宮は返事を書きにくく思召したのであるが、 「われわれから御挨拶をいたしますのは失礼でございますから」 と女房たちがお責めするので、 灰色の紙の薫香《くんこう》のにおいを染ませた艶《えん》なのへ、 目だたぬような書き方にして、 消えがてに ふるぞ悲しき かきくらし わが身それとも 思ほえぬ世に とお書きになった。 おとなしい書風で、そしておおようで、 すぐれた字ではないが品のあるものであった。 斎宮になって伊勢へお行きになったころから 源氏はこの方に興味を持っていたのである。 🌖🎼月夜に光る written by すもち🌖 🪷澪標(みおつくし)のあらすじはこちらをご覧ください🪷 🪷聴く古典文学 …