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2014-12-30 ディスコ探偵水曜日 下

ディスコ探偵水曜日 下

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ディスコ探偵水曜日〈下〉 (新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日〈下〉 (新潮文庫)


内容(「BOOK」データベースより)

弱いことって罪なの?悲痛な言葉が孤児院に木霊する。ムチ打ち男爵と泣き叫ぶ子供たち、神々の黄昏、ラミア症候群。「踊り出せよディスコテック。急いでな」。時空を超える旅のなかで、“地獄”を知ってしまった迷子探偵。彼が選択した究極の決断とは?ディスコ・ウェンズデイと名探偵たちの戦いはクライマックスへ。発表後即伝説と化した、舞城王太郎の最高傑作、ここに完結。


 文庫版発売して直ぐ買ったのはいいが、ずっと(3年)積んでいたがようやく読了。三分冊の本を3冊すべて積んでいるのはそれなりに気になるから、読まなければなと思っていたが、3冊で1400ページと言う分量に気圧されて(そしてよくわからん物語に振り回されるよりも、もっとわかりやすい物語を読むほうが好きだと自覚してしまったので)なかなか手が出せなかったが一念発起して漸く手をつけ、読み終える。

 ミステリー(推理できないけど)でSFだとは思っていたけど、セカイ系でもあったのか。そしてこの作品は神話的でもあるともなんとなく感じるし、他にも色々な要素が含まれている。そして結局この小説は究極的なところでディスコとその魂の恋人(ソウルメイト)梢の物語だったな。

 SSネイルピーラーも黒い鳥の男もディスコの気持ちのある部分から発生したものだというのは、どこからこの時の循環が始まったのかわからなくなってきたなあ、と思ったら本人が自分を糾弾するために作った黒い鳥の男であることを否定したけど、結局やはり彼の心が生み出したものであることが判明する。ディスコは流れに巻き込まれて翻弄されているように見えて、どこまでもこの小説はディスコと梢の物語であり、その物語にずいぶんと大勢の――世界中の――人々が巻き込まれているな。

 しかしパインハウスで名探偵たちが出るごとにホッとする、彼らが本作の中で一番の癒しだし、彼らのズレ具合は可笑しみがあってクスリと笑える面白さがあるから、彼らが登場するシーンが一番好きだな。

 おう、ディスコだけでなく名探偵たちも時を越えられるようになったのか。

 未来の水星Cとディスコ自身がパインハウスで、自分たちと名探偵たちの前にやってきたときに、「逃げるなよ。逃げる奴から、一人ずつ本気で殺すぞ」なんて大文字で言いやがっているが、水星Cはどんなことをやっても彼がやったのならと納得させられるむちゃくちゃな人だから、彼がそんなことを言うと本気で現在の自分たちと敵対するのかもと感じてしまいちょっと戦々恐々としてしまった。

 邪悪な黒い鳥の男と星野という二人とディスコが相対して苦戦しているときに、水星Cがやってきて不意打ちによる一撃で星野を始末したのは星野に対してもヘイトがたまっていたからそれを見て爽快な気分を、そして水星Cの暴力にはじめて頼もしさを覚えた。

 ディスコは本書の物語の始点である2006年から偶然/必然に2019年(子供の閾値をすする、「幸福」な、ディストピア的な未来)に飛んだが、現在からは2006年よりも2019年のほうがずっと近づいていることにちょっと驚くし、そう遠くないうちに過去へと移り変わるだろうことにはなんだかちょっと寂しさや物悲しさを感じてしまうな。

 子供を虐待して子供を「空」にして、それに死から逃れることを望む大人たちが、その肉体に入って、永遠の生を手に入れようとするそんなグロテスク極まりない行いがビジネスとしてこの2019年の未来に蔓延って、子供たちへの虐待に目を瞑りそうした事実を受け入れているという絶望的な未来にはゾッとするし、これまでの時空間の移動から、その未来が規定されていて避けようのないものだということがわかるからその救いのなさに絶望的な気分になる。

