皇太后は人生を恨んでおいでになった。 何かの場合に源氏はこの方にも好意のある計らいをして 敬意を表していた。 太后としてはおつらいことであろうとささやく者が多かった。 兵部卿《ひょうぶきょう》親王は 源氏の官位剥奪《はくだつ》時代に冷淡な態度をお見せになって、 ただ世間の聞こえばかりをはばかって、 御娘に対してもなんらの保護をお与えにならなかったことで、 当時の源氏は恨めしい思いをさせられて、 もう昔のように親しい御交際はしていなかった。 一般の人にはあまねく慈悲を分かとうとする人であったが、 兵部卿の宮一家にだけはやや復讐《ふくしゅう》的な扱いもするのを、 入道の宮は苦しく思召された。 🍂🎼…