法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「続編映画ベストテン」と「話数単位で選ぶ、2010年TVアニメ10選」が集計された

続編映画ベストテン〜アニメ限定〜 - 法華狼の日記
企画者のwashburn1975氏が集計。7位以外は納得できる順位だが、7位は未見なので何ともいえない。
2010-12-20
面白かったのが監督賞。押井守監督が2位につけている。娯楽アニメ作品として評価するなら別だが、あえて「映画」として評しようとすると2作目で自分色を出す作風が有利となったか。
2010-12-22
1点しか入れられなかった映画はメジャーからマイナーまで。『トロン:レガシー』は投票時期がずれていればもっと票を集めたかもしれない。私が選んだ『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』はメジャーでかなりの傑作ミュージカルアニメ映画だが、いかんせんソフト化が……
2010-12-23



話数単位で選ぶ、2010年TVアニメ10 - 法華狼の日記
「話数単位で選ぶ、2010年TVアニメ10選」は新米小僧氏が独自に集計。
「話数単位で選ぶ、2010年TVアニメ10選」投票集計: 新米小僧の見習日記
もともと2010年の隠れた逸品をひろいあげる企画だったため集計の予定はなく、集計しやすくする工夫がなかった企画を、きちんと目配りしながら集計したこと自体が素晴らしい。個人的にも、追記を反映してもらってもうしわけないと思っている。


予想外に結果も興味深いものになっている。
3位の『探偵オペラ ミルキィホームズ』第4話「バリツの秘密」は、2010年終盤の話題をさらった作品の、注目を最もあびた回として選ばれて当然。しかし全編通して見所があって票がわれ、伸び悩んだか。この話が集めた5票が一つの基準となろうか。
2位に『ストライクウィッチーズ2』第6話「空より高く」が選ばれることは理解できる。手順をオーソドックスに踏まえていっただけに、主人公の見せ場が分散してしまった作品において、番外編的でいて演出の密度が高い回が選ばれることは不思議ではない。
しかし1位に『ヨスガノソラ』第1話「ハルカナキオク」が選ばれるアニメ感想ブログ界隈の空気が読めない。私は作品を見ていないので各ブログ評から憶測するしかないが……後の展開にいたる要素を複雑かつ濃密に内包していること。そして2010年を堂々と代表する作品とされない立場にありながら、いやだからこそ言及しておきたいという絶妙なポジションに収まった、ということなのだろうか。


他、少数票の作品を見ていくと、安定して完成度が高く長丁場な『ハートキャッチプリキュア!』や、2クールで人気は高いものの突出した回がない『けいおん!!』、話題作だが2クールの前後半で方向性が異なっていた『とある科学の超電磁砲』といった作品で票が割れてしまった様子。
1票しか入っていない作品も興味深い。各話監督制をとった『迷い猫オーバーラン!』が見事に票がわれ、合計すると3位と同じ5票。『戦う司書』も4票を集めた。
作品自体が1票しか入っていない作品も『アイアンマン』のように視聴形態が限られた地味な作品から、『アイ!マイ!まいん!』のように話題を集めながら放送枠が特殊すぎて選ばれにくかったものまで。


個人的に意外だったのが、『デジモンクロスウォーズ』第11話「クロスハート、燃える!」が2票を集めたこと。まさか私以外に選ぶ人がいるとはと思ったが、この作品から1話選ぶとすれば他に考えにくいことも確かか。

「芸術家は独裁者の無理解をおそれるべきではない。独裁者が一人の芸術家であることをおそれるべきである」

青年期の絵画を公式サイトに載せている*1石原都知事がプチヒトラーならば、街を自分色の絵画で埋めつくそうとしている阿久根市竹原市長はプチプチヒトラーといったところか。
デイリーポータルZ:日本一のシャッター街・阿久根
http://d.hatena.ne.jp/akune_genjo/
前者が慎重に毒を感じさせないよう撮影していることに対し、後者は著作権的に微妙な対象もおさめて背後関係も記述する、その対比がまた味わい深い。
くわえて、前者がわかりやすいジョーク宣伝として機能しているシャッターアートばかり紹介している一方、後者は巨大な壁画を紹介しており、隙間なく小ネタを入れる空間恐怖症ぶりにアウトサイダーアートを感じさせる。


ただ、これはこれでコンテンポラリーアートというか、良くも悪くも異世界が一つの表現として成り立っているという感じはある。醜悪という印象もまた、表現の価値を示す指標だ。個人的にもトリックアートは好きだ。
もちろん、同じ“ART”といっても、作品単体で見れば「芸術」というより「工芸」と考えるべきだろう。独裁者の指示と税金で蜃気楼のように広がっていく平面的なユートピア、それを立体にはりつけられた表層のディストピアとして写真が切り取って、初めて「芸術」に昇華された。


念のため、戦争映画の傑作が必ずしも戦争を肯定しないように、地方都市の現状を表現しきったアートも独裁者を肯定するわけではない。このシャッターアートは地方都市が自壊*2しそうな危うい現状を象徴している。
このアートを個人的に評価している理由として、地方都市に住む私自身のノスタルジーも関係している。学生時代によく通った港町のアーケード街でも似たような壁画が空き空間の一つに描かれていて、このシャッターアートで郷愁を誘われたのだ。その商店街はすでにアーケードが撤去され、港近くにあったダイエーも別のスーパーに変わって久しい。壁画もどうなったことか。
日本全国の地方都市どこでも見られるだろう光景ゆえに、阿久根市の状況は他人事に感じられない。

*1:http://www.sensenfukoku.net/art/artm.html

*2:この表現は過激すぎるかもしれないが、他に思いつかなかった。