 2億人の子供たちが虐待によってから「空」にされ、そして3億人の子供がディスコによってそうしたことをされないように誘拐されているというのは壮大すぎて、天文学的数字過ぎてどういう反応していいのか分からないわ。2019年にそうしたビジネスが蔓延るという未来が分かっていて、これからの人生をささげて救えるだけの子供たちをそのビジネスをする奴らの手に渡らないようにあがく運命となっているのかディスコ。

 水星Cの存在が未来が規定されたものであるという考えから抜け出て、その未来をつぶせるかもしれないという希望をもたせる存在になるとは世も末だなあ。しかし水星Cは自分が意図してではなく、なにかの拍子であるいは未来の自分かディスコが何かやったせいなのか、自分の過去がスッパリこの世界から消されているという絶望しても可笑しくない状況であるが、妙にさっぱりしている、そのさばさばさには救われる。

 いつもの探偵業で犯人の考えを追うように、未来の自分の考えを追って、安全な子供たちの隠し場所を探すというのを見ると、この物語は循環構造が大きな役割を果たしているとは分かっていても、やはりちょっと不思議な気分になるな。

 子供たちを虐げる未来の世界が繁栄して子供たちが虐げられ続けるのを防ぐため、ディスコは子供たちを誘拐し続け、人類の歴史を停滞し、腐らせて、自分たちが生きていた世界を滅ぼすというのはとってもセカイ系チックだ。

 しかし出豆海はいいやつなのに、他の名探偵たちのように3億人の子供たちと共に「双子世界」へと行くことなく絶望的なディストピアの世界、誰もが子供たちを生まなくなりいずれ消えるであろう世界にパインハウスにいた面々の中でただ一人取り残されているのは哀れに思えてならない。

 水星Cは<悪>である、黒い鳥の男を比喩でなく食ってしまって、最後はどこかへ去っていくなんて最後までお助けキャラ的であり、神話的な人物であったな。

 しかし未来の梢でさえ、ディスコから分離したディスコの気持ちである人物(?)と付き合う運命にあることを見ると、とことんこれ以上ないくらいに二人は運命で結び付けられているのねと改めて感じる。

2014-12-25 ディスコ探偵水曜日 中

ディスコ探偵水曜日 中

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ディスコ探偵水曜日〈中〉 (新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日〈中〉 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

蝶空寺嬉遊、桜月淡雪、美神二瑠主、名探偵たちは華麗な推理を披露してゆく。果たして、ミステリー作家・暗病院終了の怪死とパインハウスが秘めた謎は解明できるのか。そして、二〇〇六年七月十五日二十三時二十六分にいったい何が起こるのか?真実は逃げ水の如く近づけば遠ざかる。「無駄ですよ。この事件絶対終わりませんよ」。行け、ディスコ、世界がお前を待っている。


 ラストでまた新しい出来事が発生したが、今回はほとんど丸々パインハウス編だな。前巻から引き続いてパインハウスにおいて幾人もの名探偵たちが推理しては死んでいく。前巻からことごとく名探偵が真相を見抜いたと確信した推理から真相が逃げ水のように逃げて行き失敗する。そして、その度に箸を目から脳に刺されて死ぬというおぞましい死に方をした。九十九十九などは箸を突き立てて、脳を壊された人間が重要な部位を壊されずロボトミーのようなカタチとなって、生きているけど目から透明な脳髄液を垂れ流して、精神が壊されて、身体もふらふらになりなっているのは生きているからこそグロテスクだし痛ましく感じてしまい、そういう描写は本当に嫌いだから、そうした描写があるのは本当に読んでいて辛い。

 宿命的に、文脈的にディスコが解決することが求められていたこの事件で、ディスコが推理に入る前に次々と名探偵たちが討ち死にすると同時に、彼に材料を与えて散って行った。そして漸くディスコは推理が真実に確定させる強い意思を持つことができる正しいと信じることができる推理をようやく構築できたことで、長かったパインハウスでの事件も終わる。

