも奇妙な人体実験の歴史のブックマークコメント


内容(「BOOK」データベースより)

性病、毒ガス、寄生虫。麻酔薬、ペスト放射線…。人類への脅威を解明するため、偉大な科学者たちは己の肉体を犠牲に果敢すぎる人体実験に挑んでいた!梅毒患者の膿を「自分」に塗布、コレラ菌入りの水を飲み干す、カテーテルを自らの心臓に通す―。マッド・サイエンティストの奇想天外、抱腹絶倒の物語。



 主に果敢なチャレンジをした自己実験者たちのエピソードなどが書かれている。医学系の話が多め。奇人伝的でもあるかな。

 1章「淋病と梅毒の両方にかかってしまった医師――性病」はジョン・ハンターの話。淋病と梅毒は同一か別の病かを確かめるために、淋病患者の膿を自身の性器を傷つけた上に付けた。そうすると梅毒の症状もでた(実は淋病患者は梅毒も感染していたためそうなった)ので、同一の病だと考えたというエピソードが紹介される。しかしその前の解剖を盛んにしたジョン・ハンターの話、当時の墓泥棒の話や現代の秘かに遺体の臓器を横流ししていたところがあったという話が枕として書かれているが、この章に限らず分量的には枕の方が分量が多いのも珍しくない。

 2章は麻酔薬の話。危険な薬物もかつてはカジュアルに使われていたという話、そして本題である麻酔の自己実験者の話が書かれている。『麻酔の先駆者の四人が、麻酔剤を自分でテストするうちに中毒者となった。』(P59)

 4章は実験ではなく、変わった食べ物を食べた人の話が書かれていて、他の章とはちょっと色合いが異なる章。

 5章は寄生虫に関する話。『調査の結果は、住血吸虫の感染者が糖尿病や慢性関節リウマチ多発性硬化症を滅多に発症しないことを示している。(中略)体内に侵入した寄生虫は、免疫チームの「オフィスマネージャー」である制御性T細胞によって異物として認識される。制御性T細胞の任務は、宿主の免疫反応を動員して侵入者を撃退することである。人類は常に寄生虫に寄生されてきたから、制御性T細胞はこれまで忙しく働いてきた。おそらく、「慣れ親しんだ同居人」を追い出してしまったために、失業した免疫細胞が暴走し始め、自己免疫疾患を引き起こしているのだろう。/ 一方、寄生虫を利用して病気を治療できるようになるかもしれない。糖尿病になりやすくしたマウスに住血吸の抽出物を与えたところ、糖尿病を発症しなかったという。この実験結果は、人間用の糖尿病開発の可能性を示唆している。炎症性腸疾患の患者に対しておこなわれたじっけんでは、鞭虫を定期的に投与すると症状が消えるという結果が出た。/ 炎症やアレルギーは通常、過剰な免疫反応によって引き起こされる。鞭虫や住血吸虫や鉤虫といった寄生虫は、自分を攻撃してくる宿主の免疫反応を弱めることによって宿主の体内で生き延びる。イギリスのある医学研究所で働いているジョン・タートンは、意図的に鉤虫を体内に取り込んでみたところ、二夏のあいだ花粉症の症状を軽減することができた。鉤虫を駆除すると、アレルギー症状は復活した。』(P124-5)寄生虫の効用。いることで、病気になりにくくなったりアレルギーを抑えられたりもする。花粉症が抑えられるというのはいいなあ。

 12章は第二次大戦下のロンドンでの不発弾処理班の人たちや、良心的徴兵忌避者で疥癬にかかってそれに治療する実験など様々な実験に自ら志願した人たちの話。

 13章「ナチスドイツと戦った科学者たち――毒ガスと潜水艦」第二次大戦期などにさまざまな自己実験をしたジョン・ホールデン、ジャックホールデンの父子の話が書かれる。

 『ジョン・スコット・ホールデンは、空気の室が人間の健康に与える影響について熱心に研究していた。スラム街の住居や工場や下水管の空気を分析・比較した結果、下水管内の空気は学校内のそれよりもましであることが明らかになった。』(P275)このエピソードは思わず少し笑ってしまう。

