法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

その事例はひどいというか味噌汁ひとつに頑迷だなあとは思うけど

ゴボウの煮物なんかでは、出汁を取った後の煮干や昆布があれば入れておく場合はある。基本的には食べないが、たまに御飯のおかずが足りない時に口にしたり。

小学館『日本の歴史』の凄さについて少し

下記コメント欄を見て、[twitter:@SF_yomi]氏の主張に異論をおぼえた。
小学館の学習漫画『少年少女日本の歴史』の凄さ - Togetter

でも庶民が貴族の生活史学んでも意味無いと思うんだよね。儒教的に偉い人の生活は偉いって時代でも無いと思うし。誰が何をしでかしたかを知って置けば良いとも思うんだけど。
SF_yomi 2011/05/18 13:09:31


貴族社会をそうやって「良い物」かのように認識させちゃうのはどうかなって思うんだよね。あと歴史で物凄く気になってるのが、欧米だと「ペスト」とか優れた作品が有るけども。
SF_yomi 2011/05/18 13:11:32


日本の場合祇園祭は疫病が流行ったから始まった。とか数行で終っちゃうんだよね。東日本の津波とかもそうだけど、一般人にとってはそっちの方が重要な歴史だと思うんだ。そこに政権の邪魔が何如にからんでるのかって視点で歴史は見たいよね。
SF_yomi 2011/05/18 13:13:58

実は、そういう視点でも『日本の歴史』は見所がある。全20巻にわたる大長編であるため、有名人以外の記述を行う余裕がある。
取り上げる歴史事象は、支配者層の権力争奪や上流階級の文化史だけにとどまらない。『万葉集』から山上憶良貧窮問答歌*1を引用し情景描写することで、文化史と同時に庶民の状況を描写。特に圧巻が9巻と14巻で、それぞれ正長の土一揆と江戸時代の打ち壊しと一揆で一章を割いている。近現代に入っても、女性運動に参加する市井の無名女性視点で描かれた章*2などがある。


また、マンガという表現で見ても面白い。複雑な政治情勢をマンガ形式で描写するために、市井のモブが世相を評する場面を入れるという方法論を用いているのだ。
あおむら純「南朝と北朝」*3

後醍醐の吉野へ潜行し南北朝時代が開始されるわけですが、あまりに戦闘の連続ばかりでは読者も退屈するだろうという配慮からか、漫画では「太平記」の作者の一人である僧侶(小島法師かどうかは明記なし)が各地を取材してまわり、旅する商人たちや、団結して乱世を生き抜くたくましい農民たちの様子を目撃していくという展開になります。武士や公家ばかりが歴史を動かしているのではない、というこのシリーズを貫く姿勢の一例ですね。

観応の擾乱の展開を説明するのはもう大変ですから、ここでも庶民たちの会話で一気に1ページで処理。話に加わっていた母親が「おまえたちもけんかはほどほどにしなさい」と兄弟ゲンカをしてる息子をこづく、というオチが重い展開に息抜きを与えてます。

しかもテクニックだけに終わらない。各時代でモブとして登場している家族それぞれが、実は血が繋がっていることを臭わせてあり、日本史全体を貫く無名の大河ドラマとして存在している。地味な作品だが、全体を読み通すことで庶民から眺めた歴史という一貫した流れが読み取れるのだ。

*1:これ自体は中国に元となった詩があるそうだが。

*2:この章の主人公を女性運動にひきこんだ女性が、結末で“普通”に“奥さん”として子供を産み育てている描写が、なかなか文芸的に味わいあって印象深かった。

*3:引用時に文字色変更を排した。