RICOH CAPLIO GX100

CAPLIO GX100

 毎週木曜日は「昭和銀塩散歩」を書いてきたが、今週は資料が揃わず一回お休み。来週から再開します。
 で、今回はこの日記で大活躍のリコーのデジカメ、カプリオGX100について、その使い勝手などの感想を述べてみたい。要するにカメラネタです(以下文中の“50mm”などの標記はすべて35mm版換算)。

圧倒的な広角レンズ好き

「昭和銀塩散歩」で毎回使用しているレンズを見ていただければお気づきだと思うが、オレは圧倒的に広角レンズが好きだ*1写真をかじり始めたころはスポーツを撮りたいと思い、300mmなど望遠レンズ主体で揃えたが、当時のカメラはオートフォーカスではなく、もちろん手ブレ補正なんてついていない。手持ちで撮っても三脚に立ててもブレブレでボケボケの写真を量産してしまう。さらにレンズ自体がデカいので持ち運びも面倒だ。それで嫌気が差してしばらくカメラから遠ざかってしまった。
 その後再燃したカメラ熱はライカに飛び火。バルナック型を手に入れたとたん広角熱*2にうなされてしまい「28mm? 狭い狭い。24mm? まだまだ。20mm? まぁまぁかな」という始末。シグマの14mmを手に入れるに及んで「強烈に歪んでなければつまらん」と、少々写真の本道から外れたような思考回路になってしまった。
 最近はさすがに広角ならなんでもいい! というわけではないが、それでも広いレンズ好きという性癖は変わっていない。だからAPS-Cサイズのデジタル一眼レフも所有しているが、レンズラインナップが広角側に弱いので、ついフィルムのカメラを持ち出してしまうのだ。だってデジ1眼に20mmを装着すると30mmになっちゃうんだもん*3

最初に狙ったのはGRデジタル

 しかし外出のたびに重い金属製のフィルムカメラを持って歩くのもしんどい。そこでコンパクトデジカメ(コンデジ)も使ってみようと思い始めた。800万画素程度のコンデジでも、充分きれいな写真は撮れると雑誌には書いてある。そこで目をつけたのがリコーのGRデジタルというカメラ。これはフィルム時代に一時代を築いたGRのデジカメ版で、28mm単焦点レンズを装着した高級コンパクト。しかしさすがに高級と銘打つだけあって8万円前後とお高い*4。うーむ、と躊躇していたらGRの売り場の隣にひっそりとあったのが、同じリコーのカプリオGX8という機種。見た目がちょっとGRに似ていて、28〜85mmのズームレンズがついている。ワイドコンバージョンレンズ(ワイコン)をつければ22mmにまで広がる。しかも中古で出回っていて2〜3万円くらいだ。これだっ! と2万円ちょいで中古購入して、それからはほとんど外出時には持って歩いた。銀塩カメラを持ってても、GX8も一緒に持っていったりね。
 そんなわけでGX8での撮影を楽しんでいたのだが、さすがに2年前に設計されたカメラなので、最近のものに比べると使い勝手が悪いことに気がついた(デジカメは1年で新製品が出ちゃうからねぇ……)。撮影モードの切り替えも面倒だし、液晶画面も小さい。それでもGX100が出なければ我慢して使っていたと思う。

新品同様の中古に出合った

 今年の春、いつものように何気なく新宿ヨドバシカメラをウロウロしていたら、GRデジタルの売り場の横に「4月発売予定」と書いたPOPが飾ってあった。なんじゃらほいと見てみるとGXシリーズの新機種が発売されるとのこと。これが見た目はGRデジタルにそっくりで、24〜72mmのズームレンズ搭載。ワイコンをつければ19mmまで広がる。さらに目を引くのは取り外し可能な液晶ビューファインダーが同梱されていること。そして画素数も1000万以上にアップ。こいつはまいった、一目ぼれ、という感じで、オレの物欲は猛烈に刺激された。しかしワイコンレンズも同時購入すると9〜10万円近くしちゃう。そりゃ無理。これ以上カメラ増やしてどうするんだ! という内なる声も聞こえてきて、断念した。

 ところが数日後、新宿のとある中古屋をのぞいていたら、新品同様、ほとんど未使用のGX100が6万円台後半で売られていた。え!? だってこれ先週新発売されたばっかりじゃん!? と驚きながらショーケースから出してもらった時点で、購入はほぼ決定。不具合などがないことを確認してから、クレジットカードで買っちゃった。