 ジョンは自分とマウスが同じ濃度の有毒混合ガス(空気と一酸化炭素)を吸入する実験をした。ぐったりするまでの時間がマウスは1分半、ジョンは30分だった。小鳥はマウスよりも代謝速度が速くさらに敏感。『この研究がきっかけになって、有毒ガスの早期警報システムとしてカナリアが導入されることになった。意識を失うと同時に止まり木からおちていじょうをしらせるように、カナリアはかぎ爪が切られていた。』(P276)鉱山のカナリアは、もっと昔からあった知恵なのかと思っていたが、近代に発見・導入されたものだったのね。

 14章「プランクトンで命をつないだ漂流者――漂流」。最も効果的な人工呼吸を確かめる実験のために、『パスクの心臓は十六回停止した。』(P300)というのはすさまじいな。

 漂流した時に生き延びるためにどうすればいいのかの実験。ボンバールは自ら『食料も水を持たずに漂流し、海上で調達できるものだけで生き延びるという実験』(P306)をする。

 彼は中古のゴムボードで大西洋に出る。その漂流中、彼は魚を絞ってでたジュースで水分を確保し、また同じく魚でタンパク質を得た。そしてクジラは人間と同じく体内でビタミンCを合成できないのに壊血病にならないのはその餌に秘訣があると考えて、漂流中網でプランクトンをすくいあげて、小さじ二杯分飲んでいたことで壊血病にかからずに済んだ。

 『日が当たると、あらゆるものの表面が塩の結晶で覆われた。塩が湿気を吸収するため、あらゆるものがいつもジメジメしていた。』(P310)そして嵐にあった時に防水布で雨水を集めても、ゴムボードの中のものは塩がたっぷりついていたので海水よりも却って塩辛くなった。そうした言われないと気づきにくい、想像のつかない不便さや良さなどが書かれているのを読むのは面白い。

 65日後に実験は終了。25キロ減、体中に吹き出物と視力に一時的障害もでたが無事に生還。彼は『四十三日間魚のしぼり汁だけを飲み、十四日間は海水だけを飲んで、彼は生き延びた。魚の目にかぶりつかなかったのはしっぱいだった。彼よりのちに漂流した人が語ったところによれば、魚の目は「真水の塊」だとのことである。』(P314)

2017-01-11 アクセル・ワールド 21

アクセル・ワールド 21

| アクセル・ワールド 21を含むブックマーク アクセル・ワールド 21のブックマークコメント


内容(「BOOK」データベースより)

新生“黒のレギオン”を待ち構えていたのは、加速世界から退場したはずのバーストリンカー、オーキッド・オラクルによる心意攻撃“領土戦の無制限フィールド化”だった。謎の現象に危機感を抱いたシルバー・クロウは、メタトロンと共に最高度情報領域“ハイエスト・レベル”に移行、状況を把握しようとするが、そこに、突如新たなアバターが出現する。白のレギオン“七連矮星”の一人、スノー・フェアリー。そのF型アバターは、メタトロンとハルユキの精神的接続を断たんと攻撃を仕掛けてきた。窮地に立たされた仲間たちを救うべく、ついに黒雪姫とニコが駆けつけるが―!

 ネタバレあり。

 白のレギオン側の人間の強力な心意技で、戦いの場を領土戦ステージから無制限中立フィールドに移されたハルユキたち。ハルユキはメタトロンとハイエストレベルで状況確認をしていたら、そこに乱入してきて、二人のリンクを切断する攻撃をしかけてくる。その二人のバーストリンカーに限らず、心意技をキャンセルする心意技などとんでもない心意技を持つ敵バーストリンカーが多いこともあって窮地に陥る。

 主人公らを心意技でできた強固な氷壁に囲んで、その中でポイントを全損させようとする白のレギオン。空を飛べるシルバー・クロウとライム・ベルの二人が辛くもその場から逃れる。現実世界の戻ってニューロリンカーをはずそうとするも、現実世界に戻るためのポータルの前に強力なエネミ―が配置されている。

 ハルユキ達は追いかけてきた敵と交戦して危なくなったところを、トリリード・テトラオキサイドが助けに来てくれる。遠くのポータルまで行こうとするも空間変動の効果が及ぶのは半径二キロでそれより外に行けず、内のポータルにはビーイングがいるだろうし、どうしようと思っているとメタトロンから彼女の本体のいる芝公園地下迷宮(その二キロ内に含まれていた)に行くことを提案される。ダンジョンを攻略してメタトロンは本体で参戦して、他のメンバーを助けに行く。しかしステージが地獄ステージに変化したことで元々消耗していたメタトロンの力を奪った。

