Hatena::ブログ(Diary)

メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20120928(Fri)

[]踊れ!騒げ!狂え!〜映画『Project X』 踊れ!騒げ!狂え!〜映画『Project X』を含むブックマーク 踊れ!騒げ!狂え!〜映画『Project X』のブックマークコメント

■Project X (監督:ニマ・ヌリザデ 2012年アメリカ映画)

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外国映画、とりわけアメリカ映画を観ていて、よくわかんない文化が幾つかある。例えばプロム。高校の学年最後に開かれるフォーマルなダンス・パーティーで、このプロムを題材にした映画は幾つも作られているが*1、日本の素朴かつドン臭い田舎の高校を卒業した身としては、何度このプロムを題材にした映画を観ても、なんだかピンと来ない。まあオレの高校時代の体験でこれに一番近いのは学校祭で行われる校内フォーク・ダンスぐらいである。田舎の山猿の如き高校生たちにとって、このフォーク・ダンスでなんとか意中の異性と踊るのが、密かな願望だったりしたのである。何の音楽で踊るって?そんなのオクラホマ・ミキサーとマイム・マイムに決まってるじゃないか!?

もうひとつ、よく分からないのが、親が不在の家に大勢の友人たちを集めて、音楽ガンガン流しながら踊りぃの酒飲みぃの異性とイチャイチャしぃのする、といったダンス・パーティーだ。いや、やってることはよく分かるんだが、これを、部屋数たっぷりの一軒家で、その一軒家にひしめかんばかりの人数が集まって、大音量で音楽を流しながら夜を徹して踊り狂う、というのが、ウサギ小屋並みの住居しか知らず、友人など片手の指の数以上作ったことが無く、踊り狂えるほど部屋で大音量の音楽を流したことの無い平たい顔の日本人であるオレにとって、既にありえないことなのである。まあ結局東西の住宅事情の違い、ということなんだろうが、それにしても、パーティーが出来るほどの人数が一つ家に集まる、集められる、というのも、やっぱり良く分からないのである。

トッド・フィリップスジョエル・シルバーらを製作陣に加え、新進気鋭のPVアーチスト、ニマ・ヌリザデを監督に据えて製作された『Project X』はこんな、高校生のホーム・パーティーを題材に、そのパーティーが知らないうちにどんどん恐るべき規模になり最終的に収拾が付かないほどのパニック的な状況になる、という映画だ。主人公はイケてない高校生活を過ごす少年で、誕生日のある日数少ない友人同士で集まって親のいない家でバースデーパーティーを開こうとするんだが、悪知恵の働く友人の余計なお世話とも言える計略で家にはどんどん人が押し寄せ、主人公少年の家はあたかもクラブと化したかのごとく大音量のダンス・ミュージックの中浴びるように酒を飲む男女が踊り狂い常軌を逸した乱痴気騒ぎを繰り広げ、そしてそれはいつしかコントロールを失ったカオス・フィールドと化してゆく、という物語なのである。

最初はこの映画、トッド・フィリップス絡みという事からなんとなくスラップスティックな笑えるコメディを期待していたのだが、そのキッツイ展開には、笑うどころか顔が引き攣り、どんどんドン引きしてゆく自分がいたのである。いや、考えてみれば、トッド・フィリップスという監督は、こういったシャレにならないキッツイ展開を好むある種サディスティックでヒステリックな監督だということを忘れていたのだ。だいたいオレぐらいの年になっちゃうと、パーティーで乱痴気騒ぎするワカモノ達よりも、家を破壊される親の心情のほうに共感してしまうのである。そもそも、主人公の少年だって、最初は想像を遥かに超えた人数の集まりとそのハチャメチャな振る舞いにオロオロしていたではないか。しかしだ。戸惑う主人公が酒やらクスリやら女子の色香やらでだんだんいろんなことがどうでもよくなってきて羽目を外して来るあたりから、観ているこっちも段々このメチャクチャさが愉快になってくる。そう、登場人物たちと一緒に脳がとろけ出してくるのだ。

しかしこの映画はそれで終わりではない。盛り上がりまくったパーティーはそのテンションを際限無くエスカレートさせ、その狂騒は次第に狂気とカオスの匂いを帯びてゆき、そして…という唖然呆然のクライマックスが待っている。これがヤヴァイ。相当ヤヴァイ。観ていて「ちょっと待てちょっと待てアアアアアッ!!!」とか「ありえねーって!これはありえねーって!」と思わず叫んでしまったぐらいだが、しかし"恐怖"というのとはまた違う。狂っていて、危なくて、多分一歩間違うと死ぬのだが、それでも頭にグチュグチュと快楽物質が染み出している、天辺突き抜けたハイな感じ。こんな映画観たことない、というか、こんな映画をなんというジャンルで呼べばいいのか分からない。昔"ヴァーチャル・ドラッグ”とかいうしょーもないCG映像垂れ流しのビデオがあったが、この映画は、ある意味ヴァーチャル・ドラッグ・ムービーということができるかもしれない。

ちなみにこの映画、侍功夫氏のブログ「ゾンビ、カンフー、ロックンロール」のエントリ、「パーティー!イェー!パーティー!ウォー!『プロジェクトX』」で知ったのだが、是非そちらも読んでいただきたい。そこでも書かれているのだが、この映画は日本では劇場未公開ではあるが日本語字幕付きの輸入盤Blu-rayが発売されており、値段もそれほど高くないので興味を持たれた方はAmazonUKあたりで探してみるといいと思う。

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Project X

Project X

20120927(Thu)

[]「マチェーテ」のダニー・トレホが主演したリアル・ヒーロー・ムービー『BAD ASS』! 「マチェーテ」のダニー・トレホが主演したリアル・ヒーロー・ムービー『BAD ASS』!を含むブックマーク 「マチェーテ」のダニー・トレホが主演したリアル・ヒーロー・ムービー『BAD ASS』!のブックマークコメント

■Bad Ass(監督:クレイグ・モス 2012年アメリカ映画)

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Tinker,Tailor,Soldier,Zombie】さんのブログでまだ日本で公開されていないダニー・トレホ主演映画があると知り、こりゃ日本のいちトレホ・ファンとして観なけりゃマズイだろ、と早速米AmazonでBlu-rayを注文、この間届いたのでウホウホ言いながら観てみました。

映画のタイトルは『Bad Ass』、なんか『キック・アス』みたいなタイトルですがこれは"スゲえヤツ"って意味なんだそうで、トレホさんが『キック・アス』や『スーパー!』みたいなリアル・ヒーローとなって街にはびこる悪いヤツを倒しちゃう、という映画らしいんですね。ただ『キック・アス』あたりと違うのは、トレホさんはマスクなんか被ったりしていなくて、さらに『マチェーテ』みたいな捜査官ではなく、街に住むその辺のオッサンが「悪いヤツらは許せん!」とベトナム仕込の鉄拳制裁を繰り広げる、と、そういう映画になってるんですね。つまりトレホさんは善良な市民として正義を行使するわけなんですね!

トレホさん演じるフランクはちっちゃいホットドッグ屋台を営業して糊口をしのいでいるみすぼらしいオッサンなんですが、そんなしがない稼業に就かなきゃならなかったのは、かつてベトナムに従軍したものの、帰ってきたらどこにも就職できなかった、という悲しい過去があるからなんですよ。ここでフランクさんの若かりし頃の映像が流れるんですが、農園での子供時代や素敵な女性との恋や、面接でけんもほろろに扱われる姿を、若かりし頃ですからトレホさんとは別の俳優さんが演じてるんですが、これが普通につるっとした顔の若者俳優で、この可愛い顔の若者が現在のトレホさんの鬼顔になるにはどんな恐ろしい人生がその間に横たわっていたのか、想像するだけで怖くなってしまいますね!この悪過ぎる顔はどう考えたってホットドッグ屋だけやってた善良な市民の顔じゃねーだろ!と観ている人はみんな思う筈ですよ!だってトレホさんなんだもん!絶対麻薬売人とか人身売買とか偽札造りとか女手篭めにしたりとかコピー商品密輸とか臓器闇取引とかやって刑務所20回ぐらい往復した顔だもんあれは!…と映画に突っ込んではニマニマしておりました。まあしかし前科がありながら現在は立派に俳優業を務めているトレホさんのように、この映画の主人公も、物語では語られない恐ろしい過去があるんだけれども今は立派にやっている、と思うことにしておきましょう!

さてそのフランクさんがある日バスの中で狼藉を働くチンピラをぶちのめした姿がYouTubeに掲載されて一躍フランクさんは街のヒーローに祭り上げられ、押しも押されぬ人気者となってしまうんですが、良い事ばかりは続かなくて、フランクさんの友人が夜中に悪党に撃ち殺されちゃう、という事件が発生し、悲しみに暮れるフランクさんは自らこの悪党を追い詰めることを決意しちゃうんですね。まあこの辺の詳しいストーリーは【Tinker,Tailor,Soldier,Zombie】さんのブログを読んでもらうとして、鬼顔のトレホさんが善良な市井の市民として地道に地味に捜査する姿がなんだか可笑しくってですね、映画自体も地味なんですが、「あー早くマチェーテ振り回してその辺血飛沫と切り株だらけにしねえかなあ!ガトリング銃備え付けたバイクで町中火の海にしねえのかなあ!あとパイオツがピンと立った素っ裸のチャンネーが10人ぐらい登場してでっかいジャグジーで葉巻ふかしたトレホさんとウハウハしたりしねえのかなあ!」とついつい思ってしまうんですね!でもそうしない、トレホさんの鬼顔と善良な市民という役柄のギャップが実のところこの映画のポイントかもしれないですね。

それとこの映画、悪事の黒幕としてロン・バールマンさんが出演しているのも嬉しいんですが、実はオレ英語が全然ダメで、輸入盤Blu-rayの英語字幕読んでもいったいどういう黒幕なんだかさっぱり分かりませんでした…どうもスイマセン…。あとクライマックスは一応派手に悪者とのバス対バスのチェイス・シーンが盛り込まれたりしてるんですが、なんでわざわざバスなのかよく分からない上に、トレホさん演じるフランクさんが、ただ単に運転が下手なばっかりにそこいら中のものをぶっ壊して走り回る、というところが愉快で仕方ありませんでした。映画ではトレホさんが活躍するシーンでは「バァ〜ッドアァ〜ス、バァ〜ッドアァ〜ス」というライムが繰り返される「Bad Assのテーマ」とでもいうべきスローなヒップホップが流されんですが、これがなかなか格好良くて、自分もこれから外を歩くときなんぞにはこのテーマを脳内再生し、なりきりバッド・アスとしての毎日を生きようかと思います。でも善行は無理だな!ヘタレだし!

■『Bad Ass』予告編

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20120926(Wed)

[]スゲえコーマンを一発キメたので他のコーマンも満喫してみた!〜映画『コーマン帝国』『ロックンロール・ハイスクール』 スゲえコーマンを一発キメたので他のコーマンも満喫してみた!〜映画『コーマン帝国』『ロックンロール・ハイスクール』を含むブックマーク スゲえコーマンを一発キメたので他のコーマンも満喫してみた!〜映画『コーマン帝国』『ロックンロール・ハイスクール』のブックマークコメント

コーマン帝国 (監督:アレックス・ステイプルトン 2011年アメリカ映画)

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いやあやっぱコーマンですよコーマンいいっすよねえコーマンサイコーだわなあもう頭の中はコーマンのことで一杯、毎朝毎晩コーマンのことばっか考えて生きてますよ正直。アー今夜もコーマン見てえ!思いっきり鼻血が出るほどにコーマン見まくりてえ!…というコーマン・ファンのコーマン・ファンによるコーマン・ファンのためのドキュメンタリー映画、『コーマン帝国』でございます。

え?コーマンコーマン下品だって?はてなに通報しましただって?何言ってんですか、コーマンというのはね、ロジャー・コーマンという歴史に残る大・B級・映画監督の事ですよ!ロジャー・コーマン監督がB級映画界のみならずハリウッド映画界全てにとても大きな貢献を成したことをここで事細かく書くことはできませんが、50本以上の映画を撮り400本以上の映画プロデューサーとなり、その全てが低予算でさらに殆ど赤字を出さない興行であり、それだけでなくその映画製作に関わった中から多くのスターや名映画監督を輩出し、「インディペンデント映画の神」「B級映画の帝王」とまで呼ばれている人なんですね。

さらにさらに映画で知ったのですがコーマンとその弟が設立した映画製作・配給会社ニューワールド・ピクチャーズは、アメリカの大手がなかなか手を出そうとしない海外の渋い文芸映画作品をガンガンアメリカに配給していたりもするんですよ。儲けにシビアなだけでなく、やっぱりちゃんと映画を愛してるんですね。儲け、というよりか、この人は、一人の商売人として、単にまっとうな商売をしたい、と思ってるだけなんだと思うんですね。バクチ打ちみたいな商売はしないし、自意識過剰な作家性や芸術性を売りにした映画作品ではなくて、その辺の人がぷらっと入って料金分満足して出られるような料理を格安で提供する、定食屋のオヤジみたいな監督なわけなんですよ。で、そのノウハウがあまりにも徹底している上に儲けもOK集客もOKなんで、修行に来た料理人が自分の店出したらメッチャ大繁盛した、でも定食屋のオヤジである監督自身はこじんまりと儲かってりゃ良いから別に店大きくしたり手広くフランチャイズしたり高級料理や流行料理に手を出したりはしない、みたいなね。