なんといってもワイド性能

 と、ここまではどーでもいい話。読み捨ててください。で、こっから実際に使ってみて感じたことを書いてみよう。
 やはりズームが24mmからというのが嬉しい。ここまで広いと、被写体にぐいっと寄ってビローンってな感じの写真が撮れる。あるいは空、雲、風景などを撮っても絵に広がりが出る。さらにマクロモードにすると被写体に最大レンズ前1cmまで寄れるので、不思議な雰囲気の絵も撮れる。これが面白い。さらにワイコンレンズをつけると19mm相当の画角になるので、さらにビローンで不思議な写真が撮れるのだ。
 また広角ならではの性能として、被写界深度が深いのでピントが合いやすい、というのがある。天気が良い日の外光なら、かなり絞っても大丈夫なので、ほとんどパンフォーカス*5となる。街頭スナップには最適の性能だ。
  
 一方望遠側は72mmまでで、これははっきりいってオマケというか、とりあえずついているだけという気がする。もちろんこのカメラでポートレートを撮ってもいいんだけど、元々CCDのサイズもちっちゃいし、望遠特有のボケも期待できない。オレは寄ると逃げちゃう野良ネコ撮りのときくらいしか使わないなぁ。
 でもズームがあるのは便利だ。料理の写真を撮るとき、温かいものに寄り過ぎるとレンズが曇るので、50mm程度の焦点距離でやや離して撮影する。
 

ビューファインダーもオマケっぽい

 もうひとつの目玉の着脱式ビューファインダー(EVF)だが、これもどーでしょ? って感じ。つけると上部がボコっと出っ張ってしまい、カバンの中などに入れるときもこのでっぱりが引っかかってジャマ。じゃ、取り外せるのだから別にして運べばいいじゃん、という意見もあろう。確かにこのEVF専用の革ケースも付属しており、そういう使い方をメーカーも想定しているのだろうが、考えても見てください。カバンからさっと取り出しさっと撮る、というときに革ケースからゴソゴソとファンダーをだしておもむろに取り付けて……なんて面倒なことしたくないです。
 このEVFはチルト機構がついていて、雑誌のインプレッション記事を読むと、2眼レフみたいに上からのぞくスタイルで撮影できるので、被写体に威圧感を与えなくていい、なんてーことが書いてある。ま、そう思うんならそうなんだろうけど、もともと小さなカメラだから威圧感なんて最初からないと思うなぁ、オレは。これはマクロ撮影のときにアングルファインダー的に使うのが一番便利なんじゃないかと思う。しかしこれにも問題があって、チルトすると内蔵ストロボが使えなくなる。しかもEVFを装着するとホットシューもふさがれちゃうので外部ストロボも使用不可だ。光量が足りなくなりがちなマクロでストロボが使えなくなっちゃうのですよ。結局背面の液晶を見て撮影することのほうが多いね、実際は。

マクロは面白い

 そのマクロモードだが、なにしろ最高でレンズ前1cmまで寄れるのだから、これは1眼レフにはできない芸当だ*6。そして結構ありがたいなと思ったのが、内蔵ストロボのソフト発光モード。そのままだとちょっとオーバー気味になるが、それでもフル発光よりは穏やかな光なので、露出補正をちょっといじってやればきれいなストロボマクロ写真が撮れる。超ワイドで超マクロな写真はこのカメラならでは。外食したときも、これがあればいい感じの料理写真が撮れます。
 

手ブレ補正が効いてるのかどうか不安

 レンズはリコーの定評あるものだから問題はない。逆光にもかなり強い。オートフォーカスの性能もまぁまぁだと思う。オレは主にスポットAFで使っている*7。ピントがバチっとあった写真をPC画面のピクセル等倍で見ると、気持ちのいいシャープさを楽しめる。
 ISO感度は1600まであるが、雑誌にも書いてあるように800が限度だと思う。ISOのオート設定にHIというモードがあり、暗いとき自動で上がる感度の上限を自分で設定できるのだが、オレは800にしている。それでも暗くてシャッタースピードが遅くなってしまうときに手ブレ補正があると安心だ。ところがGX100の手ブレ補正、どの程度効いているのかがちょっと不安。PENTAXK10Dなどはカンドー的に効くのだが、どうもそれほどのものではないみたい。まぁ広角側が主体なのでそれほど気にならないが、1/15とか1/8でビシっと止まる写真を撮るには、相当脇を締めていかないとダメだね。