 友人である若宮恵を追いかけていた黒雪姫と、彼女とともに行動していたニコも無制限中立フィールドに参戦していた。全員が復活するタイミングで彼女らも戦闘に参加する。

 シルバー・クロウらはローズ・ミレディーを倒し、心意技で空間変更をしたオーキッド・オラクル(若本恵)に会う。なぜ若本先輩がこんなところにいるのかと尋ねると、全損して加速世界の記憶を失っていたが今日になって加速世界の記憶を取り戻したという奇異なことを話される。

 そして彼女の口から白の王の全損したバーストリンカーの復活を研究していて、自身の<親>であるバーストリンカーを復活させるために協力していることが語られる。

 しかしその<親>であるサフラン・ブロッサムを無限EKで全損させたのは、白の王たちであることをハルユキは知っていて、そのことを述べた。それで混乱するオーキッド・オラクル。しかしハルが強く願ったために、強化外装スター・キャスターとの一時的リンクが確立して、そこに内包されていたサフラン・ブロッサムの記憶が若宮恵に語りかける。その言葉で吹っ切れた若宮は黒雪姫と有田ハルユキの味方になることを決心する。

 なんにせよ黒雪姫の親友である若宮恵が自分の<親>のために敵対することになったが、ずっと前からのスパイとかではなく、その目的で黒雪姫に近づいたなんて裏もなかったことにホッとした。

 そのころ主戦場では、赤の王と黒の王の二人が参戦するもいまだに地形やエネミ―たちをけしかけられていたこともあって窮地が続いていた。しかし白のレギオン幹部のアイボリー・タワーがブラック・バイスに変身するなど、白のレギオンと加速研究会は明らかに関係があることはわかった。

 そしてオーキッド・オラクルが味方してくれたことで領土戦ステージに戻り、そこで素早い動きを見せた二人の王のおかげで領土戦に勝利する。

 マッチングリストには加速研究会の名はない。それで計画失敗と思いきや、奈胡志帆子がアイボリー・タワーがブラック・バイスに変身する姿をリプレイカードで録画していた。それが証拠にならないかとレギオンの皆に問いかけたところでこの巻は終わる。

 そういう映像は加工しようと思えばできそうでもあるから証拠になるかはわからないけれど、本当にそれが突破口になったら嬉しいな。

2017-01-10 知っておきたいマルクス「資本論」

知っておきたいマルクス「資本論」

| 知っておきたいマルクス「資本論」を含むブックマーク 知っておきたいマルクス「資本論」のブックマークコメント


内容(「BOOK」データベースより)

金融危機と世界同時不況。今日の世界経済は第2次大戦後最大の危機に瀕している。こうなったのはどうしてか。資本主義経済のどこにその原因があるのか。その答えを求めて、いまマルクスの『資本論』が再読されている。本書は、マルクスの説く、商品・貨幣と資本の関係、労働力賃金剰余価値の生産など、資本主義の考え方と仕組み、資本主義社会の矛盾などを平易に解説。今日的な視点で読み直すとよくわかる「資本論」入門。


 序説でマルクスという人物と「資本論」について簡単に書かれた後に、資本論1巻の内容を順序を変えて、その内容を説明している。当時最先端の経済学の研究書である「資本論」の解説本。

 「序説 マルクスと『資本論』」本書で紹介されている「資本論」の第一巻は『資本主義の最も本質的な過程の分析であり、ひとつの全体をなすもの』(N154あたり)。

 『資本主義というのは、原材料をちゃんと買い、労働者賃金を(理論的には)ちゃんと支払って商品生産を行い、それを売ると儲かるという、手品のような生産様式である。しかし、どうして不等価交換でなくても利益が生まれるのか、結局マルクス以前の経済学者にはそのカラクリがわからなかったのである。』(N188あたり)

 重農経済学派のケネー、生産的労働は農業だけで工業はすでにある原材料の形を変えているから価値を生み出さない。最初の経済学の考えはそうしたものだった。

 一方でアダム・スミスなどの古典派経済学は、工業労働も含めて人間の生産的労働一般が価値を生むと考えるようになる。しかし彼らも『資本家の儲けの源泉を説明できなかった』(N201あたり)。