 前巻最後で八極の推理はどこか破綻していることは推理に参加した人々が死亡したことからわかっていたが、ディスコまわりの話が(勺子の話もディスコが精神病だという指摘も)ぜんぜん当たっていなかったということは驚いたし、ちょっと笑えた。しかし流石に勺子の話まで的を射ていなかったとは思っていなかったわ。

 水星Cは知力も暴力もきわめて優秀な人間なのだが、子供っぽく気分によって暴力を振るうし、同じく気分のまま楽しいかどうかで場をめちゃくちゃに荒らすなあ。とても個性的なキャラクターで、なんだか小説のキャラクターというよりも神話の登場人物に誓いと感じるような性質の人だ。

 梢の存在もあるからオカルトやファンタジー的なことが推理に織り込まれてくるし、また推理のたびに推理中に新しい事実を述べることが多く、読者が推理することは不可能で、論理的に考えてひとつの正解にたどり着けるものでもない(名探偵たちのような多くの正解のひとつを導くことはできるかもしれないが)ので、推理小説とはいえないかもしれないが、名探偵としての死(推理の失敗)が現実の死としてフィードバックされる異様な空間の中で、名探偵の推理の正しさの源泉(意思は結果を作る。名探偵の強い意思によって真相が作られる)など名探偵が色々と自己言及的に名探偵という存在について語っているので、探偵小説ではあろうな。

 しかしオカルトやファンタジーを混ぜ、異常に推理できる幅が広くなった世界観だから、多くの名探偵たちの突飛に見えるさまざまな推理が見ることができて面白いし、著者の筆力が高いから寒いことにもならず、こういう世界観だと納得できるし、事件がどうなっているのかすっかり分からなくなっても掛け合いやちょっとした描写を、そして物語を面白いと思いながら読める。

 エンジェルバーニーズの霊能者加藤が推理しはじめたときに二留主が名探偵より前に正解を導けるはずがないと思っているから、その推理はきっと間違いだから、止めなくては純粋に善意からそんなことを思ってあわてているのがちょっと笑える。

 ディスコは霊能者加藤に導かれて生と死の中間点たる地点に赴くも、そことはまた違う別の場所へ行ってしまう。そうやって異界に導ける力を持っているということは、霊能者が本物だということだからオカルト、伝奇、ファンタジー(?)どれかわからんが、そういった類の色がいっそう強まったな。

 嬉遊が披露した円形の血痕についてのエンジェルバーニーズが自分が疑われないように隣まで移動させてを繰り返した結果生まれたものという推理で、それについて彼らは正しいといっていたが、実は嬉遊にお願いされて正しいと証言して事実でなかったということになり、そうした封に一旦自白もあり事実と確定したかのように見えた出来事が嘘と判明するなど一体何を事実と思っていいのか、さっぱりわからなくなってきて、そうやって大きく否定されるものが多いから、結局どういった部分が真実でどういった部分が誤りなのかがわからなくなってくる。

 ディスコと水星Cがパインハウスに到着して早々に、水星Cは上から降り立ってきた出豆海を殴り飛ばして怪我をさせるなどしていたが、いつの間にやら水星Cの手下のような立ち居地で妙に小物臭がするキャラになっていたことに笑う。しかし九十九十九が9番目と10番目の推理をしたことで、出豆海が11番目に推理している最中に名探偵ルンババ12が登場したことにより、文脈的にその推理が誤りであること、意思が運命に負けたこと、がわかり出豆海が動揺して、嘆いているのが、彼にとっては全く笑い事ではないのだがちょっと笑えてしまった。

 ルンババ12はこの場所のルールを分かっているはずなのに間違えるために、ディスコにヒントを与えるためにやってきたのかとその覚悟に戦慄したが、そもそもがこの事件の始まりにいる人であり、自分の目的のためにこの事件を作ったミステリー作家の彼の「過去」かい。

 ルンババ12のそうしたヒントや彼の推理の前に地ならしをして多くの事実を明らかにして地ならしをして散って行った十数名の名探偵諸氏のお膳立てがあって、ついにディスコも推理を開始する。