楽しいのはフォーマットの変化

 このカメラの一番楽しいのは、コンデジ標準の4:3だけではなく、35mmフィルムと同比率の3:2、さらに1:1(つまり正方形)の3種のサイズ(フォーマット)が選べるところ。特に正方形はローライフレックスハッセルブラッドな写真が撮れるので面白いったらありゃしない。そしてそれをマイセッティングとして登録しておけばサイズの変換も簡単。オレはMY-1に3:2、MY-2に正方形を登録している。さらにどちらも絞り優先オートにしている。絞り値もこまめに変えられて、GX8とは大違い。またマニュアルの使い勝手もデジ1眼ライクな前後のダイヤルで調整する方式。この辺は自分でいろいろいじりたい向きには嬉しい機能だろう。
  

ダメダメなところもある

 と、いいことずくめのGX100だけど、最悪なのはレンズバリアがないこと。最近のコンデジのほとんどは電源を切ってレンズがボディ内に沈胴すると同時にレンズ前面にフタが閉まる。これでレンズキャップがいらなくなるわけだが、GX100はその機能がない。しかたがないからマメにフタを閉めるしかないのだが、ハメにくいし、なくしそうで怖い。ヒモでボディにつれば紛失の恐れはなくなるが、これがまたブラブラしてジャマだしワイコンをつけたときはまったくの無用の長物となってしまう。そう、オレみたいにワイコンをつけたりはずしたりを頻繁に行なう人間にとって、これは致命的とも言える面倒臭さだ。電源を入れてからの起動時間もそれほど長いとは思わないが、うっかりフタをしたまま電源を入れるとウンウンうなって「レンズキャップをはずしてください」というメッセージが出る。とにかくフタの問題だけはなんとかして欲しい。
 あと細かいことだが、ストラップ。前モデルのGX8同様両吊りができるのはいいのだが、純正の専用ストラップが発売されていない。リコーはGRデジタル用のもので兼用させている。8万円ほどする高級コンパクトなのにストラップに違う機種のロゴが入っているのはシャクだ。GX8用のものは、メーカのカタログにはダメと描いてあるが、ヒモが太くて入りにくいがなんとか使える……あとはマップカメラで販売しているアルチザン&アーティスト製の革製ストラップを使うしかないが、これが5800円と高いんだよな。まだ買ってません。

 とはいえ、購入から約2ヶ月、家を出るときにこのカメラを持たないことはないくらい毎日使っている。もうすでに角を当てて傷をつけてしまったが、順調に動いているのでそれも勲章だ、くらいに思って気にせず撮りまくっている。でもレンズバリアのついた後継モデルが出たら、すぐ浮気するだろうな(笑)。バッテリー、EVF、ワイコンなどの互換性は保ってね、お願い、リコーさん!

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RICOH Caplio (キャプリオ) GX100 VF KIT

RICOH Caplio (キャプリオ) GX100 VF KIT


文中望遠側を75mmと書きましたが72mmの間違いでした。訂正しました。

*1:人間の視野(画角)に近いとされるのが焦点距離50mm前後のレンズで、これを標準レンズと呼ぶ。それより大きな焦点距離のものは、画角は狭くなるが遠くのものを引き寄せて撮ることができる望遠レンズ、小さな(短い)焦点距離のものは人間の視野よりずっと広い範囲が写せる広角レンズである。広角レンズは広ければ広いほど画面が歪む傾向にあり、極端なのは魚眼レンズだ

*2:しかしライカの広角レンズは値段を聞いたら身体が悪くなるほどの高値なのでフォクトレンダーでガマン……ってかいいですよ、カラスコパー21mm

*3:CCDなどの撮像素子がフィルムのサイズより小さいので、同じレンズをつけても約1.5倍の画角になってしまうのだ

*4:最近は5万円台にまで下がってきた

*5:画面全部にピントが合う状態

*6:専用レンズや接写リングを使えば可能だが

*7:マルチAFだと狙ったところでピントが合わないことが多いので