で、そんなロジャー・コーマン作品なんですけど、その衰退を招いたのが作品の質の低下とか下品で無内容な映画作品への世間一般のバッシングとかではなくて、『ジョーズ』や『スターウォーズ』といった、コーマン映画の如く見世物であることに純粋に特化しつつ、なおかつ相応の予算も掛けた作品だった、という部分が、コーマン映画を殺したのがコーマンの子供たちだったという意味において、皮肉に感じましたね。ある意味、『ジョーズ』や『スターウォーズ』以降の娯楽映画というのは金の掛かったコーマン映画、ということすらでき、そういった部分でもコーマン監督の影響力は計り知れないものがあるでしょう。

このドキュメンタリー映画『コーマン帝国』は様々な著名映画監督や著名俳優のインタビューを交えながらロジャー・コーマンという一人の映画監督がいかに優れた映画人であり映画界に貢献したかが描かれていきますが、コーマンはただ優れていただけではなく現行の映画業界に対してアンチの姿勢を取っていたからこそ、その反骨の精神とその行動が生み出した確固たる業績ゆえに評価されているのでしょう。実はコーマン映画ってちゃんと見たことの無いオレですらこの映画には心動かされるものがありましたが、それもひとえにロジャー・コーマンのその反骨精神と商売人としての地に足の着いた現実的な姿勢によるものからだったんですよ。なによりコーマンさん、その表情や喋り方から、非常に冷徹な批評眼を感じ、やはり只者ならぬ雰囲気を漂わせていましたね。

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コーマン帝国(Blu-ray Disc)

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コーマン帝国 [DVD]

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■ロックンロール・ハイスクール (監督:アラン・アーカッシュ 1979年アメリカ映画)

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とまあ『コーマン帝国』にそこまで感激し持ち上げておきながら、オレ自身はまずコーマン監督作品を一本もきちんと観た事がないし、実は今から観たいかというとそれもあんまり思わなかったりするんですね。それはコーマン作品観るよりもコーマンから(間接的でも)学んだコーマン的なB級映画のほうが面白く感じるし、観たいと思わせるからなんですよ。コーマン作品より多少(あるいは大量に)お金が掛かってる分、遥かに見栄えがするし、さらにセンスもずっと現代的だからなんですね。そしてコーマン監督のプロデュース作品も、まあ多分1、2本は観ているんだと思うんですが、とりたてて「コーマン製作!」とか意識していないんですよ。

しかし「『コーマン帝国』サイコー!」とか言っといてコーマン関連の映画をちゃんと観ないのはなんか卑怯な気がしたんで、『コーマン帝国』を踏まえたうえでロジャー・コーマン製作の映画を1本選んで観てみました。タイトルは『ロックンロール・ハイスクール』、勿論横浜銀蝿の『ツッパリ・ハイ・スクール・ロックン・ロール』や尾崎豊の『ハイスクールRocknRoll』とは何の関係もありません。『コーマン帝国』でもちょいとピックアップされている映画なんですが、なんでこの映画を選んだかというと実の所深い意味はありません。物語はロック大好き少女とその友達である主人公が、「ロックは不良化の原因!」とがなりたてるハイスクールの校長先生に反抗しながら、ついでに恋をしてみちゃったり、大好きなバンド、ラモーンズのライブに行ったり学校に呼び寄せたり、最後は何故か生徒みんなで学校を占拠し最後に爆破して燃え上がる校舎の前で愉快に楽しくロックンロールで踊り狂い、みんなハッピーでイッツオーライ!というこうやって書いてみるとかなりメチャクチャな映画ではあります。

しかし、巷の多くのロック映画というのが、実はロック・ミュージックをBGMにしただけの青春映画、という見方が出来る中で、メチャクチャなラストを迎えるこの映画というのは、ある意味真にロックンロールしたロックンロール映画だと言うことが出来るんですよね。そしてなにより出演し演奏もしているパンク・バンド、ラモーンズが「こりゃ人気も集まるわ」と思わせるほどカッコいい。まあ既に老人のオレの音楽の趣味ではないんですけど、イギリスでセックス・ピストルズがパンク・バンドとしてデビューする以前に既にアメリカでパンク・バンドとして注目を浴びていたラモーンズというバンドがどういうものだったのか、いかに彼らがパンク・バンドとして傑出していたのか、きちんと観る事が出来たのがよかったですね。

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20120925(Tue)

[]改変された並行世界のバットマンを待つもう一つの地獄〜コミック『フラッシュポイントバットマン改変された並行世界のバットマンを待つもう一つの地獄〜コミック『フラッシュポイント:バットマン』を含むブックマーク 改変された並行世界のバットマンを待つもう一つの地獄〜コミック『フラッシュポイント:バットマン』のブックマークコメント

フラッシュポイント:バットマン (DC COMICS)

世界最速の男・フラッシュはある日、改変された並行世界に堕とされる。そこはアクアマン勢力とワンダーウーマン勢力が熾烈な戦いを繰り広げ、世界を破滅に導こうとしていたもう一つの世界だった――。DCコミック『フラッシュ・ポイント』はそんな恐るべき世界を描いたコミックだったが(拙レビューはこちら)、この物語に登場し、その設定の改変ぶりに大いに驚かされたのがバットマンの存在だった。

改変世界のバットマン。彼の正体は、かつて両親を暴漢により殺害されたブルース・ウェインではない。改変世界のバットマンの正体は、かつて息子ブルースとその妻を暴漢に殺された、ブルースの父、トーマス・ウェインが、犯罪者への復讐を誓ってマスクを被った姿だったのだ。トーマス・ウェイン・バットマンは、真実の世界のバットマンと異なり、ヴィランを殺害することもためらわない冷徹なヒーローとして登場する。彼は、正義のヒーローというよりは、憤怒と虚無に身も心も焼き尽くされた暗黒の騎士なのだ。

そしてこの『フラッシュポイントバットマン』では、そんな改変世界のバットマンの、もう一つの、そしてあまりにも恐ろしい、【地獄】が描かれているのである。その物語、『バットマン:ナイト・オブ・ベンジャンス』 で、バットマン設定の改変は、『フラッシュ・ポイント』以上に事細かく描かれている。トーマス・ウェインがカジノを経営していたり、スーパーヴィラン・ペンギンがこの世界ではトーマスの右腕として辣腕を揮っていたり、ゴードンがウェイン警備会社の社員だったりする。そしてそのゴードンはこの物語で…。

しかし、最も驚愕すべき改変は、スーパーヴィラン、ジョーカーである。この世界でもやはり冷酷無比な犯罪者として登場するジョーカーであるが、その正体がこの『バットマン:ナイト・オブ・ベンジャンス』で明かされることになるのだ。その正体こそが、実は、バットマンが背負う、もう一つの恐るべき【地獄】なのだ。それがどんなものなのかはこのコミックを読んでいただくしかないが、改変世界ならではの、オリジナル設定を逆手に取った飛躍した想像力の賜物であることは間違いないだろう。そして物語の暗さはこれまで読んだバットマン・コミックの中でも群を抜くものであり、物語を読み終えた後の遣り切れなさはあまりにも深い。ある意味バットマン・ストーリーの最高傑作の一つとして数えられてもいいのではないだろうか。

さてこの『フラッシュポイントバットマン』には『バットマン:ナイト・オブ・ベンジャンス』以外にも2つの『フラッシュ・ポイント』のサイド・ストーリーが収められている。ひとつはメトロポリスの地下研究施設に幽閉された改変世界スーパーマンの物語『プロジェクト・スーパーマン』、もう一つはアマゾン族と地球を破滅に陥れる戦いを繰り広げる海底帝国アトランティスの帝王アクアマンを描く『エンペラー・アクアマン』。この2作に関しては『フラッシュ・ポイント』を読んでいないと分かり難い部分があるため、是非『フラッシュ・ポイント』と併せてお読みいただきたい。『フラッシュ・ポイント』自体が傑作なので、決して損はしないだろう。

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20120924(Mon)

[]男気が救った多くの命〜映画『ソハの地下水道』 男気が救った多くの命〜映画『ソハの地下水道』を含むブックマーク 男気が救った多くの命〜映画『ソハの地下水道』のブックマークコメント

■ソハの地下水道 (監督:アニエスカ・ホランド 2011年ドイツ・ポーランド映画)

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映画『ソハの地下水道』は第2次世界大戦中、ポーランドの町でナチスの手からユダヤ人たちを下水道にかくまっていた男を描く、実話に基づいた物語です。この物語で最も興味を引かれるのは、ユダヤ人たちをかくまう主人公の下水修理工・ソハが、社会の底辺で暮らす貧しい肉体労働者であり、もともとは別にたいした善人でもなんでもなく、こそ泥も平気で行うような男で、ユダヤ人の持つ金だけが目当てで彼らをかくまう、つまらない俗物でしかなかった、という部分でしょう。

ナチス・ドイツのユダヤ人狩りからユダヤ人たちを守った人物の物語といえば、スティーヴン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』がまず真っ先に思い浮かびますが、『シンドラーのリスト』におけるオスカー・シンドラーは、最初は自らの工場の利益を上げる為にユダヤ人労働者を確保したいだけの功利主義者であったものが、その後次第に良心に目覚め、彼らの命を救うために尽力し始める、という人物でした。彼は実業家という立場と潤沢な財産を元に多くのユダヤ人を救うことになりますが、それに対し『ソハの地下水道』の主人公ソハは、社会的地位も財産も無く、さらにいってしまえば教育や倫理観にも少々乏しい人間であった、というのが非常に対照的です。

己の立場を利用し弁舌巧みにユダヤ人を救ってゆくシンドラーと違い、ソハはユダヤ人をかくまっていることが知られると即処刑です。映画でも度々ナチス協力者たちの追求によりあわや、というところでユダヤ人をかくまっていることが発覚しそうになります。にもかかわらずソハがユダヤ人たちをかくまっていたのはひとえに苦しい生活をユダヤ人からまきあげた金品で潤すため、そして、下水道修理工という仕事柄、地下に迷路のように張り巡らされた下水道の様子を知り尽くしていた、という強みがあったからこそです。

ナチス協力者の追及を恐れ、ソハは遂に地下のユダヤ人たちに「もうお前たちの面倒は見られない」と言い捨て全てを投げ出そうとします。しかしそんなソハは、困窮した地下のユダヤ人たちの姿を見て、もう一度かれらをかくまうことを誓います。この時、ソハの胸には善意が蘇ったのでしょうか。良心の呵責を覚えたのでしょうか。確かに、何ヶ月も面倒を見てきたユダヤ人たちに対し、それなりの同情や感情移入はあったでしょう。しかし、むしろ自分には、善意や良心というよりも、ソハという男が、一度やりかけたことを止めてしまいたくない、ある種愚直なまでに一本気な男だったからなのだと思えるのです。

それは、下水道修理工といういわば汚れ仕事を、文句も言わず黙々とやり続けてきた市井の男の、その忍従を善しとする生き方の延長であったのではないでしょうか。ソハはきっと、金だの命の危険だのを天秤にかけながら毎日過ごすよりも「ああもうああだこうだとメンドクセエ!四の五の言わずオレが全部面倒見るわ!」と、己の"仕事"を貫徹することを決断してしまったのです。それは一種の責任感と言ってもいいでしょう。ソハは決して高貴な人間になりたいわけでも、善行を尽くしたいと思ったわけでもない。しかし、己の負った責任は必ず果たしたい。そんなソハの一本気な男気が、結果的に沢山の人々を救うことになった。命の危険を顧みず、数々の苦難を乗り超え、暗く陰鬱な地下世界を通り抜け、ラストの晴れ渡った空の下で見せるソハの笑顔は、大仕事をやりとげた男だけが見せる歓喜に満ちた表情だったと自分は感じました。

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20120923(Sun)

[]普通の日記 普通の日記を含むブックマーク 普通の日記のブックマークコメント

■某月某日

有楽町で相方さんと映画を観た帰り、銀座にある老舗釜飯店「鳥ぎん」で食事。

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オレは椎茸釜飯を注文。相方さんは筍釜飯でした。焼き鳥もあれこれ注文し、二人でワシワシパクパク食べまくっておりました。さらにオレはビール、相方さんは日本酒をグビグビ。「鳥ぎん」の釜飯も焼き鳥もとても美味しかったですよ。

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■某月某日

まったり中の猫。

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■某月某日

雨上がり、とっても綺麗な虹が出ておりました。

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lazy-daisy5113lazy-daisy5113 2012/09/24 00:41 あ、しいたけ釜飯仲間が…。私も大概しいたけ釜飯を選んでしまい、「地味」と言われます。でも好きなんだもん。虹の写真、凄いですね。

globalheadglobalhead 2012/09/24 12:24 「鳥ぎん」は20代の頃会社の先輩に連れてってもらったことがあったのを突然思い出し、それこそ30年ぶりぐらいに入ったんですよ。昔はもっと狭い店だったと思うけどさすがに変わってましたね。椎茸釜飯は、まあ、焼き鳥食べるんだから鶏はいいだろうと、それで椎茸にしたんですけどね、あとで五目のほうがよかったかなあ、とうじうじ悩みましたね。相方さんの筍釜飯も食べさせてもらいましたよ。あとでHP見たら、釜飯は来てもすぐ食べずに蓋したまましばらく蒸らしたほうが美味しいんだそうで、今度やってみようかなあと思ってます。