 パインハウスは空間が現実に歪んでいて長方形の建物が、円形に見えていたし、長方形に見える人間には物理法則は長方形の建物の中でおかしくないように作用し、円形に見える人間には物理法則もその円形のなかで作用するという時空だったという推理・真相だが、それも少しでも自分が揺らいだり、他の人を信じさせることができなければ真相とならないだろうといっているが、どうやらその思いは事件を解決して世界の節理を見た後、ディスコが意思で時を越えられる(それに死んだ名探偵たちの脳みそを――意思のごり押しで――治して生き返らせていたように時空間も操れるようだ)とができることを知って、それを実行している姿を見て、そうした懸念がまさか現実のものとは思わなかったので驚いた。いやあ、そこまで意思が力を持つ世界観だとはな。

 散々繰り返されてきた出来事は意思と運命の相互作用で決まる、人の意識が世界を作るというような言葉がこういった風に直接的に物語に関係してくるとは意外で驚きだ。

 三田村三郎がディスコがこの謎を解くことが望んだのは彼が迷子探しの探偵だからで、彼に時を越えて三田村三郎の兄弟いなくなった3つ子のうちの2人を探してもらうためか。

 三田村三郎の依頼だけでなく、双子の子供をさらわれたパンダからもその子供を助けることをお願いされて、またこの世界の時空が折りたたまれていることを知る(11年前・11年後のパンダ事件が行われていることがその表れだった)、そしてそのパンダからディスコが望む梢に性的なことをした黒い鳥の入墨をした男を探していることを知っている三田村三郎(ルンババ12)は、交渉条件のために時空を飛びながらその事実を探ったが、その男を見つけることができなかったが、そのことでそいつが時間を直接いじっている時間の外側にいる人間であることを知り、時空を折りたたんでいる犯人あるいは近しい立場にいることを知って、そのこともディスコに伝える。

 そうしてディスコはパンダの双子と3つ子である三田村三郎のいなくなった2人の兄弟を探すことを頼まれたので、またそうすることが幼い梢に非道なことをした犯人を見つけることにつながるため、失われた双子、3つ子の2人を探すことになる。

 しかしディスコがパインハウスの事件を終わらせたことで、出豆海とか二瑠主といった最後まで残った名探偵が心酔した様子で敬意を払っているのはなんだかほほえましくて、顔に笑みが浮かんでしまう。

 ディスコはパインハウスの件が終わってから、時空をどんどん飛んでつじつま合わせるように、過去の自分を導くようにパンダラヴァーの事件も作って/終わらせていった。ディスコは運命に導かれるようにしてパインハウスにやってきたが、今回(@過去)パンダラヴァーという一連の事件を作出することで自分をパインハウスへと導く助けとした。

 しかし桔梗は梢の別人格が桔梗として生まれるはずだった子を弾き飛ばして成長した子で、勺子も結局17歳の梢が、現在のディスコの力を借りて過去に戻り、過去に死んだ勺子の肉体の中に入った人だということで、なんつーか女性陣が梢だらけで愕然とするんだけど。それにあらゆる梢を色々な意味で愛しているから、なんだかディスコが変体チックな感じにも見えてきてしまう(笑)。

 しかしディスコはパインハウスの事件を解決後に、時間を飛ぶすべを知ったから、ラスト近くで時空間をあちらこちらに飛んでいって、一体何がどうなっているのか、ディスコが何ができないのかがわかんなくなってくる。はじめの手紙から始まって事件も、時を飛んでつじつまを合わせる(自分を誘導する)ディスコの行動も、ウロボロス的にはじまりがどこなのか終わりがどこなのかわからない循環構造になっているからそうしたわけわからない感が増す。