 『労働者に価値通りの賃金を支払っても資本家に余剰価値が残ることの謎は、マルクスによる「労働力商品」の発見によってはじめて解明された。そのことが『資本論第一巻の大きなポイントになっている。』(N201)

 W―G―W(商品―貨幣―商品)商品を売って、自分で使うための別の商品を買う。これが貨幣流通。

 G―W―G(貨幣―商品―貨幣)商品を売るために買う。これが資本流通。しかし貨幣と商品が等しいのならば、それでなぜ利益が出るか。『これは経済学にとってきわめて重要な難問であり、結局マルクス以前には解けなかった問題であった。価値について言えば、等価交換からは剰余価値は生まれず、不等価交換では、個人的には利得があっても、社会的には富(価値)は増えていない。流通ではやはり価値は増殖しないのだ。』(N890あたり)

 G―WもW―G'も等価交換。だとすればWの価値を流通外で上げる必要がある。価値を増やすことができるのは人間の労働。資本家は労働をする使用価値を持つ商品、労働力商品を仕入れる。


 資本主義的生産様式での商品生産。マルクスが書いた撚糸(木綿糸)の生産する紡績工場の例え話。例えば原料の綿花が10ポンドで10シリングだとすると、それを紡績するのに紡績機械の紡錘は2シリング分消耗する、そして10ポンドの撚糸を作るのに労働者は平均6時間働き、その労働力商品の価値である3シリングを払う。これで計15シリングの価値があるが、それを15シリングで売ったならば資本家の儲けがない。資本家は儲けるために事業をしているので、それでは意味がない。

 資本家「一日分の労働力を買って6時間しか働かせていないのが問題」。そこで労働者にもう6時間働かせたならば、原料20ポンド(20シリング)と機械の消耗4シリング労働力再生産費(賃金)3シリングとなる。そうすると計27シリングで20ポンドの撚糸ができて、以前と同様に10ポンド当たり15シリングで売ると3シリング儲けが生まれる。そして資本家労働者一人当たり三シリングの儲けを得る。

 『種明かしをすれば、労働力の日々の維持のためには、この例でいえば、実際には六時間の労働しか必要としないという事情が、剰余価値の生産の秘密であった。それだけの生産力があることが、資本主義の前提になっている。

 これで問題が解決した。労働力もその日の価値通りに売買され、等価交換の法則を守りながら、ついに剰余価値を生産することができたのである。』(N1113あたり)


 何故資本家は生産力を上げようとするのか。マルクスがあげた例。

 ある商品の価値が1シリング(12ペンス)の時に、新しい機械を導入して9ペンスで作れるようになった。それを導入した資本家は社会的価値で売ると、他社と同じ価格1シリング)で売れる。そうすると特別剰余価値(3シリング)が生まれる。また、より多く売るために他社よりも少し安く売ってもまだ特別剰余価値があるし、多く売れる。その商品が出回ると今までの生産方式では競争に負けるので他社も新しい機械を導入するから、社会的価値が9ペンスとなる。特別剰余価値は新しい方法が普及するまでの間特別な儲けを得られるので、資本家はその儲けを求めて新しい生産方法を導入する。

 それが色々な分野で繰り返し起きることでさまざまな商品の価値が下がる。労働者を再生産する費用も安上がりになるから、賃金も下げることができて、剰余労働時間が増える。

 失業は何故なくならないか。『それに対するマルクスの回答は明快である。資本主義のもとで失業者はなくならない。なぜなら、それは絶対的に過剰な労働者人口なのではなく、資本は自分の必要より相対的に過剰な失業者をたえずつくりだしているからだ、ということになる。』(N2242あたり)

 『失業者の存在は、実は資本主義的生産様式の存在条件になっている。追加資本を投じて拡大再生産をするときに、社会に追加的労働力がなかったら、拡大再生産ができないからだ。必要なときにいつでも労働力を市場で買える状態であることが、資本にとって絶対必要なのである。したがって失業者は資本にとって産業予備軍である。』(N2260あたり)