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20120921(Fri)

[]銃弾と暴力が支配するブラジルの街で繰り広げられるハードボイルド・ノワール!〜ゲーム『マックス・ペイン3』 銃弾と暴力が支配するブラジルの街で繰り広げられるハードボイルド・ノワール!〜ゲーム『マックス・ペイン3』を含むブックマーク 銃弾と暴力が支配するブラジルの街で繰り広げられるハードボイルド・ノワール!〜ゲーム『マックス・ペイン3』のブックマークコメント

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グランド・セフト・オート』、『レッド・デッド・リデンプション』のロックスター・ゲームズが先ごろ発売した『マックス・ペイン3』をプレイしてるんだけどこれが実に面白い。『マックス・ペイン』シリーズは元ニューヨーク市警刑事マックス・ペインを主人公にしたTPS(三人称視点アクション)なんだけど、特徴はダークなストーリーと「バレット・タイム」と呼ばれるスローモーション・アクションを発動しての華麗な銃撃戦で、難易度が結構高い分この「バレット・タイム」の使い方で難局を乗り切る、といった仕様だ。オレ自身はこれまで『1』と『2』をPC版でプレイ、この『3』はXbox360版を購入した。

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マックスの物語は1作目の悲劇がそのままマックスの心に重い影を残したまま引き継がれる。それは新種の麻薬により正気を失ったジャンキーたちがマックスの愛する妻と子を殺害した、という事件だ。マックスはその麻薬製造の背後に隠された米軍産業複合体幹部の陰謀を突き止め、血まみれの銃撃戦の末に復讐を果たすが、しかし妻と子の命が戻るわけでもなく、マックスは職を辞し、酒とドラッグに溺れる悲惨な毎日を過ごしていた。そんなマックスを気にかけ、新しい仕事に誘ったのが旧友のパソスだった。二人はブラジルに移り住み、大富豪ブランコのボディーガードとして新たな生活を始める。しかしそんなある日、謎の組織がブランコのパーティーを襲撃し、ブランコの妻を誘拐してしまう。誘拐されたブランコの妻を追い、謎の組織の正体をつきとめようとするマックスとブランコだったが、それは新たな地獄の始まりだということを二人は知らなかった。

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ヤヴァイ。なにしろヤヴァイ。サンパウロを舞台に繰り広げられる血で血を洗うアクション、脛に傷持つ男の感傷と虚無のハードボイルド、ストーリーが進むほどに暗黒の度合いが深まる地獄のノワール・ストーリー、そしてあまりにも映画的なその演出。躍るタイポグラフィ、ブライアン・デ・パルマを思わせる画面分割、サム・ペキンパーの如き血飛沫を撒き散らしながらスローモーションで倒れてゆく敵、ジョン・ウー映画のような二挺拳銃横っ飛びのアクション、そしてトニー・スコットがもしもゲームを作ったらこうなると思わせるような痙攣的な画像エフェクト!『マイ・ボディーガード』『ドミノ』あたりでトニー・スコットが演出したギラギラとした神経症的エフェクトを凝らした映像、あれをゲームでやっちゃってて単なる銃撃アクションとは全く異なる異様な緊張感とトリップ感を醸し出しているのだ。

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なにしろ日本でもレーティングが18歳以上推奨の「CERO Z」となったそのバイオレンス表現が凄まじい。ステージ最後の敵を倒すときの演出「ファイナル・キル カメラ」はこうだ。まず主人公マックスが銃から射出した弾丸の軌跡をカメラが舐めるように追ってゆき、その銃弾が敵にヒットして、胴を、頭を撃ち抜かれた敵がそこから夥しい血を噴出しながらゆっくり地面へと倒れてゆく様子を事細かに描写する。この「ぶっ殺すこと」の快楽、カッコよさ、そこにどこまでもチューニングされた表現が『マックス・ペイン3』の面白さなのだ。

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Xbox360版はディスク2枚組。このうち1枚目ではブラジルに住む大富豪の豊かで満ち足りた放蕩三昧の生活ぶりが描かれ、その中でマックスは文字通り「大富豪の犬」として大富豪所有のビルを、サッカー競技場を、謎の組織が潜伏する沼地を舞台に戦いを繰り広げる。特にディスク1クライマックスの私兵軍団とマックスの戦いでは全てが瓦礫と火の海と化し、戦場と見間違うかのような凄まじいカタストロフが描かれる。それに前後して、ニューヨークで暮らしていたマックスとパソスの、マフィア相手の凄まじい銃撃戦、という過去が間に挿入される。

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そしてディスク2に移ると、今度はブラジルの悲惨極まりない貧民街が舞台だ。薄汚れ、崩れかけたような住居、迷路のようになった町並み、命を捨てることなどなんとも思っていないチンピラの群れ。血まみれの銃撃アクションであるゲーム『マックス・ペイン3』は、その物語の中で、凄まじい貧富の差という格差社会の現実を、プレイヤーに目の当たりにさせ、体験させるというゲームでもあるのだ。誰が味方なのか敵なのかさえ定かではない暗中模索の中で、マックスは人質を救出し、事件の真相を掴む事が出来るのか。『マックス・ペイン3』、ひょっとしたら今年発売されたゲームでもNo.1の面白さを持つゲームかもしれない。

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Max Payne 3 (日本語版) [ダウンロード]

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マックス ペイン【CEROレーティング「Z」】

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MAX PAYNE 2:FALL OF MAX PAYNE (輸入版)

MAX PAYNE 2:FALL OF MAX PAYNE (輸入版)

なお、『マックス・ペイン』は以前マーク・ウォールバーグ主演で映画化されたこともある。(拙レビューはこちら

20120920(Thu)

[] 最近読んだコミック / 西遊妖猿伝 西城篇 (4)、水木しげるの古代出雲、どげせんR(1)、ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―(2)  最近読んだコミック / 西遊妖猿伝 西城篇 (4)、水木しげるの古代出雲、どげせんR(1)、ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―(2)を含むブックマーク  最近読んだコミック / 西遊妖猿伝 西城篇 (4)、水木しげるの古代出雲、どげせんR(1)、ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―(2)のブックマークコメント

■西遊妖猿伝 西城篇 (4) / 諸星大二郎

西遊妖猿伝 西域篇(4) (モーニング KC)

西遊妖猿伝 西域篇(4) (モーニング KC)

やっと…やっと出たんですね諸星大二郎先生の『西遊妖猿伝 西城篇』第4巻!お馴染み『西遊記』を諸星流の博識かつオルタナティブな世界観で換骨奪胎した幻想怪奇アクション・コミックなんですが、1983年から描き始められたこの『西遊妖猿伝』、第1部『大唐篇』から中断もありつつ第2部『西城篇』に引き継がれて、そしてこの4巻でもう30年近く描かれていることになるんですよ!?3巻が去年だからまあ1年に1冊というペースなんだろうけど、いやあ、作者が在命中に終わるのか、という心配と、最近50になったオレにとっても、オレの在命中に終わるのか、という危惧が加わってきてますよねえ。だってなんといったってこの第2部の後にはさらに『第3部 天竺篇』の構想があるっていう話じゃありませんか。第1部完結に14年でしょ、この第2部がやはり14年かかるとして完結がたぶん10年後(!)の2022年、それから第3部を14年掛けて終わらしたとしたら全巻完結は24年後の2036年という計算になっちゃいますよ!オレももう74だよ!?作者は90近くだよ!?でもまあ水木しげる先生という例もあるから、妖怪系の漫画家は長生きしそうだし、案外ちゃんと描ききるかもなあ…だったら余計オレの寿命のほうが心配になってきたなあ…。あ、物語のほうはカポエラによく似た体術を使う"さそり女"が登場し孫悟空一行を引っ掻き回す、アクション主体の巻になっていて、異世界感はあんまりありません。

水木しげるの古代出雲 / 水木しげる

水木しげるの古代出雲 (怪BOOKS)

水木しげるの古代出雲 (怪BOOKS)

水木しげる大本尊の最新作は古代出雲を舞台にした日本の神話を描いたものだ。水木先生はこれまでも『水木しげるの遠野物語』などを執筆されているが、日本の伝説・古代史と水木先生の神秘かつ幽玄な描線は結構親和性が高く、この「古代出雲」もなんとなく知っているような日本神話の物語でありながら、水木しげるフィルターを通すことで新鮮な物語として読むことが出来る。と同時に、"なんとなく知っている"けれどもちゃんと知っているわけではない日本神話をきちんと読めるのでお得感も倍増である。どちらにしろ、もはや水木先生のトレードマークともいえる「ほわ〜んと漂う煙状のもの」とか「手書きオノマトペの熟成した深い味わい」とか「"ふはっ"という鼻息が既に固体にしか見えない形状」とか「大きく開いた口の中で"つ"の字に丸まっているベロ」とか、そういう"限りなく水木的な表現法"を愛でることこそが真の水木信者の役割であり、それは今作でも十二分に堪能できるというわけなのである。

■どげせんR(1) / RIN

どげせんR 1 (ヤングキングコミックス)

どげせんR 1 (ヤングキングコミックス)

いろいろな事情により連載の打ち切られた『どげせん』が『どげせんR(リターンズ)』として帰ってきた。もとの作者二人の分裂、ということでこちらはRIN氏のものとなるが、『どげせん』オリジナルと感触が違うのはオリジナルの超自然的かつ意識的に無理矢理なこじつけによる"土下座"のシュールな笑いではなく、心の底から願って頭を垂れる、土下座本来の意味に基づいた土下座を描こうとしているということだ。物語は主人公瀬戸発(せとはじめ)とその同僚・教え子たちによる学園ドラマ、というコンパクトな空間に限定され、馬鹿馬鹿しさよりもむしろハートウォーミングなものを主軸とするが、インパクト頼みの土下座のバリエーション展開にそろそろ限界が見えてきていたのでこれはこれで悪くない。

■ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―(2) / すぎむらしんいち

ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―(2) (シリウスKC)

ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―(2) (シリウスKC)

ゾンビたちがはびこる日本を舞台にしながらすぎむらしんいちの『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ ―童貞SOS―』はユニークな設定を持つ。それはゾンビと化したはずの女たちが腐れた肉と化すことなく艶かしく美しい姿を持ち知性も失うことなく、男の肉をむさぼり男たちを殲滅し、かたや男たちだけが一般的な死肉としてのゾンビとなって通りをさ迷い歩く、という世界を描いているからだ。これはどんどん性的に大胆になっていく女たちと保守的なままの男たち、というメタファーなのだろう。しかもこの漫画の主人公はオタクヒキコモリ童貞ブ男のボンクラ野郎で、性格が卑屈な上にセックスの事しか頭に無くさらに作中では常にフルチン、というどうしようもないヤツなのである。そんな主人公とボンクラ仲間たちがショッピング・モールならぬ中野ブロードウェイに立てこもりゾンビと対峙する、というからなおさらおかしい、そんな第2巻である。

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20120919(Wed)

[]Plastikmanの16枚組みボックス・セット『Arkives 1993-2010』を買った Plastikmanの16枚組みボックス・セット『Arkives 1993-2010』を買ったを含むブックマーク Plastikmanの16枚組みボックス・セット『Arkives 1993-2010』を買ったのブックマークコメント

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なにをトチ狂ったか「オレは今までちゃんとPlastikmanを聴いていなかったのではないか」と思い、発作的にPlastikmanの16枚組ボックス・セット『Arkives 1993-2010』を買ってしまいました。Amazonだと1万6千円位だったから1枚1000円前後、割ると確かに安いかもしれませんが全体的には高い買い物ではあったという。

Plastikman / Richie Hawtinはこれまで何枚かアルバムを買ったことはあるし、クラブでのプレイも見た事はあるんですが、あまりにミニマル過ぎるのでちょっととっつきにくく感じていた部分もあって、諸手を挙げて「メッチャ好き!」というアーティストというほどでもなかったんですが、なんだか最近どんどんテクノなりクラブ・ミュージックを突き詰めていったら結局Plastikmanに行き着いてしまった…ということなんですよね。

それにしても16枚組…このうち1枚はDVDですから音源としては15枚分なんですが、これまでリリースされていたアルバムのリマスター盤、シングル曲や未発表音源、さらに他アーティストのRemixなども含め、15枚で全159曲(曲目リスト)、17.7時間分にわたりたっぷりとPlastikman世界に没入することができるんですねえ。いやしかしあまりに枚数あるので今まで頑張っても全曲5、6回づつぐらいしか聴けてないんですが…。それでも数日間にわたってPlastikmanのミニマル・チューン漬け、すっかりテクノヘッドになっております。ちなみに曲がダウンロードできる「Bonus Digital Download Kontent」は、このボックスセットをPlastikmanのショップから直で買わないとダウンロードコード入手できないようですねえ。

このボックス・セット、ディスク16枚を収録してあるのでなにしろデカイ。

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ゴツイ箱入りで中から本体を出したところ。

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中にはCD収納箱とブックレットが入っています。

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CD収納箱を広げるとこんな感じ。壮観!