 しかし最後の梢の記憶に残っていた、おぞましい記憶だが、その話が過去でなくディスコがこの段階でおきることになろうとは、ディスコも予想外だったようであるが、強烈なクリフハンガー。上巻の名探偵たちの死で終わったラストといい、強烈なエピソードで締めて次の巻を読ませたいと思わせる技術はにくいね!しかしディスコに抗って欲しいと思う気持ちと、梢記憶にあるのだから抗えないとあきらめて絶望的に思う気持ちが半々だ。まあ、なんにせよ下巻のはじまりから長く欝シーンが続かないように祈るばかりだよ。

2014-12-18 ディスコ探偵水曜日 上

ディスコ探偵水曜日 上

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ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)

ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

迷子専門の米国人探偵ディスコ・ウェンズデイは、東京都調布市で、六歳の山岸梢と暮らしている。ある日彼の眼前で、梢の体に十七歳の少女が“侵入”。人類史上最大の事件の扉が開いた。魂泥棒、悪を体現する黒い鳥の男、円柱状の奇妙な館に集いし名探偵たちの連続死―。「お前が災厄の中心なんだよ」。ジャスト・ファクツ!真実だけを追い求め、三千世界を駆けめぐれ、ディスコ。



 文庫版が発売して直ぐに買っていたのだが、九十九十九が登場すると聞いて、著者の「九十九十九」を読んでからにしようと思ったが、それを読むまでに時間がかかり、読んだ後も上中下の三分冊というボリュームに腰が引けて長らく自室の棚に鎮座したままになっていたがようやく読み始める。しかし3年も積んでいたのか。

 主人公である探偵のディスコの周囲の人が内面や外面が変化して――たとえば預かっていた子供が急に成長して未来のその子の人格になったり、その子の肉体に別の人間の魂が入ってきたり、そしてその子は梢の身体に入っているから自分の記憶が一部欠けている反面で梢の肉体の記憶が思い出せたり、あるいは知人というかセフレである勺子が彼が片思いをしていた人間(ノーマ・ブラウン)の顔に変化(整形)していたり――人の同一性とは何かみたいな話とか、あるいはタイムスリップについてどういう状況になっているのか、あるいは推理小説でたびたび書かれる探偵と事件の因果関係「この世の出来事は全部運命と意思の相互作用で生まれる」そういう運命なんだというのはそういう意思を持っているからそういう運命を引き寄せているみたいな話とか、色々考えてそれをどう理屈付けるかみたいなややこしい話についてあれこれと書いてあるからちょっと読みにくい。

 未来に残っていたディスコと「未来の梢」との間の手紙を読んだ、未来の梢はその手紙を引き写してそのまま書いている(自己申告)ようだが、文中でも言っていたと居りそれが最初に書かれて以降現在の「未来の梢」と同じように文面は引き写しているかもしれないので、今回起こった出来事のどこまでが予期されているのかがわからないな。それに未来の梢は星野真人や「202」など未来のヒントを意味深に口にしていたけど、それを言った前回以前の梢に違うじゃないかと前回以前のディスコが文句をつけたからそんな忠告をしたというのも考えられるから、純粋に現在ディスコの前にいる「未来の梢」が純粋に好意で忠告、どこまでが文面と同じように予定されたものだからなるべく過去を改変しないようにと口に出しているのかがわからない。現在の視点からでは、当然のことながら状況が一向につかめないから、どんな可能性も考えられ、そうした色々な可能性について作中でも色々と語られているから、よくわかんなくなってくる。

 未来を変えてしまうかもしれないから、当時亡くなった人の話を読まないし、当時の情報を調べないという梢の話、梢の懸念は、ちょっと考えれば分かることだが、そういわれればそのとおりだから理解できる。

 わりと直球なエロもバイオレンスもあるけど、文章のトーンがそれ以外と変わらないし、バイオレンスあってもさらっと流して、受けた側がダメージ追っていても平然として態度を変えていないから嫌な感じが残らないのはいいね。割とリアルにやばい戦いとなっても一瞬後には同じPCで情報を眺めるディスコと水星Cとか、暴力の権化に見える水星Cの暴れっぷりを眼前にして一切動じない名探偵連とか、その切り替えの早さや割り切りっぷりはシュールで思わず笑みが浮かぶ。

