雑感/ツイッター、アホ、山本、与謝野、失敗学
◇ ツイッター考
いま注目のツイッター。興味はあるが、自分には向いていないように思える。ある人によれば、向いているのは鳩山首相のような人だということだ。
ツイッターはミニブログと言われることがあるが、それは字数が140 字と限られ、画像も入らないという手軽さから、ブログの簡易版、あるいはケータイでのチャットとしての機能が歓迎された、ということであろうか。
ツイッターは日本語では「呟き」と訳されるのだそうだが、時々刻々の情感なり閃きを文面として残すことに適しているように思われる。
しかし、文脈や思考の積み重ねが必ずしも伴わない瞬間的な思いや雑念(失礼)が読み手に歓迎されるかといえば、これは別問題。ウリは有名人の日常や声咳に容易に接しられる、また自分の呟きに反応が得易いといったところであろうか。
メリットとして、ツイッターからは最新の情報やトレンドが掴める、といった点が挙げられる。しかし、大量に溢れた呟きから有益な情報を掴み取るには、平素からの情報収集能力の涵養と基礎情報の蓄積が必要とされよう。それに大量の時間/労力の空費も覚悟しておかなくてはなるまい。
反面、制限もなく自由に文章が綴れるブログの効用は魅力的だが、中身があり、刺激的、知的な文章が綴れるかどうか、といった大問題が控えている。
手軽なツイッターで鍛えてからブログに挑む、という方法もあろうが、ここまでくると、何のためのツイッター/ブログかということがまず問われることとなって、筆が鈍るということになってしなうのが悲しい。
◇ アホの効用
ベストセラー「バカの壁」(養老孟司)に匹敵する「アホの壁」(筒井康隆)が好評だという。
アホの事例が列挙され、その原因分析を、例えばフロイトに求めているというが、アホの原因だけが分るとしても、これは医者に不治の病の原因を説明されるようなもので、気が沈むばかりである。
知人の紹介によると、救いは「終章 アホの存在理由」に示されているという。
筒井氏は、アホではない賢い人だけが世の中をうまく取り仕切ってゆく綺麗事の世界を忌避し、アホは社会の潤滑油、進歩向上の支え、と見ている。
気が和む。素晴しいではないか。
人類がやがて最終戦争等で滅亡するとしても、我々はそこでアホの存在意義に気付き、アホあってこその人類の歴史は素敵だった、無味乾燥を免れ得た面白いものだったと悟るに至る、というのだ。
筒井氏は、あるテレビ番組で、この著作を野心作である、と紹介していた。
うむ、これは必読の一書かもしれない。
◇ 山本周五郎の小説
薦められて、短編集「菊月夜」を読み始めたところだ。
大好きな藤沢周平に肌触りが似ていて、もっと奥行きがあるような。悩み多い世の中を耐えて生き抜く人びとの哀歓がそこにある。今の世の我々の周囲にそういう人たちがいる。
山本周五郎作品には、隠れた強力なファンが存在しているようだ。
名作「樅ノ木は残った」は武家のお家騒動を扱ったものだが、単に政争の顛末を綴るだけのものに終らず、主人公たちの熱い血が感じられた、という強い印象がある。
再読してみよう。
◇ 与謝野氏 決起か
以前から自民党代議士/与謝野馨氏のファンなのだが、政界きっての政策通という評価がありながら、その温厚な人柄故か、マスコミの前面に出ることは少なかったような印象がある。
しかし、その力量は小泉元総理が一目置いていたほどのものだ。
先年、大きな病を得られ、以来、何か達観されたのか、俄に舌鋒が鋭くなったような気がする。
先日、予算委員会で「政治と金」の問題について質問に立ち、普段の人柄とは別人のような勢いで与党を攻め立てた。
その勢いを示すものが近刊書「民主党が日本経済を破壊する」(文春新書)である。
ただ民主党を攻撃するという趣旨のものではなく、こういう現下の情勢では日本は立ち直れな、といういわば警世の書といってよい(内容は難しくてよく分らないのだが)。
最近の情報では、自民党の現状に飽き足らず、自民党を離党して新党結成の意向を固めた、とある。
政界の一つの「台風の目」として、これから大いに注目/期待したい政治家である。
連日、新聞等の民主党タネに追われて、自民党の事情が隠れがちとなり、自民党が民主党政策のほころびを追求すると「それは自民党失政のせいだ」とやり返されるたびに思い出される程度、となったのは残念だ。
たまたま見た新聞スクラップに「失敗に学ぶ社会めざせ」とあった(2001.8.20、日経、鳥井宏論説委員)。
最近はカネまみれの政治、忍び寄る検察の影、などといった生臭い話題が続くせいか、「失敗〜」(所謂「失敗学」)というような話題が紙面に踊っていた時代が、牧歌的でひどく懐かしく思われたことだった。
失敗に着目するというのは、最近話題の「事業仕訳け」に通じるものがあるような感じであるが、少し(相当に)違う。「事業〜」はあくまで政治の世界で、「失敗」は優れて人間の世界なのだ。本当はここからすべてが出発する世界が健全なのではあるまいか、と懐旧の思いに浸ったことであった。
<権兵衛の一言>
アホ、与謝野氏、山本周五郎、失敗------ 何か暖かみのある救いが、そこにありはしないか。
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