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ブックレットの中はこんな感じ。デザインが凝っていて、文章読めなくても広げただけで楽しめます。

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DVD収録のビデオは13編、約60分。そのうちの幾つかを紹介します。

●Mind Encode + Lost + Disconnect

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●Ask Yourself

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●Psyk

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●Converge

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●Skizofrenik

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そういえば12月15日幕張メッセで行われる【WOMBADVENTURE’12】Richie Hawtinが出演するけど観に行きたいなあ。誰か一緒に行かないかなあ。

Arkives 1993-2010

Arkives 1993-2010

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20120918(Tue)

[]『白雪姫と鏡の女王』はプリチーでキュートな秀作ファンタジーだった! 『白雪姫と鏡の女王』はプリチーでキュートな秀作ファンタジーだった!を含むブックマーク 『白雪姫と鏡の女王』はプリチーでキュートな秀作ファンタジーだった!のブックマークコメント

白雪姫と鏡の女王 (監督;ターセム・シン 2012年アメリカ映画)

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誰もが知る御伽噺「白雪姫」をターセム・シン監督が映画化した『白雪姫と鏡の女王』、題材として新鮮味は無かったものの実際観てみるとこれが無類に面白い傑作ファンタジー映画として完成していてちょっとびっくりした。

ターセム・シンはもともと苦手な映画監督で、初期の『ザ・セル』『落下の王国』あたりは「現代アート・コンプレックス」とでも皮肉りたくなるようなこれ見よがしな現代アートの剽窃と模倣がこれでもかとばかりに画面に踊り、正直映画が進むにつれ辟易させられていたものだったが、前作『インモータルズ 神々の戦い』はちょっと趣が異なっていた。『インモータルズ 神々の戦い』には確かにこれまでのターセム映画らしい「美意識のひけらかし」色はあったものの、そこで中心となって描かれるのは血飛沫舞い切り株飛び交うスプラッタ趣味大盤振る舞いの、ある意味ナンセンス極まりない映像だったのだ。気取ったアート趣味をかなぐり捨ててのこのなりふり構わない演出に、オレは大絶賛を送ったし、それと同時に、今後のターセム作品に対して大いに期待が持ててきたのだ。

そこでこの『白雪姫と鏡の女王』である。ここで描かれる映像と物語は『インモータルズ 神々の戦い』で感じたターセム・シンの進化を裏付けただけではなく、その予想のさらに上を行くプリチーでキュートな、心躍る娯楽作品として仕上がっていたのである。

物語はお馴染みの「白雪姫」の物語を換骨奪胎し、オリジナル物語のようにおしとやかでありながらもずっとアクティブな王女を主人公にしたのが現代的であるが、なによりまず物語にすっと引き込んでくれたのはそのコメディ・センスだ。「ターセムってコメディいけたのか!?」と思ったほどだが、これは慇懃で傲慢な継母王女を演じるジュリア・ロバーツの存在感とコメディ・センスによるものも大きいのだろうが、それ以外でも王女の臣下ブライトンの情けなさ、カッコよく登場したにもかかわらずいつも身包みはがされ、挙句の果てに犬の惚れ薬を飲まされワンワン言わされる隣国の王子の可笑しさ、そしてなによりも白雪姫を助ける7人の小人のいつもワイワイガヤガヤとやかましいお喋りの楽しさが、映画全体を実に愉快なものにしているのだ。

特に7人の小人の、蛇腹状の凝ったデザインの竹馬を使って身長を大きく見せ、なおかつ戦闘を有利に持って行く、という演出は、デザイン一辺倒ではない必然性を兼ね備えてターセムらしからぬ説得力を持っていた。そしてこの小人たち、7人が7人キャラが立っている上に、いつもはオチャラケのくせしていざというときは勇猛果敢、愛くるしい上に頼もしいことこの上ない連中で、ある意味この映画のもう一人(7人?)の主役ではないかと思えたほどだ。

映画は前半、いつも通りの美術頼みのターセムで、しかしお話がコメディ・タッチだけにその美術もどこか可笑しく、その嫌味の無さに素直に美術の美しさ・楽しさを堪能できる。しかし特筆すべきなのは後半だろう。「ターセムってこんなに映画撮るの上手かったっけ?!」と思わせるような目の覚めるような演出を見せるのだ。7人の小人たちと白雪姫・王子共闘してでの最後の戦いのスペクタクルは、ただ単に美術を見せることだけに血道をあげていたこれまでのターセム映画とは間逆と言っていいほどの、驚くべき展開と手に汗握る興奮に満ち満ちたアクションが繰り広げられるのだ。この後半の戦いにおいてもはや監督ターセム・シンは一皮剥けたといっても良いほどだろう。

そしてラストは美しくて楽しいハッピーエンド、とっても幸せな気持ちになって映画館を出てこれる。白雪姫の物語では必須の筈の"アレ"が最後の最後で…というシナリオも秀逸だし、そして本当にオレを感激させたのは最後にXXXれるXXXとXXのシークエンスだ。興味を殺ぐだろうからちゃんと書けないが、あの幸福感と開放感に満ちた演出に、オレは正直、乙女のように目をキラキラさせて感涙してしまった。ターセム・シン、まさかここまで化けるとは思わなかった。まさにプリチー&キュート、心をどこまでも幸せにしてくれる秀作といって良いだろう。

白雪姫と鏡の女王 予告編

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Mirror Mirror (Soundtrack)

Mirror Mirror (Soundtrack)

ザ・セル [DVD]

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ザ・フォール/落下の王国 [Blu-ray]

ザ・フォール/落下の王国 [Blu-ray]

20120914(Fri)

[]ミルトンの『失楽園』を読んだ。 ミルトンの『失楽園』を読んだ。を含むブックマーク ミルトンの『失楽園』を読んだ。のブックマークコメント

失楽園 / ジョン・ミルトン

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

失楽園 下 (岩波文庫 赤 206-3)

失楽園 下 (岩波文庫 赤 206-3)

17世紀に詩人のジョン・ミルトンによって書かれ、イギリス文学の最高傑作のひとつと謳われる作品、『失楽園』を読みました。なぜこの本を手にすることになったかというと、単に「神に叛乱を起こし地獄に堕とされた天使たちが悪魔になって楽園のアダムとイヴをたぶらかす」、というお話をきちんと読んでみたかったからなんですね。神と悪魔の時間を超越した戦いって、いろんな映画や小説、漫画などのモチーフになっているじゃないですか。あと自分、永井豪の漫画『デビルマン』とか『魔王ダンテ』とかとっても好きなんですね。その辺の原典に一回あたってみても面白いんじゃないか、と思ったわけで、イギリス古典文学を極めたい、とか大それたことを考えてたわけじゃないんですよ。それと以前、映画評論家の町山智浩さんが、確かラジオかなんかでクリストファー・ノーランの『ダークナイト』を紹介するときに、ジョーカーの悪逆さに絡めてこのミルトンの『失楽園』を挙げていたのを覚えていたんですね。その時この本を読んだ町山さんは、「悪魔のほうがリアルでカッコいいじゃないか!」みたいなことをおっしゃってて、ああ、そんなふうに楽しめる本なんだ、と思ったんですよ。

さてミルトンの『失楽園』、岩波文庫版で読んだんですが、まず上巻の殆どは神へ謀反を起こし天界の戦い敗れたルシファー=サタンの軍勢が、鬼哭啾啾たる地獄の暗闇の中で、恨み言と虚勢を張りながら、世界の支配者である全知全能の神にいかにして再びまみえるか、その計略を立てる内容が描かれてゆくんですね。神との戦いが、実は一方的な敗退だったことを知っている悪魔たちは、今度は正面から戦うのではなく、神と悪魔の戦いの後に、神が宇宙のある場所に新たに作った【人間】の世界を破壊することで、人間を愛する神に煮え湯を飲ませてやろう、ということになったんですね。悪魔ですから姑息で卑怯な手段はお手のものなんですね。そして地獄の堅牢な扉を突破したルシファーは、【闇】と【混沌】の世界を抜け、アダムとイヴが幸福に暮らすエデンの園に姿を変えて到着します。

ここで面白かったのは、悪魔たち、とりわけルシファーが、冷酷非道悪逆大罪な存在では決してなく、実は、非常に人間的な存在として描かれている、ということなんですよ。人間的な存在、というのはどういうことか、というと、弱さを持ち、その弱さゆえに去勢を張り、嘘をつき、そして自分が自由ではない、ということに憤りを覚え、支配されている、という状況に反感を感じ、それに反抗しようとし、その反抗に失敗して傷つき、呻吟し、恨みを唱え、復讐しようと考え、最終的に負の方向へ負の方向へと走りたがる、それら全ての感情と行動のあり方が、どこまでも人間的だと思えてならなったんですよ。逆に、聖なるものであるはずの神と天使の軍勢、というのは、正しいことや当たり前なことしか言わない、やらない、そしてどうにも権力的な、高圧的な存在であるかのように描かれているんですね。いや、そのように描いたわけではないのでしょうが、キリスト教圏から離れ信仰もない現代の人間である自分からみると、そう読めてしまうんですよ。神とか天使とかいうのはお堅いことばかり述べたがるなんと面白みの無い存在なんだろう、とね。そしてこの悪魔の描かれ方、というのは、実は当時の清教徒革命に身を投じ翻弄され敗れ去った作者ミルトンの心情がその背後に隠されているようなんですね。なにしろ悪魔=非道の存在、と描かれているわけではない部分にこの物語の面白さをまず感じました。

そして下巻では神がいかに天地を創造したのか、という話と合わせ、エデンの園に住むアダムとイヴが、ルシファー=サタンの奸計により神に禁じられていた知恵の実を食べてしまい、それにより神の怒りに触れ、楽園を追放されるまでが描かれます。いわば旧約聖書の世界を描いているわけなのですが、これがまた、「教訓的で抹香臭い聖書物語を読まされている」という感覚とは全然別の、想像以上に胸を鷲掴みにされる物語の展開をみせているのですよ。それは、神の期待を裏切ってしまったアダムとイヴの、その苦痛と後悔、これからの生に待つ果てしない絶望と苦難、これらの感情が、実に生々しく、そして痛々しく描かれているからなんですね。聖書的な、神との契約を破ったものの見せしめとしての原罪、という部分を離れ、人が生きるということそれ自体の、やるせなく、やりきれなく、不条理な側面が、ここには抉り出され、描かれているんですよ。なにより感動的だったのは、イヴが教えを破って知恵の実を食べたことを知ったアダムが、しかしイヴへの愛ゆえに、彼女と共に同罪に落ちるために知恵の実を食べる、というくだりです。知恵の実を食べたアダムとイヴ、という話は知ってはいても、その動機には二人の【愛】が隠されていたのだ、という解釈には非常に切ないものを感じました。さらに神の怒りに触れ、楽園の追放を言い渡され、その子孫にも永劫の苦しみが待っている、と知らされた二人は、一度は死を考えながら、それでもやはり、生きてゆこう、そして、子孫を残してゆこう、と誓うんです。二人は、生は、実は苦痛ばかりなのではない、生きていることは、それ自体が祝福なのだから、だからこそ、生き続けるということは、その祝福を成就する行為なのだ、ということを悟るんですね。そして、楽園を追放された二人は、茫漠たる荒野へ、最初の一歩を記すんです。ある意味このクライマックスは、アダムとイヴの凄惨なるラブ・ストーリーとして完結するんですよ。

生は、やるせなく、やりきれなく、不条理な側面を持つものです。生は、艱難と辛苦に満ち、途方に暮れることばかりが起こりがちです。そうして生きながら、やがて年老い、体が利かなくなって死ぬのです。あるいは、突然の事故や、病気や、そのほかの、想定出来ないあらゆる理由で、人は生半ばして死にます。生は不条理です。宗教とは、その不条理さに理由をつけようとしたものなのでしょう。自分は、信仰を持っていませんし、今のところ、持つ予定もありません。しかし、生の不条理に理由をつけようとした宗教というツールはやはり物凄いものだったのだな、と感じるのと同時に、宗教の非合理性に与する事を善しとしない程度の知識と合理性を持っていたとしても、生の持つ不条理に対して人はやはり無防備な存在でしかない、とも思えるのです。この不条理を理由付けられた生と茫漠たる荒野ばかりが広がる世界で、人はいかにして生きていけばよいというのでしょうか。そして既に、神はどこか遠いところに行ってしまっているんです。楽園の永遠に閉じられた扉の前に立つアダムとイヴの姿は、実は現代に生きる我々の姿と何一つ変わっていないように自分には思えました。でも自分といてくれるあなたがいるのなら、この人生は幾ばくかは素晴らしいものになるかもしれない。そしてそれだけでも、随分幸せなことなのではないか、アダムとイヴの行く末を自分に重ねながら、そんなことも思えた作品でもありました。

――君の生命を愛するな、また憎むな。ただ君が生きる人生を/善く生きよ。長きにせよ短きにせよ、天に許された生を。 「失楽園

20120913(Thu)

[]身分を奪われた冷血独裁者がニューヨークの街を大徘徊!!〜映画『ディクテーター 身元不明でニューヨーク身分を奪われた冷血独裁者がニューヨークの街を大徘徊!!〜映画『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』を含むブックマーク 身分を奪われた冷血独裁者がニューヨークの街を大徘徊!!〜映画『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』のブックマークコメント

ディクテーター 身元不明でニューヨーク (監督:ラリー・チャールズ 2012年アメリカ映画)

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お下劣ギャングスタ『アリ・G』、頓珍漢カザフスタン・ジャーナリスト『ボラット』、おホモなヌメヌメ・ファッション評論家『ブルーノ』等々、狂ったキャラの極北をおならプージェット推進で爆走し続ける奇人変人コメディアン、サシャ・バロン・コーエンの新作は極悪冷血でちょっとおバカな中東の独裁者が主人公の『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』。

北アフリカのワディヤ共和国で殺したいときに殺し奪いたいときに奪い犯したいときに犯す、愉快でお気楽な独裁者の春をハナクソほじりながら謳歌しまくっていたアラジーン将軍(サシャ・バロン・コーエン)。今日も楽しく核ミサイルを製作し、世界を火の海に変える準備をしていたところ、国連から「核施設あんだろコラ?つべこべぬかすと空爆しててめえの国石器時代に戻すぞコラ?」と脅かされ、渋々ニューヨークで釈明することに。しかしそのニューヨークで参謀タミール(サー・ベン・キングズレー)の裏切りに遭い、拉致されトレードマークのヒゲを剃られ、ホームレス姿で街に放り出された独裁者アラジーン!「我輩の身分を取り返し、人々が望んで止まない残忍凶悪な独裁者として復活せねば!」アラジーンを政治難民と勝手に勘違いした女性活動家ゾーイ(アンナ・ファリス)の計らいでたわけた自然食スーパーに勤務することになったアラジーン、彼は独裁者の座に返り咲くことができるのか!?

