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memorandum † 樋口ヒロユキ

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2013-05-29 篠山紀信さんにもネガごと捨ててもらうとの議員発言

児童ポルノ禁止法改定の真の目的は何か?

単純所持禁止、マンガ・アニメ「調査研究」への懸念(ITmedia ニュース) - Y!ニュース

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130527-00000092-zdn_n-sci

「2009年の法務委員会では「篠山紀信さんにもネガごと捨ててもらう」との議員による発言があった」


 児童ポルノ禁止法が成立しそうだ、といえば、ふつうの人は「それは良かった、そんなけしからんものは取り締まった方が良い」と思うだろう。けれどもこの法律が通ると、篠山紀信さんが撮った宮沢りえさんのヌード写真集『サンタフェ』も、誰もが一部残らず破棄しなくてはならなくなる。おそらくは日本人の誰もが愛したあの素晴らしい写真集を持っているだけで有罪になってしまうからだ。実際2009年の法務委員会では「篠山紀信さんにもネガごと捨ててもらう」との議員による発言があったそうだ。一体何という法律だろう。


 この法律が通ったら私の場合、フランス写真家イリナ・イヨネスコが撮った、彼女の娘さんのヌード写真集は廃棄しないといけないだろう。あと、沢渡朔さんの撮った写真集『少女アリス』。いずれも愛着の深い本だけれど、仕方がない。ふつうの法律は過去にさかのぼって適用されることはない。ところがこの法律の場合、ただ持っているだけで法に触れることになる。しかも単に廃棄するのでなく、シュレッダーにかけるか焼き捨てるかしなくてはいけない。そのままゴミなどに出すと「配布の幇助」になるからだそうだ。文字通りの焚書であって、何という時代だろうかと思う。


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 この法律では児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、疑似児童ポルノ)についても、施行後3年をめどに調査研究することになっている。回りくどい言い方だが、3年後には写真だけでなく、マンガやアニメも不可にするつもりなのは丸見えだ。マンガだと原稿も、アニメだとセル画も燃やせという話になる。恐ろしいのは「疑似児童ポルノ」という言葉で、こんな言葉はこれまで聞いたこともない。取り締まる側の恣意次第で、その気になれば何でもここに入れてしまえる。四谷シモンさんの球体関節人形も、会田誠さんのスクール水着の油彩画も焼却せよ、となるかもしれない。


 もっと不安なのはその先だ。いまは児童ポルノが標的になっているだけだ、と思うかもしれない。だが、その次にはエロティックな表現全般が、次には残酷な表現が、さらには「不快な表現」というだけでも取り締まられるかもしれない。実際、戦前には中原淳一の絵が「病的」といわれて発禁になった。いや、戦前の方がまだマシかもしれない。さしもの軍部も「中原淳一の絵を持っているだけで逮捕」などという暴挙には出なかった。いまの児童ポルノ法案はそれ以上のことをやろうとしているのだ。


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 人によっては心配し過ぎだ、と思う人もあるかもしれない。けれども2010年以降の我が国では、異様なくらい表現の自由が奪われている。たとえばここ数年、午前1時以降にクラブで踊っていると逮捕されるという、なんともシュールな事態が常態化している。そのいっぽうで「韓国人を殺せ」などといった殺人教唆を公然と行う、ヘイトスピーチの常習犯が野放しなのだ。この国はもう相当おかしなところに突入している、と思う。2010年以降のわずか3年で、だ。


 児童ポルノ法の話に戻ると、この法律はこれまで民主党時代に何度も国会に出されそうになって、その都度いろんな人たちが頑張って法案提出を押しとどめてきた。ところが今回は自民党が圧勝して、どうやら成立しそうな気配が強い。ところが今回が一番マズい状況にあるのに、どうもいまひとつ反対の気運が盛り上がらない。おそらく「今回はもうダメだろう」という、あきらめムードが漂ってるからだろう。民主党時代に比べると反対の声は本当に少ない。本当にこれで良いのだろうか。「人が本を焼き捨てなければいけない」というこの異常な法律を成立させても良いのだろうか。


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 この件、ツイートしてくださるだけでも嬉しいし、何か一言周囲につぶやいてくれるだけでもいい。いま表現が危険な状況にあるんだということを、周りの誰かにどんな方法でも良いので伝えて欲しい。残された時間はそれほど多くはない。私からのお願いです。