 資本が大きくなれば産業予備軍(失業者)も増える。そうした失業者がいることで『雇用された労働者失業者と競争させられることになり、資本に屈服を強いる手段となっていく。つまり「労働者階級の一部の過度労働によって、他の一部に強制的怠惰を課すことは、またその逆のことは、個々の資本家の到富手段となり、また同時に、社会的蓄積の進展に対応する規模の産業予備軍の生産を促進する」のである。せっかく使える労働者がいるのに、それを使わないでおくというのは無駄のようにみえるが、失業者がいることによって、雇用されている労働者により多くの過度労働を強いることができ、資本家の到富手段、金もうけの手段になっているのである。』(N2347)

2017-01-09 マージナル・オペレーション 空白の一年 下

マージナル・オペレーション 空白の一年 下

| マージナル・オペレーション 空白の一年 下を含むブックマーク マージナル・オペレーション 空白の一年 下のブックマークコメント


内容(「BOOK」データベースより)

赤い日本による襲撃をかわしつつ、イラン―かつてのペルシャを目指すアラタたち。国境を越え、アフガニスタンに入った一行が見たのは、無人機が遊弋する荒廃した戦場だった―。補給もままならぬ過酷な旅路に、子供たちは次々と病に倒れ、どこに行ってもシベリアによる監視の目が光る。果たして、砂漠の果てに安息の地はあるのか。そして、シベリアはなぜアラタに固執するのか…。芝村裕吏×しずまよしのりのタッグが贈る大ヒットシリーズ、“新田の血”が時空を繋ぐ番外編、ここに完結―!


 ネタバレあり。

 今回は「遙か凍土のカナン」との関連性が高いという印象。まあ、カナンを読んでいないので恐らくではあるが。

 『あの人にとって、逃げるというのは行為ではなく、空間という資源の使い道の一つらしい。』(P4)時間はともかく空間に資源という言葉を使うのが新鮮。全てをリソースとして捉えているのもアラタっぽい。

 アラタがメーリムが病にかかって心配している姿を見て、子供たちはアラタは戦闘では剛胆に、冷静に立ち振る舞っているのになんでだろうと思う。それで結局アラタの国では、戦死は良くても病死は認められていないのだろうという考えに落ち着いた。こうした考え方の違いを妙な理解されているシーンはくすりとくる。

 43ページで急にジニが神がかりになって、その土地の昔のことを話し出す。その話している昔はたぶん「遙か凍土のカナン」の頃の話なのだろうな。このシーンに限らず今回は「遙か凍土のカナン」と関連させたシーンがかなり多く、そちらを読んでいたほうが楽しめただろう。

 子供たちが皆好きなメロンの乾物、どんなものなのかちょっと食べてみたくなった。

 ジブリール視点だからかもしれないが、オマルの影が薄いな。あまりに出てこないものだったから、私が上巻の内容を覚えていないだけでどこかで一旦別行動を取っていたかなと思ったよ。

 イランに向かう部隊に便乗するために、持っていた武器を捨てる。ジブリールも驚いているが剛胆な判断。時にはそれまで自分たちの安全を担保していた武器を捨てて、弱い立場となることで庇護してもらうという彼らしい効率的な判断。

 イラン国境まで来たが、直ぐには国境を越えずに情報収集にいそしむ。

 泣いているジブリールとあやそうとするアラタ。子ども扱いされて屈辱を感じるジブリールだが、その姿を国境警備隊に見られて『苦笑いして気をつけてね』(P151)と言われたように彼らからも子供に見えるというのが現実。

 ハキム、彼は後に仲間となるが、最初の出会いはアラタたちとタリバンを戦わせようとしてシベリア共和国が送り込んできた少年スパイだったのね。

 そのタリバンの情報をイランに流すと共に、自分たちを売り込んで『入国と訓練と武器調達』(P177)をする。

 結局はタリバンと戦うことにはなるのだが、シベリアタリバンの思惑が混じって読みづらかったのを、状況を読みやすく戦いやすいように場を整えてから戦う。

 日本企業を狙うテロリストを阻止するというのが例のテストとなる。アラタは防御ではなく、先んじて攻撃することを狙う。

 アラタのバイク操縦スキル。そんなスキルあったっけと思ったら、「カナン」の主人公のスキルでそこも似ているということらしい。

 テストといいつつシベリアも兵を出して直接相対してきた。どうやら、このアラタたちへの執着はシベリアの偉いさんがアラタと誰か(おそらく「カナン」での主人公のアラタと血縁関係がある主人公で、アラタと似た外貌を持つ人)を重ねて、違いがわかったから戦闘を止めたということみたい。「カナン」を読んでいたら、そうしてちょっかいをかけてきた理由がわかるのだろうし、それなら今回の襲撃の裏にも何かしらドラマがあるのだろうとは思う。しかし私は読んでいないので、ちょっと消化不良感がある。なので「カナン」も読んどかないといけないな。