はい、サシャ・バロン・コーエンです。相変わらず低俗です。人格劣等・品性下劣です。サイテーです。差別ギャグ連発です。人を人と思っていません。この『ディクテーター』でも自分以外はみんな虫ケラ、という独裁者キャラをドン引き一歩手前の危険なギャグを散りばめながら演じます。いやーなんなのこの下種の見本みたいな糞キャラクター?オレは…オレは大好きだッ!!

今回の『ディクテーター』は、擬似ドキュメンタリーとして制作されたこれまでの『ボラット』や『ブルーノ』と違い、最初からきちんとした脚本のある、100%のドラマとして制作されているんですね。だから『ボラット』『ブルーノ』みたいな冷や冷やさせられるドッキリカメラネタは存在しないんですが、自分の思ったことをそのまま言い、やりたいことをそのままやるという独裁者ならではの危険で独善的な言動・行動の数々は、やっぱりとってもヤヴァイ雰囲気の笑いを映画にもたらしていますね。

この物語のシナリオが可笑しいのは、独裁者アラジーンを放逐し、ワディヤ共和国を民主主義国家にするため新憲法を制定しようとしているアラジーンの元側近、タミールの正義と善意に満ちた行動を、あの手この手を使って阻止しようとする、(元)独裁者アラジーンの側に観客の視点や共感を持ってこようとしていることですね。「独裁者?なにその前時代の遺物?さっさと死んで物語終わっちまえ」ではなく、「タミール頑張れ!栄えある民主主義国家を実現してくれ!」でもなく、「ギャハハこのオッサン頭いかれてて面白え!次何また馬鹿なことやるのか観たいからついでに独裁者に返り咲いちゃいなよ」とついつい応援してしまう自分がいるんですね。

この物語は正義とか善意を賞賛するものでは決して無い、しかしだからといってそれを貶めるピカレスク・ロマンというわけでも全然無い。じゃあ何の物語か、というと、強大な権力を持つ者の滑稽さ、ということなのですが、しかしその滑稽さ、というのは前時代的な独裁国家を牛耳るアラジーン将軍、ということになるんですけど、実はそれだけではなく、独裁国家を笑い飛ばすその返す刀で、本来なら人類の理想的な政治形態だとされる民主主義をも、同時に切り捨てようとしているんですね。そしてそれはアメリカの民主主義、ということなんですね。世界最大最強の民主主義国家アメリカは、じゃあ果たして正義と善意の国なのか?ということなんですね。まあ全然そんな国じゃないことは誰もが知ってますけどね。そしてどこまでも滑稽で愚か者の将軍アラジーンの姿は、実はアメリカの権力構造の姿となにも変わらないじゃないか、とこの映画は突きつける。じゃあ民主主義っていったいなんなんだよ?というのがこの映画の問いかけなんですね。一見低俗で人格劣等・品性下劣でサイテーで差別ギャグ連発のこの映画はしかし、カミソリのように鋭利な批評をその裏側に隠し持っている。まさに秀作といえる作品でしょう。…あ、"かぶせ"の無いチンコが出てきたりもしますが!

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bruno 完全ノーカット豪華版 [DVD]

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アリ・G [DVD]

アリ・G [DVD]

20120912(Wed)

[]最近聴いたCD / Robert HoodJoris Voorn & Cassy、Matthias Tanzmann、Paperclip People、The Orb Featuring Lee Scratch Perry、Luciano 、LOL Boys、Pet Shop BoysPublic Image Ltd. 最近聴いたCD /  Robert Hood、Joris Voorn & Cassy、Matthias Tanzmann、Paperclip People、The Orb Featuring Lee Scratch Perry、Luciano 、LOL Boys、Pet Shop Boys、Public Image Ltd.を含むブックマーク 最近聴いたCD /  Robert Hood、Joris Voorn & Cassy、Matthias Tanzmann、Paperclip People、The Orb Featuring Lee Scratch Perry、Luciano 、LOL Boys、Pet Shop Boys、Public Image Ltd.のブックマークコメント

■Motor: Nighttime World 3 / Robert Hood

Motor: Nighttime World 3

Motor: Nighttime World 3

今夏の「WIRE12」にも出演したデトロイト・テクノ・レジェンド、Robert Hoodによるプロジェクト「Nighttime World」の第3弾。4つ打ちのハード・ミニマルとかでは全然無く、実にインテリジェントな仕上がり…だけどやっぱり4つ打ち聴きたかったような。 《試聴》

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■Cocoon Heroes mixed by Joris Voorn & Cassy

COCOON HEROES MIXED BY JORIS VOORN AND CASSY

COCOON HEROES MIXED BY JORIS VOORN AND CASSY

イビザで開催されているパーティー「Cocoon Heroes」にあわせリリースされているMixCD、今年はJoris VoornとCassyによる2枚組。Joris Voornの「PCできっちり作業しました」といった感じのMixよりもCassyのフロアの躍動感を感じさせるMixのほうが楽しいかな。 《試聴》

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■Fabric 65: Matthias Tanzmann

Fabric 65: Matthias Tanzmann

Fabric 65: Matthias Tanzmann

FabricのMixCD、65番目はライプチヒで活動するテック・ハウス/ミニマルDJ、Matthias TanzmannのMix。 《試聴》

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■The Secret Tapes Of Dr. Eich (2012 Remastered Version) / Paperclip People

CARL CRAIGのプロジェクト、PAPERCLIP PEOPLEのベスト・アルバムをリマスタリング再発したもの。クラシック・テクノの名曲が並ぶマスト・アイテムです。 《試聴》

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■Orbserver In The Star House / The Orb Featuring Lee Scratch Perry

The OrbとLee Scratch Perryのコラボによるディープなミニマル・ダブ・アルバム。Lee Scratch Perryの臭みをThe Orbがトリートメントした、というかThe OrbのアンビエントにLee Scratch Perryの癖の強い音が乱入してくる、といった内容。The Orbの名曲「Little Fluffy Clouds」をリテイクした「Golden Clouds」も聴けます。  《試聴》

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■Vagabundos 2012 Mixed by Luciano

VAGABUNDOS 2012 ( 直輸入盤・帯ライナー付 )

VAGABUNDOS 2012 ( 直輸入盤・帯ライナー付 )

ミニマル・ハウス・レーベルCadenzaからリリースされたチリアン・ミニマルDJ、Lucianoの変なジャケットのMixDJアルバム。じわじわとエモーショナルに盛り上がってくる好Mixですね。(↓のビデオはアルバムのものではなくVagabundos 2012におけるLucianoのプレイの様子を収めたもの) 《試聴》

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■Changes - EP / LOL Boys

Changes - EP

Changes - EP

LAのアンダーグラウンド・デュオ・ユニットLOL Boysによるディープ・ハウス/ブレイクビーツEP。ハイセンスながらも時々変な音の使い方をするのが面白いユニット。 《試聴》

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■Elysium / Pet Shop Boys

ポップ・デュオPet Shop Boysのニュー・アルバムは奇妙に「涅槃」な落ち着きに溢れたちょっと大人しめ…というかちょっと地味目のアルバム。限定のスペシャル・エディションでは2枚組の2枚目に1枚目のアンビエントなインストを収録。 《試聴》

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■This Is PiL / Public Image Ltd.

This Is Pil : CD+DVD Deluxe Edition (NTSC Region All)

This Is Pil : CD+DVD Deluxe Edition (NTSC Region All)

なんだよPublic Image Ltd.ニュー・アルバム出すのかーとつい懐かしくなって購入。変なオジサンになりながらも相変わらずのシニカルで反骨なJohn Lydonの音が聴けます。デラックス版にはライブDVDがついててこれが結構長時間。 《試聴》

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20120911(Tue)

[]肉だッ!羊だッ!モンゴルだぁッ!? 肉だッ!羊だッ!モンゴルだぁッ!?を含むブックマーク 肉だッ!羊だッ!モンゴルだぁッ!?のブックマークコメント

■オレをモンゴル料理屋に連れて行け

オレの誕生日はどこでメシを食おうか、という話を相方さんとしていたのである。

相方さん「今度の誕生日だけど、ウォーターフロントに地ビールの美味しい店があってね、」
オレ「モンゴル料理」

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相方さん「そこ、結構お洒落なお店らしくて、」
オレ「モンゴル料理」

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相方さん「はい?」
オレ「モンゴル料理」
相方さん「は、はい・・・」

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というわけで、相方さんの熱烈な推薦により、モンゴル料理を食いに行くこととなったのである。

モンゴル。ああモンゴル。モンゴルといえばチンギス・ハーン。チンギス・ハーンといえばジンギスカーン。そしてジンギスカンといえば羊肉。そう。モンゴル料理とは即ち羊肉を食って食って食いまくる料理なのである。北海道生まれのオレはジンギスカンが大変好きだ。それは羊肉が好きだ、ということなんだと思う。そんな大好きな羊肉をいっぺん極めてみたい、と思ったのである。そこで、モンゴル料理の登場、というわけなのである。ちなみにモンゴル料理にジンギスカンは無いのである。ジンギスカンは実は日本料理なのである。これ、豆知識な。

■羊肉!羊肉!羊肉!(メェ〜)

というわけで都内でモンゴル料理屋を探して見つけたのが両国にあるモンゴル料理レストラン『ウランバートル』(お店HP)。両国ということもあってモンゴル力士も立ち寄ることがあるというお店だ。お店を切り盛りしているのもモンゴル人のご夫婦で、息子さんもモンゴル力士なのらしい。

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お店に入るとモンゴルな衣装を着た笑顔の可愛いモンゴル少女がお出迎えである。いやあ、この後もモンゴル人らしきお客さんが多数お店にみえたんだが、モンゴル人の顔つきって下手な日本人よりも日本人っぽい、というか、少なくとも北海道で育ったオレにとって、モンゴル人の顔つきは一番馴染み深い日本人の顔なんだよなあ。北海道人ってあの辺の血が絶対混じってるよなあ。

店内の写真。もう全然質素。この質素な感じがまたモンゴル。

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さて相方さんとビールとワインで乾杯し、メニューにあるモンゴル料理を片っ端から頼む!まずはウランバートル・サラート(自家製ピクルスの特製サラダ)。思えば、この日頼んだ料理で羊肉の入ってないのはこれだけだった…。

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中国料理のパオズみたいな形をした料理、ボーズ。中は肉汁たっぷりの羊肉。

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肉入りの薄い揚げパン、ホーショール。モンゴルでは非常に一般的な食べ物らしい。中は勿論羊肉。

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ホーショールの形違い。ピロシキに似ているかも。醤油をつけても美味いらしい。中は勿論羊肉。

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小麦粉でふたをして蒸しあげたスープ、ビトゥーシュル。ロシア料理に似たようなものがあったような気がするな。

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この小麦粉のふたをスープの中に入れると、これがあ〜ら不思議、美味しいパスタに早変わり。ちなみにスープの具は勿論羊肉。

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■最強のボスキャラがオレ等を待ち構えていたのだ。

そしてこの日のメイン・ディッシュというかメイン・イベント、塩ゆで骨つき羊肉、チャンスン・マフの登場である。

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なにしろとんでもない肉の量なのでありますですよ、皆々様よ。

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肉。肉。肉。ひたすら肉。

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既に「原始肉」状態の巨大骨付き肉。

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それを原始人にたちかえってむしゃぶりつく快感。

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…いやあ、物凄いボリュームでした。もともとは3人前以上の分量なので多いのは分かってたんですが、途中から「食っている」というよりも「格闘している」という感覚に近くなってきましたね。しかも味付けは岩塩のみ。もともとモンゴル料理って殆ど香辛料を使わない民族料理なんだとか。後半きつかったですが、なんとか完食しました。羊肉、おいしかったですよ。…でも、お、おなかが破けちゃうよう!ちなみにこのチャンスン・マフ、HPに書かれている値段よりも値上げしていたのでもしも行かれる方がいらっしゃったら注意されてください。大人数で行ってわいわい言いながら食べると楽しいかも。

『ウランバートル』を後にし、食べ過ぎ飲み過ぎですっかりグダグダになったオレと相方さんはよろよろと喫茶店に入ると、激しい戦闘の後の前線兵士のようにぐったりとソファに体を預けるのであった…。

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【おまけ】

誕生日のプレゼントはおねだりしてお財布買ってもらいましたよ。

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20120909(Sun)

globalhead2012-09-09

[]50年のサマー 50年のサマーを含むブックマーク 50年のサマーのブックマークコメント

そういえば今日は50歳の誕生日なのであった。毎年誕生日には一個年をとって思うこと思わないことその他適当なことを日記に書き連ねていたものだが、あれこれ忙しくて今回は日記に長々と書く暇が無い。

一応50歳で半世紀も生きてなにがしかの節目だとは思うのだが、それが何の節目なのか容易に思いつかない。というか、今この日というわけではなく、この程度の年齢になると現実として感じるようなことは随分前から存在しているのだけれども、それをここで特に陳列するような気にもならないということもある。

一ついえることはやはり身体はそれなりに年老いていてどんどん無理が利かなくなってきているということと、それと同時に、漠然と、できることならこれからは健康で穏やかに生きたいものだよのう、ということである。まだ何かあるかとは思うが、まあ思いついてまだ書く気があるなら書くだろう。

とりあえずそんなところである。こんなオレではあるがいつも相手してくれている相方さん、そしてネットで声をかけてくれたりたまに酒飲みに行ってくれたりする方々にここでお礼を述べて、この文章の〆とすることにしよう。相方さん、皆さん、いつもありがとう。

lazy-daisy5113lazy-daisy5113 2012/09/10 00:27 Hey!Happy Birthday Jusfif!!