 梢の身体に入った桔梗という子はパンダラヴァーというわけのわからない犯人の被害にあって魂を抜き取られて自分でも分からないうちに梢の身体に入ってしまい、現在の幼い梢の魂は福井の現在連続殺人が行われ、奇抜な名前の名探偵たちが集結しているパインハウス館に霊魂としている。まあ、その他にも良く分からない、常識を逸脱した出来事――たとえば梢の膣から出てきた謎の指、水星Cの襲来など――ばかりが積み重なるねえ。

 11年後の未来からきた梢が最近起こったといっていたパンダ誘拐事件が、現在から11年前に(も)起こっていたことが判明して、梢も動揺しているようだが、彼女の未来はどうなっているのか、彼女は本当はどういった(パラレルな?)世界観のどういう時代から来たのか良く分からなくなってくる。

 パインハウスでの連続殺人で名探偵たちが集って、彼らが死ぬというのは、まったく同じ名称だったかはわかんないし、たぶんまったく同じ帰結になるとは思わないけど確か以前「九十九十九」でも書いていたよね。これに加えて作中で「九十九十九」という小説について言及しているから間違いないと思う。しかし、こんなところで著者の別の小説である「九十九十九」と繋がるとは思わなかったわ。

 ちなみにパインハウスで名探偵について語っているを見るとディスコは探偵ではあっても、名探偵ではないようだ。むしろパインハウスへの同行者である水星Cのほうが名探偵っぽい感じだ。しかし梢がとげとげ豚(いのしし)のぬいぐるみにはいって行動しているのはめちゃくちゃ可愛らしいな。

 しかしパインハウスについてから、ディスコは水星Cからこれまで失敗して死亡した名探偵たちの推理を次々に聞かされて、その後で名探偵八極が推理を開始する。

 水星Cが失敗し死亡した探偵のことをぼろくそに言っていたら、死んだ人の弟がそれに反発して叫び、殴り合いとなったが、それをディスコが名探偵・八極が帰りの新幹線まで時間がないから、しらけた目で面倒くさそうに見ているから、「やめとけってば水星」「八極君が困ってるだろ。もう八極君帰りたいんだよ」と言って水星を止めているのは笑った。

 そして直前まで水星の暴力があってちょっと混乱した状況だったのに、八極の推理が始まるときに「推理を始めます!」といったら、わざわざ呼びに行かずとも名探偵全員が直ちに自分の部屋から出てきて、あるいは遠地からちょうど良いタイミングでやってきて(戻ってきて)、「フィナーレにふさわしい雰囲気作り」をしているのは非常にコミカルで思わず笑ってしまう。

 八極の推理は梢や桔梗、あるいは勺子とノーマの話をするのに、生まれ変わりや魂が色々と6年前から移り変わっていた精神の玉(魂)突き現象が起こっていたというそれまでディスコが考えてもいなかった推理が披露される。はじめから超常的現象が前提にあるからそれを否定することもできず、またディスコの梢の魂がぬいぐるみに入っていると思っているが、他の誰からもそれが動いているところがわからず、それは彼の疑い深い探偵の職業病からきた障害がもたらした妄想であると談じられ、ディスコ視点をどれくらい信頼してよいのかが揺らぐ。八極の推理はそれまでの物語が積み重ねていたものを、かなり元のほうからぶち壊すような衝撃的なもので、また精神の玉突きのややこしさもあってどうなっているのか混乱するし、またまだ上巻だけどこの事件が物語の本筋でフィナーレだとも思わないから(梢が元の身体にどうやって戻るかだったり、未来の梢がいっていた出来事だったりもあるので)、途中の事件だからいつ終わっても不思議でないから、彼の推理を信頼してもいいのかわからず、ひたすら混乱する。