2017-01-08 はい、泳げません

はい、泳げません

| はい、泳げませんを含むブックマーク はい、泳げませんのブックマークコメント

はい、泳げません

はい、泳げません

内容(「BOOK」データベースより)

超がつく水嫌い。小学生の時にプールで溺れて救急車を呼ばれた。大人になっても、海・湖・川などたくさんの水を見るだけで足がすくむ。なのに、なぜか水泳教室に通う羽目に。悩みながら、愚痴りながら、「泳げる」と「泳げない」の間を漂った2年間。混乱に次ぐ混乱、抱腹絶倒の記録。史上初、“泳げない人”が書いた水泳読本。

 kindleで読了。

 水に怖さを感じ、泳げない著者。そんな著者が泳げるようになるために泳げない人向けの水泳教室に入る。そこで高橋桂コーチと出会い、彼女のさまざまな表現を使った指導を受けて、その言葉に困惑しつつも徐々に泳げるようになっていくところが書かれる。そうした泳げない人が泳ぎについてどんな風に感じているのかが書かれている。泳ぐことについてあれこれと理屈っぽく考えているのが面白い。

 ダルマ浮きという体を丸めて体が水に浮くことを実感することで水への恐怖を克服するトレーニングに対して、身体が何処にもついていない。そんなことは陸上生活では絶対ないから、怖ろしいと感じることが書かれる。そんな風に水への恐怖だったり、泳ぐことの難しさ、わからなさについて色々と書かれている。

 そして一般的な水泳のテキストで泳ぎのことを説明されても、ピンとこない。

 しかし桂コーチは、泳げるようにするために色んな言葉を用いて浮くこと泳ぐことのコツを話してくれる。『一つの動作について、十通りくらいの表現はあります。』(N1171)というのはすごい。そうした多彩な表現で、泳ぐための身体の動かし方を伝える。その言葉を読むと水泳という世界も奥深いものなのだなあと今更ながらに感じる。禅とか剣術修行みたいな感じだ。

 真っ直ぐに体を伸ばすとつま先だけが下を向く。それを真っ直ぐにするためには『「力を抜いて膝を落としてやればいいんです。膝が少し下に落ちると、つま先は水面上で真っ直ぐ後ろに向きます。でも今度は膝が曲がってしまうので、また真っ直ぐに伸ばさなくてはいけません。そこで膝を真っ直ぐに伸ばすと、足全体が下向きに沈んでしまいます。横から見ると”へ”の字になるんです。こうなると腰が曲がっていますね。ですから今度は、腰を真っ直ぐに伸ばすんです」

 人の体は完全にまっすぐには伸びない。そこで、たるみをリレーするように「真っ直ぐになろう」とするのである。(中略)

 要するに水泳とは、こうである。

 伸びる、……伸びる、……伸びる、……

 (……部分は何もせず力を抜くだけ)』(N797,808)水の中でジャンプすることで進む。こうした指導の表現を読んでいるのだけでも面白い。

 足はほとんど動かさなくていい、身体を動かしているうちに足が開いてくるからそれを閉じれば良い。それだけでいい。その言葉がきっかけとなって泳げるようになる。

 そして泳げるようになった著者は、義弟とプールに行き、習得した綺麗な泳ぎ方を見せてちょっと自慢する。

 巻末には著者と高橋桂コーチ、そして同じスイミングスクールに通う作家の小澤征良さんとの鼎談が収録されている。

2017-01-07 FLESH&BLOOD 1

FLESH&BLOOD 1

| FLESH&BLOOD 1を含むブックマーク FLESH&BLOOD 1のブックマークコメント

 kindleで読了。ネタバレあり。

 主人公は英国で育った東郷海斗。彼の父は三舛商事のロンドン支社の社長で、そして彼の母親は権勢欲の強い人で父の肩書きによって他の駐在員の妻を従わせている。海斗はそんな母のお気に入りだったので、子供たちの間でもその力関係が影響して、変に気を使われるか腫れ物のように扱われるから本当の友達がいないと思っていた。