本当に健康で穏やかに、ですね。結構難しくて贅沢なことなんだけど。フモさんは若いです。異常に。ええ。

フモさんと相方さんは出会うべくして出会った最高の二人だと心からそう思っています。赤い糸の神様GJ!

たまにはオバハンとも遊んでね(はぁと)

jkjk 2012/09/10 01:31 色々とおめでとうございます。 いやー ほんと 健康なのがなにより大事ですね
なんだかんだ言いつつ精力的にUPされるレビューを楽しみにしてます。
お酒のほうもそのうちご一緒できたら嬉しいでース!

uribonuribon 2012/09/10 01:51 お誕生日おめでとうございます。
映画、本、音楽、いつもレビューを楽しみにしています。
相方さんとお二人、健康に気をつけて仲良く楽しくお過ごしください。

globalheadglobalhead 2012/09/10 12:29 >レイジーさん
ありがとうございます。
遂にオレもレイジーさんの領域に突入(ンガググ)
相方にはいつも迷惑をかけていますがこんなオレに連れ添ってくれていて本当に感謝しています。
近々また飲みに行きましょう。

>jkさん
どもども、ありがとうございます。毎年年くうばかりでホント嫌になっちゃいますよねえ。
頑張ったら2,3年年齢戻してもいいとかなりませんかねえ。
でもそうなったとしてもオレ頑張るの無理だからやっぱり一緒なような気もしますが。
そういえばjkさんともネットでは長いですねえ。そのうち一緒に飲みましょうね〜。

>uribonさん
ありがとうございます。
まあ自分の日記、あんまりたいしたことは書いていないんですが、こうして読んでいただけるのはとても嬉しい事です。惰性で書いて足かけ8年だか9年だかなんですよ。よくやってるよなーと自分でも思います。uribonさんも健やかに楽しくお過ごしください。

azecchiazecchi 2012/09/11 08:34 おめでとうございます! いやいや来ましたね50代! 僕はもうすぐ40でやっぱり老けたなとか思うときもあるのですが、10年先にいるフモさんの姿に、いつも励まされるというか年令なんて関係ないなと勝手に救われています。という訳でこれからもよろしくお願いします。(長い!)

samejawsamejaw 2012/09/11 11:39 いつも楽しく読ませてもらってます。
お誕生日おめでとうございます。
50歳は知命と言って、天命を知る歳らしいので、何か新しい発見があると良いですね!

globalheadglobalhead 2012/09/11 22:12 >あぜっちさん
ありがとうございます!大台ですよ大台!なんかお得感の無い、むしろ不条理感ばかりひたひたとつのってゆく大台なんですが!
若ぶっているように思われてるのかもしれませんが、結構「こちとらジジイなんだからンなことわかんないんだよ!」とかジジイぶるほうが楽だったりします。
早くジジイらしいジジイになりたいものです。

>samejawさん
ありがとうございます〜。天命といいますか、若い頃はなんだかウダウダクヨクヨしている時期が長かったものですから、
やっとこの年になってあれこれ落ち着いてきて、もうちょっとぐらい人生楽しく生きてもいいじゃないか、なんて思えています。
そのためにはもうちょっと自由な時間が欲しいんですけどねー。

20120907(Fri)

[]メビウスのもうひとつの顔、ジャン・ジローによる痛快西部劇『ブルーベリー 黄金の銃弾と亡霊』 メビウスのもうひとつの顔、ジャン・ジローによる痛快西部劇『ブルーベリー 黄金の銃弾と亡霊』を含むブックマーク メビウスのもうひとつの顔、ジャン・ジローによる痛快西部劇『ブルーベリー 黄金の銃弾と亡霊』のブックマークコメント

■ブルーベリー 黄金の銃弾と亡霊 / ジャン=ミシェル・シャルリエ、ジャン・ジロー=メビウス

ブルーベリー [黄金の銃弾と亡霊]

メビウスが亡くなったとき、フランスでは二人の作家が亡くなった、と報道されたという。一人はメビウス、もう一人は、メビウスの本名でありもう一つのペンネームであるジャン・ジローである。もともとメビウスはジャン・ジローがSF・ファンタジー作品を描く時のペンネームだったというが、個人的にはこのメビウス名義の作品のほうが馴染みが深く、ジャン・ジロー作品には触れたことが無かった。そして今回、ジャン・ジロー名義で描かれた*1代表作『ブルーベリー』の日本語翻訳版が出ると聞き、早速手に取ってみたというわけだ。

『ブルーベリー』はジャン=ミシェル・シャルリエ原作、ジャン・ジロー作画で1963年から40年余り描き続けられてきた既刊全28巻にのぼる西部劇コミックだ。主人公は荒くれ者のアメリカ軍騎兵隊中尉マイク・スティーヴ・ドノヴァン、通称ブルーベリー。この彼が開拓時代のアメリカ西部を舞台に様々な冒険を繰り広げてゆく、というストーリーになっている。今回刊行された『ブルーベリー [黄金の銃弾と亡霊]』は28巻ある単行本の中から3巻分、「彷徨えるドイツ人の金鉱」と「黄金の銃弾と亡霊」という2作連続のストーリー、そして「アリゾナ・ラブ」というタイトルの作品が収録されている。

実は正直に言うと西部劇、というのは苦手なジャンルで、割と映画はよく観るほうのオレだが、西部劇映画で特にお気に入りというのは無かったりする。どうもその男臭さ、泥臭さ、小汚なさ、というのが苦手なようなのだ。ホドロフスキーの『エル・トポ』は大好きな映画だが、あれは西部劇と一括りにできる映画なのかどうかは分からない。そんなオレだったので、このジャン・ジローの西部劇コミックが面白く読めるかどうかが不安だったが、確かに冒頭は西部劇特有の荒っぽい展開に怖気づいたものの、読み進めるうちにその抜群のストーリーテリングにぐいぐい引き込まれてしまい、目を離せなくなっていった。

最初の2作、「彷徨えるドイツ人の金鉱」と「黄金の銃弾と亡霊」は大雑把に物語を説明するとこんな物語だ。西部のある場所に眠る膨大な金鉱の在りかを知っている、とうそぶく山師と、それを追う殺し屋、山師に恨みを持つ男たちの暴虐、彼らに正義の鉄拳を振るう保安官ブルーベリーと、金鉱に目が眩みブルーベリーを裏切る保安官補佐、などなどが虚虚実実の駆け引きを繰り広げ、金鉱の眠るという荒地へと我先に馬を走らせる。しかしそこは血に飢えたアパッチの闊歩する場所であり、人の侵入を許さぬ厳しい自然が行く手を阻む土地であり、さらに、金鉱があるという岩山には亡霊の恐ろしげな呻き声が響き渡るのだ。そんな場所でブルーベリーとならず者たちが死を掛けた戦いを繰り広げる、というのがこの物語なのだ。冒頭から巻き起こる危機また危機の連続に息をつく間もなく物語は進んでゆく。謎が謎を呼び、一歩先には常に死が待ち構え、先の読めないストーリーはページを繰るのさえもどかしくなる。その恐るべき内容の濃さは一級のエンターティメント作品だということが出来るだろう。そしてジャン・ジローの卓越したグラフィックは、ページの隙間から男たちの汗の饐えた臭いが漂い、もうもうたる砂埃が舞い込み、灼熱の太陽の殺人的な日差しが本を読む自分にまで差し込んでいるようにすら感じさせるリアリティに満ちているのだ。そしてなにしろ、登場する男たちが、みんないかがわしい、癖のある顔つきをしているのがいい。

収録3作目の「アリゾナ・ラブ」は、かつてブルーベリーが愛した女チワワ・パールの結婚式にブルーベリーが乱入し、彼女を略奪してゆくところから始まる。いけすかない大金持ちとの結婚など彼女には不本意だった筈に違いない、と踏んでいたブルーベリーであったが、なんとその彼女は金持ちと結婚して豊かな生活をすることを望んでいて、将来を牧童として過ごす夢を持つブルーベリーなんぞは論外だ、などと大喧嘩、挙句にブルーベリーに銃を向け、彼の持っていた大量の現ナマを奪い去って一人砂漠の彼方へと消えてゆくのだ。この手に負えないじゃじゃ馬娘を追って、ブルーベリーと、ブルーベリーへの復讐に狂った大金持ちとの追跡劇がはじまる、という仕組みだ。今作では、最初の2作には殆ど登場しなかった女性登場人物の存在が大きく花を添え、その乱暴で気性の荒いじゃじゃ馬ぶり、金には汚いがどこか憎めない性格が物語を非常に魅力的なものにしている。そしてなにより気付かされるのが、最初の2作と比べ、グラフィックの質が格段に洗練されてきているということだ。確かに「彷徨えるドイツ人の金鉱」と「黄金の銃弾と亡霊」は、凄まじい描き込み量と正確無比なデッサン力に唸らされるものがあったが、描線は黒々としてダイナミックなものであり、メビウスとして知っている描線とは少々かけ離れたものがあった。しかしこの「アリゾナ・ラブ」ではよく見知ったメビウスの描線を見ることができ、さらにSF・ファンタジー路線のグラフィックよりも情報力が多く、つまりはメビウスでありつつも実にリアルな描線なのだ。西部の町の描写力の凄まじさなどは思わず見入ってしまった。

そんなわけでジャン・ジローの『ブルーベリー 黄金の銃弾と亡霊』、メビウス好きにはえもいわれぬ格別の作品として楽しむことが出来る作品集となっていることは確実である。

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L'INCAL アンカル (ShoPro Books)

L'INCAL アンカル (ShoPro Books)

エデナの世界

エデナの世界

B砂漠の40日間

B砂漠の40日間

*1:正確には西部劇を描くときは「ジル」というペンネームだったらしい。まあメビウスではないもう一人のジャン・ジロー、みたいなニュアンスを汲み取っていただきたい

20120906(Thu)

[]砂塵に飲みこまれたドバイで巻き起こる凄惨な銃撃戦〜ゲーム『スペックオプス ザ・ライン』 砂塵に飲みこまれたドバイで巻き起こる凄惨な銃撃戦〜ゲーム『スペックオプス ザ・ライン』を含むブックマーク 砂塵に飲みこまれたドバイで巻き起こる凄惨な銃撃戦〜ゲーム『スペックオプス ザ・ライン』のブックマークコメント

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ドバイといえばアラブ首長国連邦の一つであり、未来的な高層建築が立ち並ぶ「中東の宝石」と呼ばれる国だ。映画好きな方なら『ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル』でトム・クルーズ演じる諜報員イーサン・ハントがドバイの高層ビルをよじ登る目も眩むようなクライミングを演じたことを思い出すだろう。ゲーム『スペックオプス ザ・ライン』はこのドバイが舞台となる。しかしなんと、このゲーム世界におけるドバイは、数ヶ月に及ぶ凄まじい砂嵐により街全体が砂漠に飲み込まれ、なにもかもが壊滅してしまった廃墟として描かれるのである。

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ゲームの主人公は米軍エリート特殊部隊デルタ・フォースの部隊長マーティン・ウォーカー大尉。彼は壊滅したドバイから謎の救助信号を受け、二人の仲間と共にドバイの廃墟へと向かう。しかし、そこで彼らが見たものは、数ヶ月前このドバイに救援活動に赴いたまま消息を絶った米軍第33部隊が街を支配し、調査に向かったCIA諜報員たちを拷問にかけ、さらに民間武装ゲリラと血みどろの銃撃戦を繰り広げる悪夢のような戦場だったのだ。主人公ウォーカー大尉らデルタ・フォースの面々は、その戦闘に巻き込まれながら、ここで何が起こり、進行しているのかを確かめる為、事件の核心へと傷だらけになりながら近付いて行く。