 まあ、仮にこの事件が終わればすべて解決という類の事件であったとしても、著者が舞城さんだから、「九十九十九」は主人公の名前は同じだが、それ以外のストーリや主人公の背景が違うストーリーが何個か束ねたものだったから、今回は上中下でそういうことをやる可能性もあるし、あるいは「NECK」のように今回はネック(首)でなく、ディスコというキーワードだけ共通する上中下それぞれ別個のストーリーを編む可能性も否定できないからどうあってもこの巻の最後を読むまで彼の推理が正解だったのか予想できないが。

 上巻の最後でその推理に参加した名探偵たちが、事件は終わったから帰るかというところでそれ以前の推理に失敗した名探偵たち同様に死んでいるのが発見されたので、結局のところ彼の推理はどこかが誤っていたようだ。しかし彼の推理で、彼女たちの正体が、自己申告どおりかということが疑わしいあるいは誤っているという事態が判明したので、彼女たちは結局何なのだということが結局分からなくなってきた。

2012-05-22 九十九十九

九十九十九

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九十九十九 (講談社文庫)

九十九十九 (講談社文庫)


出版社/著者からの内容紹介

「苦しさを感じるなら、僕なんて愛さなくていいんだ」

超絶のメタ探偵・九十九十九の魂の旅。

聖書/『創世記(ジェネシス)』/『ヨハネの黙示録(アポカリプス)』の見立て連続殺人を主旋律に、神/「清涼院流水(せいりょういんりゅうすい)」の喇叭(ラッパ)が吹き荒れる舞台(ダンスフロア)で踊りつづける超絶のメタ探偵・九十九十九(つくもじゅうく)の魂の旅が圧倒的文圧で語られる

”世紀の傑作”はついに王太郎の手によって書かれてしまった!「ハァレルゥヤ!」

    • このテキストは、 新書 版に関連付けられています。

ディスコ探偵水曜日」に九十九が出てくると聞いて、それなら読む前に読まなきゃと思っていたが、ようやく読めた。「ディスコ探偵水曜日」は文庫落ちしてすぐ買ったのに、そんなこと気にしてグズグズしていたから、もう一年以上も積んでいることになるので、さっさと読まなくてはな。

トリビュート小説だから、もっと普通(?)の小説かと思い込んでいたら、一話毎に微妙に世界線(?)がずれたりと、ややこしいことになっとんなあ。最近、自分が隠された(暗に示された)意図を読み取る能力がないということを自覚してから、こうした構造がややこしいものがどうも苦手に。単純にその場面場面や雰囲気で楽しめたら気にならんけど。ちょっとバイオレンスがきつすぎて、それも個人的には…だし。

「コズミック」しか読んでいないけど、この小説の九十九十九の設定はかなりオリジナル設定もありそうだが(というか、JDCと同一人物ではないが)、どこがそうでどれがJDCシリーズと同じなのか判別できん。

2011-04-16 NECK

NECK

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NECK (講談社文庫)

NECK (講談社文庫)


内容(「BOOK」データベースより)

首で分断された想像力が、お化けを作りだすんやで―幼少体験をもとにした「ネック理論」の真実。首から下を埋められた三人の、地獄の一日。山奥に潜む恐怖の首物語。首の長い女の子が巻き込まれた殺人事件…映画原案、舞台原作、そして書下ろしを含めた、4つの「ネック=首」の物語。

舞城さんの小説を読むのは久々だけど相変わらず非常に読みやすかった。最近余り集中できないので10ページ、20ページくらいしか連続して読めないことが多かったので、久々に100ページ単位を疲れたりせずに読めるというのはいいねえ。

ホラー苦手だけど、これは不思議と無理せずに読めた。それぞれの作品のつながりは題名の「首」だけ?なのかな、なんかつながりを見逃していないかちょっと気になる。あと、最初の中篇以外は、戯曲とかシナリオ形式(?)なので、心理描写が少ない分だけ怖さが和らいでいるというのもあるなあ。個人気には最初と最後のが好みだった。

さあ次はすでに買ってある、「ディスコ探偵水曜日」か、それを読む前に以前から興味があった「九十九十九」でも読むか。