 そのため子供の頃にあこがれた海賊にまつわる場所をめぐるために二人旅をしている和哉へも、本当に自分のことを友達と思ってくれているのか疑いを持っていた。長くその思いがあって、とうとう本人にそのことを尋ねてしまった。それで友人と思っていた海斗にそんな風に見られていたことを知った和哉は怒る。

 そこで友人だと思ってくれていたことを知って、自分の言葉を後悔して謝る。しかし友人と思っていた海斗からの酷い言葉を受けた和哉は当然まだ怒ったまま。

 そうして少し雰囲気が悪くなるが、そのまま旅行を続行した。その後海斗はプリマスイングランド危機が迫る度に鳴るという伝説があるドレイクのドラムらしき音にひかれて、ふらふらと歩くと、次元の狭間に手を突っ込んでそのまま向こうの世界(ドレイクら海賊が活躍した16世紀の英国)に引き込まれることになる。海斗も和哉も仲違いしたことを後悔したままの別離となってしまう。

 1587年エリザベス女王の治世で、メアリー・スチュアートが処刑されてから一月ほど立った、1587年の3月の英国に海斗は放り出された。

 スペイン王からメアリー救出の命を受けていたビセンテがこの時代に来た海斗に最初に接触する。倒れていた海斗の解放をして、少し話した。そこでここが1587年と知って警戒心を示す。そして21世紀からきたこと、来年にはシドーニア公が総司令官となって無敵艦隊英国に来ることを話す。その不吉な予言にカッとなったビセンテは思わず海斗の首を絞めて落としてしまう。

 その後彼のことを凄腕の占星術師だと思い、彼をスペインに連れて行こうと思う。しかし見回りに来た船員がきたので、やむなく気絶した主人公を置いてその場を去った。

 そしてキャプテン・ジェフリーに拾われる。そこで主人公は何処にも身を寄せる場所もない、時代の違う帰れない場所に来てしまったことを痛感して怖ろしくなる。

 海斗は未来から来たことを隠して、架空の田中氏の側仕えとして日本から欧州に来る途中に海賊に捕らえられて逃げようとしていたということにする。ジェフリーが、タナカ氏は何の見返りもなく教育を授けて面倒を見てくれたとは聖人のようだと、架空のタナカさんを褒めていることにちょっと笑った。

 航海長のナイジェルは海斗のことをスペインのスパイではないかと警戒する。

 ジェフリーは外見もそうだが、この時代ではもっと幼い頃になくなる子供にだけ許される甘えを当然のように持っている無垢で危うい海斗に惹かれる。

 有名なドレイクと会うことになった海斗。ドレイクにビセンテがなぜ狼狽して首を絞めたのか疑義を呈される。それに動揺するも実は占い師で、彼に朽ちた十字架が見えたことを話すと激昂したと述べる。ドレイクが先ほど知ったサンタ・クルズ侯が病に倒れたという情報と一致したことで、海斗のことを本物かもしれないと思う。そして今度の航海のジェフリーにも明かしていなかった目的地で、戦果をあげると言った事で本物だと思わせる。

 上手く騙して占い師として身の安全を確保できた。そうやって上手く本物だと思わせて切り抜けることはできたというのは面白い。でも、彼がこの時代の細かい歴史的な出来事を知っているとは思えないし、それを述べることで徐々に歴史からそれ始めたならば知識は役に立たなくなるから、今後どうなるかちょっと不安。

 まあ、知っていること以外には答えないようにしようとしている点では少し安心だが、それでも頼まれて断れないこともでてきそうだからそのときどうなるか。

 ドレイクトジェフリーは海斗の占い師としての能力を貴重だと思うが、海斗をウォルシンガム閣下にとられることを防ぐために結局彼をジェフリーの船に置くことにする。

 スペインに帰ったビセンテは、カイトの予言を報告してスペイン王に謁見する。そして彼にその占い師の海斗をつれて来るようにとの命令が下される。

 「予感」頑丈な靴だとまめができるといったジェフリーに海斗が靴がゆるくて空間があるからまめができやすくなると説明して、靴屋も教えてくれなかったと感心されるシーンが好き。