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ゲーム『スペックオプス ザ・ライン』はこのように、異様な舞台設定と特異なシナリオが目を引く三人称視点のミリタリー・アクションだ。まずなにより砂に飲まれ廃墟となったドバイの街の情景が凄まじい。砂丘の亀裂から下を見渡すとそこは実は砂に埋もれた高層ビルの屋上であり、亀裂の下には道路を挟んだビル群が渓谷のように連なっていたりする。この"砂"の存在はゲームにも大きな役割を果たしており、銃撃戦の最中に砂嵐が起こって視界がゼロになったり、また、砂に埋もれたビルの中で窓ガラスを撃つと割れた窓の外から津波のように砂が雪崩れ込んできたりして、これで敵を壊滅することも出来るのだ。

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ゲームは『GoW』タイプのカバリングとそれをしながらの移動を巧みに使うことにより敵に対し優位に戦闘を行うことのできるゲームスタイルをとっている。ただし、このゲームでは調整があまいのかカバリングが失敗することが多く、わけもわからず突っ立った状態になってしまい敵に蜂の巣にされるという事態がままある。主人公には二人の仲間が同行するが、この仲間に指示を出して敵を攻撃することも出来る。主人公にしろ敵にしろ若干挙動が軽く感じることがあり、このへんは先に発売された『ゴーストリコン フューチャーソルジャー』あたりと比べるとまだまだだと感じさせる。

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また、このゲームは18歳以上推奨のレーティングになっているほど残酷シーンが多く、血まみれだったり焼き払われたり街路灯から吊られたり腐り果てたりする死体があたりにゴロゴロしているのはいうまでもなく、拷問や処刑のシーンもふんだんに盛り込まれる。また、異国で叛乱を起こしそこで死の支配する王国を築く軍隊の存在、全てを覆う混沌とした様相などは、映画『地獄の黙示録』を髣髴させる。『スペックオプス ザ・ライン』はシステムや銃撃戦などのゲーム面こそありきたりで平凡といえないことも無いが、それよりもこういった陰惨で狂気に満ちた戦場を描くシナリオ重視のTPSゲームとして完成している。

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20120905(Wed)

[]可視化された不安〜映画『テイク・シェルター可視化された不安〜映画『テイク・シェルター』を含むブックマーク 可視化された不安〜映画『テイク・シェルター』のブックマークコメント

テイク・シェルター (監督:ジェフ・ニコルズ 2011年アメリカ映画)

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田舎町で妻と聾唖の娘を持ち幸せに暮らしていた筈のブルーカラーの男が、ある日突然大規模災害の幻覚やら夢やらを見たばっかりに神経に変調をきたし「シェルターだあ!俺はシェルターを掘るんだああ!」と異常行動を起こして周囲から顰蹙を買いまくるという鬱々サイコ・スリラーです。分析的に言うなら強迫神経症の物語だということが出来ると思いますが、しかしあながち他人事だと笑えない映画でもあります。

男を苛んでいる不安というのは、災害によって幸せな家庭がなし崩しに消滅してしまう、という不安なのですが、そういう不安というのは大なり小なり誰しもが抱えているものであり、この主人公はその不安に対して人よりも過剰に反応してしまった結果としてこの物語があるといえるでしょう。さらに言ってしまえば、この男の抱える自然災害への不安というのは、物語ではあえて強調してはいないけれども、実は単調な仕事に対する不満であったり、口五月蝿い妻への不満であったり、聾唖の娘を持つことの心の重み、責任感、その娘の将来への不安、などが、自然災害への不安という形の違ったものへすり返られて噴出したのではないのかということも考えられるんです。こういった、自身が気付かない、気付いていないある種の不安、押さえつけている不満などが、全然別の形の不安や不満や怒りとして現れる、というのは、意外とどんな人にでも垣間見られることであったりするんです。本当の問題は自身にあるにもかかわらず、それに気付かないまま、社会や世間へ過剰に不安を感じる、或いは、過剰に攻撃的になる、という人は、意外とどこにでもいると思うんです。

そしてこの映画は、キリスト教的な側面もあると思います。周囲の嘲笑をものともせず、シェルター造りに勤しむ男の姿は、神の啓示を受け箱舟を作り始めたノアの姿そのものです。ノアも周囲から「洪水なんてやってくるはずがない」と笑いものにされながらも、それをはねのけ箱舟を作り続け、そして結局神の啓示通りに災厄がやってきます。この男の行為は、そういったノアの似姿であると同時に、新約聖書で予言された、世界の終わりである黙示録が、いつかやってくる、という不安を、別の形をとって表現したものであるともいえます。

さらに、予言されているにも関わらず、なかなかやって来ないその黙示録の世界が、さっさと早く訪れればいいのに、という「黙示録への待望」という側面もこの映画にはあります。災厄は訪れないほうがいいに決まっている。しかしここまで準備したのだから、訪れてくれなければ困る。そういったアンビバレンツな予定調和への渇望が、この男にも、そしてこの映画を観るものの心にも次第に沸いてきます。この映画は、現代に生きることの不安、そして宗教的背景のもたらす不安、その二重の不安でもって形作られた作品であるということができ、そういった不安を、サイコ・スリラーという分かりやすい形で描いた、秀逸な作品であると思います。そしてそんな不安の中、人目もはばからず遮二無二家族を守ろうとする主人公の父親像が、胸を打つ物語でもあるのです。

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テイク・シェルター [Blu-ray]

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20120904(Tue)

[]『バトルシップ』はボンクラ海兵隊員が男を見せる洋上バトル映画だった! 『バトルシップ』はボンクラ海兵隊員が男を見せる洋上バトル映画だった!を含むブックマーク 『バトルシップ』はボンクラ海兵隊員が男を見せる洋上バトル映画だった!のブックマークコメント

■バトルシップ (監督:ピーター・バーグ 2011年アメリカ映画)

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宇宙からやってきたエイリアンシップが環太平洋合同演習中の連合艦隊と戦っちゃう、という映画『バトルシップ』です。最初予告編を観た時は「はるばる宇宙から来てなんでわざわざ海の上で戦うわけ?」と思えてしまいなんだか食指が動かず、劇場公開中は割と評判がよかったようなんですが「多分自分の好きそうなタイプのVFX映画で観りゃあきっと面白いんだろうけど観なくても多分面白そうなことは分かったからもういいや」とかひねくれた事言って観てなかったんですよね。でまあ今回ソフトが発売されたのでやっぱり観てみよう、と。ソフトは輸入盤Blu-rayを購入したんですよ。輸入盤Blu-ray、日本語吹き替えと字幕付いている上に国内盤より安いから買いたい方はお得ですよ。

でまあ映画のほうなんですが、最初に登場する主人公らしき若造のあまりのボンクラ振りに、「この映画大丈夫なんだろうか」という微妙な不安がふつふつと沸いてきて心許無かったですね。この主人公、あまりにボンクラなので兄貴に「軍隊入って鍛えなおせ!」とか言われて、それであっさり入隊して、それがいつの間にか大尉にまでなっちゃってるんですね。でも大尉になったくせにいまだにボンクラで、なんでこんなヤツが大尉になれるんだ?軍隊ナメとんのか?とそろそろオレの眉間の皺もかなり深くなりつつある頃エイリアンシップのお出ましですよ。結論から先に言っちゃえばエイリアンシップと戦うことで男を上げる主人公なんですが、じゃあいままでのグダグダのボンクラ振りはなんだったのかと、そう思えちゃうんですね。まあきっとやれば出来る子だったけど世の中なんてチョロイと思って本気見せてなかったんでしょうね。オレももうかな〜りいい歳になりますが、今ん所まだまだ本気は見せてないですね。オレの場合世の中チョロイどころか相当キツイんですが、ええ、まだまだ本気見せるわけには行かないんですよ。それは本気見せようとしたら本気どころか既に能力限界でなにひとつ手に負えないということがバレちゃうのが怖いからなんですね。だから周りには今ン所「いやまあオレが本気出したらこんなもんじゃないよ?まだ本気出してないだけだよ?」と言いくるめていますが、そのうちバレるのも時間の問題ですね。

いやそんな個人的なことなんてどうでもいいんですよ『バトルシップ』ですよ『バトルシップ』。なんだか最初は海の上で戦うだけ?行動範囲の狭い宇宙人?と思って観てたんですがスケバン刑事("刑事"と書いて"デカ"と読んでください)のヨーヨーの巨大化したようなヤツで街を襲ったり山の上に通信用の前哨基地設けたりして意外と宇宙人、マメにあちこちで侵略しているのが好印象でしたね。いや侵略宇宙人に好印象というのもナニですが。それとCGI大盤振る舞いした大味な戦闘がダダ漏れするだけなんだろ、とタカを括って観ていたら地球人連合艦隊は想像したよりずっと戦略的に戦闘を進めていたのが映画を面白くしていましたね。もともとはボードゲームが原作ということなんですが、単に海上バトルという設定だけをもってきたのではなくゲームのキモであった相手の行動を察知し予測するゲーム的な要素をきちんと映画の中に生かしているところが上手いなあ、と感心しました。ただやっぱり主人公のボンクラ振りがどうにも気に障るのでちょっと大っぴらに褒めたくない映画でもありましたけどね!

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バトルシップ Blu-ray & DVD (デジタルコピー付)

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chirigamichirigami 2012/09/04 12:21 主人公に限らず、登場人物がエイリアンも含めてみんなバカというのも面白かったです。
単なるバカ映画ならそれまでだったんですが、クライマックスのアナログジジイ大活躍にはかなり燃えましたね。

globalheadglobalhead 2012/09/04 12:27 もう映画観ている間中「おいおい」「あーあ…」と突っ込んだり呻いたりしてましたよ。
アナログジジイ登場のシーンはなんだか「アルマゲドン」を髣髴させてくれて笑ってしまいました。そもそもあの旧戦艦がちゃんと動くのが信じられないし砲弾その他はどこから調達してきたのか、謎が謎を呼びましたが、既に映画ここまで観ている時点でこれ以上突っ込むのはきっと野暮なんだ、と思うことにして楽しく観ていました。

chirigamichirigami 2012/09/04 12:39 (笑)確かにマイケルベイ風味も効いてましたね。
まあ頭カラッポの方が夢詰めこめるって誰かも歌ってましたし。

globalheadglobalhead 2012/09/04 12:43 この映画、CGI映像なんかよりもヴイ使った索敵のアイディアが物凄く面白くて、何故かこういう地味な描写が逆に面白さを上げた、という変な映画でしたよ。アンカー使った方向転換とかも出来るかどうかは別として面白かったなあ。

jkjk 2012/09/11 21:15 アマゾンのBDレビューで撮影に参加された海自(?)の方のこぼれ話がステキですね。  http://jump.cx/BK8tn
敵異星人が意外と平和的に仲間を奪還にくるとか生体への直接攻撃は基本的に避けるとか
けっこー紳士的だなぁ と

globalheadglobalhead 2012/09/11 22:24 読みましたよーなかなか面白いレビューでしたね。なにしろ映画では米軍と並んで日本の自衛隊が非常にクローズアップされていてなんだかこそばゆかったですね。
こんなにカッコよく描いていただいてどうもすいませんねェありがとうございますとか思いつつ、それに対する主人公のグダグダぶりときたらもう溜息がもれるほどでしたねえ。

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20120903(Mon)

[]おいおいちょっと待てよコケたとか言ってるけど『ジョン・カーター』結構面白い映画じゃないか おいおいちょっと待てよコケたとか言ってるけど『ジョン・カーター』結構面白い映画じゃないかを含むブックマーク おいおいちょっと待てよコケたとか言ってるけど『ジョン・カーター』結構面白い映画じゃないかのブックマークコメント

ジョン・カーター (監督:アンドリュー・スタントン 2012年アメリカ映画)

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19世紀アメリカ、かつて英雄とまで謳われながら今は兵役拒否の風来坊として生きる元騎兵隊員ジョン・カーターが、洞窟で遭遇した謎の男の持つ装置で火星へと瞬間移動させられ、その火星に住む種族の間で進行中の戦いに巻き込まれながら、次第に英雄としての力を発揮してゆく、というSFヒロイック・ファンタジーです。公開時は「史上稀に見る大コケ映画」みたいな報じられ方をされていましたが、実際観てみるとそんな風評なんて全然信じられないぐらい面白い、血湧き肉踊るSF活劇として観る事が出来ましたよ。

原作はSFファンタジー小説の始祖とも呼べる作家、エドガー・ライス・バロウズのもので、原作自体はなんと100年前に書かれているんですね。要するに100年前のSF小説なもんですから、科学考証云々よりも奇想天外な異世界描写とそこを舞台に繰り広げられる英雄的な冒険に力点が置かれた小説ということができるんですね。そんな原作を『ファインディング・ニモ』や『ウォーリー』という名作アニメを手掛けた監督アンドリュー・スタントンを配し、作品それ自体の完成度は申し分なかったにも関わらず、興行成績がいまひとつ振るわなかったのは、やはり原作の古さ、にあったのかもしれませんね。これは原作が古臭い内容である、という意味ではなく、古典としてあまりに敬愛されてきたばかりに、そのイメージがこれまで製作されてきたSF映画に引用されすぎて、今回満を持して製作されたこの映画自体は、逆に既視感ありすぎの新鮮味のないもののように印象付けられてしまった、ということなんだと思うんですよ。

というのは、これを書いている自分自身、『ジョン・カーター』を劇場で観なかったのも、その予告編から感じてしまう、今更感と新鮮味のなさからだったんですよね。更に言ってしまえば、そんなに有名なバロウズの原作を、SF小説好きの自分はきちんと読んだことがないんですね。自分がSF小説を読み始めた中学生頃は、バロウズのファンも周りにいましたが、自分としてはもっと新しい、そしてSFファンタジーではなくきちんとサイエンス・フィクションしたSF作品を読みたかった、というのがあったんですね。つまり3、40年前の自分にとっても、バロウズはなんだか古臭い作家だ、という認識でしかなかったんですよ。

しかし実際、今回製作された映画を観てみると、そんな「古臭い原作の映画」ということを微塵も感じさせなかったんですね。それはなぜかと言うと、やはり現代の先進的なVFX映像で撮られているということと、やはり現代的なシナリオとしてブラッシュアップされていること(その分原作とは結構かけ離れているのだそうです)、さらに監督アンドリュー・スタントンのこれまで名作を送り出してきたその手腕にあるということが出来ると思うんですね。確かに内容それ自体は王道とも言えるスペース・オペラ、SFファンタジーの物語であり、やはりとりたてて新鮮なものである、とは言い難いにしろ、逆にSF活劇映画としては申し分の無い、安心して観られる安定感を持っているんですね。

スペース・オペラというジャンルは、かつては古色蒼然としたジャンルのものであるとして蔑視されていた時期があったとはいえ、それをあの『スター・ウォーズ』が完璧に払拭し、その活劇としての面白さを万人に十二分に知らしめたという経緯があり、ある意味『スター・ウォーズ』のオリジンの一つとして数え上げていいバロウズ作品原作である『ジョン・カーター』も、その賞賛の栄をかちえてよかった筈なんでよね。ただし、ここで『スター・ウォーズ』と『ジョン・カーター』を比べてみて、『ジョン・カーター』に何が足りなかったのか、と考えてみると、いわゆるマニアックなSF心をくすぐる何か、オタク心をそそる何か、ユース・カルチャーに関心をもたれる何か、にちょいと欠けていた、ということも言えるかもしれません。勿論気軽に楽しめるビッグバジェットムービーとしての面白さは充分あるので、それだけで興行が振るわなかったというのは考え難いのですが、意外とそういう要因なのかもしれませんね(なおアメリカでは振るわなかったそうですが世界的に見るとヒットしている国もあり、現在では「大赤字映画」というほどのものではなくなっているという話です)。

ところで、『ジョン・カーター』の原作であるバロウズの『火星シリーズ』、実は『ジョン・カーター』以前にも映画化されているんですよね。これ、日本では『アバター・オブ・マーズ』っていう『アバター』のバッタもん以外何者も感じさせないタイトルのDVDスルー作品で、アメリカ本国でもDVDスルーされた低予算映画なんですが、実は自分も観たことがあるんですよ。内容はまあ、予算通りのショボショボのものだったんですが、特筆すべきなのはですね、あの伝説のポルノ女優、トレイシー・ローズが、火星のプリンセス役で堂々と出演なさっている、ということなんですね!あ、ちなみにエロ映画ではありません。興味を持たれた方は是非ドウゾ。

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20120902(Sun)

[]『コクリコ坂から』は『おもひでぽろぽろ』が『耳をすませば』したみたいなアニメだった 『コクリコ坂から』は『おもひでぽろぽろ』が『耳をすませば』したみたいなアニメだったを含むブックマーク 『コクリコ坂から』は『おもひでぽろぽろ』が『耳をすませば』したみたいなアニメだったのブックマークコメント

■コクリコ坂から (監督:宮崎吾朗 2011年日本映画)

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60年代の日本、横浜を舞台に高校生少年少女が青春している様子を描いたジブリ・アニメです。いやなにこの大雑把なあらすじ紹介。非常に清純かつ清廉なドラマで、退屈しなかったし端整によく作り上げられた、文部科学省推薦映画になってもおかしくない、実に真っ当なアニメだとは思うんですが、なんかこう観ていてお尻のあたりがムズムズするお話でもありましたね。ジブリ・ブランドのアニメじゃなきゃこういった生真面目な文芸作品観たかどうかわかんないですけどね。というか高校生の時期なんざとっくに遠い昔の記憶になってしまったジジイのオレにとって、この『コクリコ坂から』に限らず高校生少年少女が主人公の物語ってなんかこうもうどうでもいいんだよなあとか思いながら観てしまうんです。同級生同士のなんやかやとか学校のありかたに対するあれやこれやとか初恋のドキドキ感とか、なんかこうそういうこともあったなあ、とか思いつつ、もうそういった初々しさとか若さゆえの心情とか行動とかにリアリティを感じない、というか、学校卒業して社会に出てからのしょうもない毎日のほうがはるかにリアルで、高校時代って夢みたいなもんだったナァ、なんて遠い世界の出来事見ているみたいな気分になってしまうんです。もうすっかり小汚いジジイなんですよええ。映画を観て漠然と思ったのはなんで今60年代の高度成長期の日本を描くんだろうなあ、ということですね。みんな上を向いて歩いてた時代だから、この時代みたいに元気出して生きましょうよ、ということなんでしょうか。そんなこと言われてもなあ。この時代のリアリティを、現代のリアリティにどう繋げるか、というのがこういったちょっと前の時代を舞台にしたドラマを作るうえでのポイントだと思うんですが、結局「懐かしいよねえ」「こういう時代もあったよねえ」で終わっちゃうのは、ドラマ作りに対する問題意識がちょい希薄だったのかもしれないんじゃないですかね。

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[]『タイタンの逆襲』は大怪獣映画だったッ! 『タイタンの逆襲』は大怪獣映画だったッ!を含むブックマーク 『タイタンの逆襲』は大怪獣映画だったッ!のブックマークコメント

タイタンの逆襲 (監督:ジョナサン・リーベスマン 2012年アメリカ映画)

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ギリシャ神話の神々がバトルを繰り広げる映画『タイタンの戦い』の続編『タイタンの逆襲』であります。前作を観た時は「なんかヌルくてタルい映画だなあ」と思ってご機嫌斜めだったオレでありましたが、それに懲りず全く期待もせずにこの続編も観てしまったという訳なんですね。そうしたらこれが結構面白い。考えてみれば前作というのはレイ・ハリーハウゼンが1981年に製作した『タイタンの戦い』のリメイク作品で、VFXこそお金の掛かったCGIでアップコンバートされておりましたがオリジナルに敬意を表したのかストーリーの流れ等もきちんと踏襲してしまい、その分オリジナルのなんだか素朴で暢気な雰囲気まで再現された分緊張感の欠ける映画になってしまったのではないかと、まあ今適当に思いついたのですがあながちそういう理由でオレ的には面白くなかったのではないのかと思ったわけなのですね。でまあ今回は続編とはいえ完全オリジナルですから、リメイク作品の足枷が無い分好き勝手に作っている、さらに観ているオレが全然期待していない、そういった理由が加味されて意外と面白く観られたのではないのか、とまあ斯様に分析されるわけですね。いやまあ分析って言うほどたいしたこと考えちゃいませんが。で、今回何が好きだったのかというとモンスターが結構暴れまくってくれたからではないでしょうか。実際そんな数出ているわけではなんですが、やっぱりクライマックスのねえ、復活したクロノスの馬鹿デカさと全身からビチャンビチャンと溶岩を撒き散らしながらあたりのものを盛大に燃やしまくる攻撃の凶悪さが観ていて盛り上がりまくったわけなんですね。もう大怪獣してましたね!いろんなもの壊しまくり焼き尽くしまくってましたね!いやあクロノスサイコーだったわ!そういえば物語の事に全然触れていませんが実の所全然印象に残っていません。でもいいんですクロノスデカかったから。

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20120901(Sat)

[]ノルウェーの森は村上春樹じゃなくてトロールの棲み家だった!?〜映画『トロール・ハンターノルウェーの森は村上春樹じゃなくてトロールの棲み家だった!?〜映画『トロール・ハンター』を含むブックマーク ノルウェーの森は村上春樹じゃなくてトロールの棲み家だった!?〜映画『トロール・ハンター』のブックマークコメント

トロール・ハンター (監督:アンドレ・オヴレダル 2010年ノルウェー映画)

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伝説の妖精トロールは実在していたッ!?しかし政府によってその事実は隠蔽され、トロール被害を防ぐ為、政府公認のトロール・ハンターが隠密裏に行動していた。ノルウェーの森を撮影する課題製作中の学生たちは、たまたまそのトロール・ハンターに遭遇し、彼と行動を共にしながらトロールたちの生態を追うことになるが、逆におっかないトロールたちに追い掛け回される羽目に!?というモキュメンタリー・ムービーです。モキュメンタリーってぐらいだからPOVでそれっぽく撮ってるんですが、どことなくモキュメンタリー設定やトロールの設定が破綻しているところが微笑ましい映画となっております。だいたいいくら森の中だからって、あんなでっかいバケモノが大昔から歩き回ってたら大騒ぎになるはずだろ!?とは思うんですが、そういう細かいことを気にしてはいけません。出現するトロールはいろんな種類がいて、それぞれに生態が異なるトロールをCGできちんと再現しているところなんかは実に丁寧なんですよね。で、このトロール、図体は熊みたいに大きくて毛むくじゃらで、小山ほどの大きさのトロールもいたりするんですが、なんか大きなのがのっそのっそ現れてうわあコリャ怖い、と思わせておいて、その顔つきはと見ると鼻が妙にデカイなんだかマヌケ面で、そのギャップに見ていて思わずずっこけてしまう、という部分がまた楽しい映画でもあります。きっとこの映画、ドキュメンタリーっぽく真面目臭く作っておいて、その実トロールのマヌケ顔で笑わせる、という、実はお笑い映画なのかもしれないです。取材の学生たちはなんだか長閑でトロールに負けずマヌケだし(仲間死んだら普通警察届けるだろ…)、トロール・ハンターはというと渋い顔してますが、お馬鹿ドキュメンタリー『プロジェクト・グリズリー』(拙レビューはこちら)みたいなアーマー着込んでトロールに立ち向かうところなんぞはどうにも馬鹿馬鹿しいし、やっぱりこれギャグちゃうんかなあ。ただなにしろ全体的に手作り感覚な部分が好印象で、変り種特撮怪獣映画と思って観るといいかもしれません。

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プロジェクト・グリズリー [DVD]

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[]『伝説のロックスター再生計画!』はヌメヌメロックスターにおデブ営業が振り回されるお話だった! 『伝説のロックスター再生計画!』はヌメヌメロックスターにおデブ営業が振り回されるお話だった!を含むブックマーク 『伝説のロックスター再生計画!』はヌメヌメロックスターにおデブ営業が振り回されるお話だった!のブックマークコメント

■伝説のロックスター再生計画! (監督:ニコラス・ストーラー 2010年アメリカ映画)

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落ち目のロックスターを返り咲かせるため、レコード会社の営業マンが七転八倒の大騒ぎを繰り広げるというコメディです。実はこれ、『寝取られ男のラブ♂バカンス』に登場したロック・スターを主人公にしたスピンオフ作品なんですね。『寝取られ男のラブ♂バカンス』では奇行を繰り返す悪趣味な変態野郎という奇矯なだけのロック・スターの主人公でしたが、この映画では変態的なのは相変わらずであるとはいえ、前作よりはずっと大人しく、また、内省的な性格の人物として描かれているんですね。まあ今回は主役はってるんで、ずーっと変態ばっかり繰り返していたら単に頭のイカレただけのヒト、ということになってしまいますから、若干性格を掘り下げてみました、ということなんでしょう。ただ、前作を知っていると、あのメチャクチャな性格でずーっと押し通してもらいたかった、という気もちょっとします。しかし内省的な部分を生かしたせいで、逆に意外としんみりさせる部分もあるロード・ムービーとして仕上がっているんですね。このイカレポンチのロック・スター、アルダス・スノーをラッセル・ブランドが演じますが、独特のヌメヌメ感が実に愉快であり、しかもコンサート・シーンやPV映像なんかでは本当のロック・スターに負けない雰囲気を出していて、とても役にはまってるんですね。このロックスターをなんとかコンサート会場まで連れてゆく使命を負ったもう一人の主人公、おデブでのほほんしたキャラのレコード会社営業をコメディ俳優ジョナ・ヒルが演じていて、この彼がお腹の肉をブルブルいわせながら右往左往する様がまた笑わせてくれます。このジョナ・ヒルは『40歳の童貞男』や『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』でもいい味出している素敵なデブキャラですね。この二人がジタバタドタバタと72時間の旅を続けながら、最後に見失っていた自分を見つける、という部分に落とし所を見つける脚本もまたいいですね。レンタルで観たんですがちょっとDVD買いたくなってしまいました。

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伝説のロックスター再生計画! [DVD]

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