台北・安全な散歩 3 欧華酒店

この三泊四日のうち、最初の二泊をした「欧華酒店(リヴィエラ・ホテル THE RIVIERA HOTEL)」は、立地こそ多少不便なものの(台北市中心街からはすこし離れている)、居心地はなかなか。いわゆる大型高級観光ホテルと大きく違うのは、パックツアーの観光客を受け入れていないため、静かで落ちついた雰囲気。ホテルの内装や調度品はヨーロピアンスタイルで、家具は猫脚だったりファブリックも花柄だったり、ビジネスホテルの機能がありながらもどこぞのリゾートホテルみたい。ところどころに築年数を感じるけれど、掃除も手入れも行き届いていて清潔。主な宿泊客は欧米からのビジネスマンや個人旅行の人々。ホテルの並びには有名な「丸林魯肉飯」もあります。

とはいえ、ロビーの中央にある小さなテーブルカウンタでチェックインしていたときには、ちょうど吹き抜けの二階でパパに連れられたチビッコがぐるぐる走り回っていたので、「静かで落ちついた雰囲気」にさっそく「はて?」と疑問符。ホテルの部屋はツインベッドルームで広く、バスルームの湯船も寝転がってゆったり入浴できました。やっぱりこの風呂と、パリッとしたシーツが、ホテル泊まりのうれしいところなのだよなあ。ちょっと残念だったのは、空調の音がやかましかったのと、壁が薄いのか隣の部屋でお風呂に湯をためている音が結構うるさく響いたこと。でもそれ以外はそこそこにゆったりと過ごせました。「やっぱりホテルは新しくて、シンプルだけど気が利いていて、ラグジュアリーでないと」と言うひとにはおすすめしませんが、観光客でワサワサした雰囲気はちょっとイヤだなーというひとには向いているホテルだと思います。ホテルスタッフも、ドアマンも笑顔でやさしくてとてもすてき。台北四つ星以上ホテル界における「地味だけど、気がつくやさしいよい子」というポジションなのかな。

しかしこの「欧華酒店」、口コミでいちばんうわさになっているのは、じつは朝食の充実さ。はじめに予約したのは食事なしのプランだったのでオプションで朝食をつけて(今回はひとり一回につき約1500円)、それはもう期待していたのだけど、大正解。朝食は一階ロビー奥のラウンジで、ビュッフェスタイルでいただけます。お粥もあるものの、ほぼ欧州スタイルのお食事。たくさんのパン、サラダ、前菜、ホットミール、フレーク、フルーツなど、どこにでもあるものがとてもおいしい! カット台にはチーズが六種類! ハムは料理人さんがサーブしてくれます。

 

パンはクロワッサン、黒パン、食パン、バケット、マフィンなどのほか、デニッシュが数種類。フルーツとカスタードクリームがのった甘いデニッシュは二種類あって、初日はドラゴンフルーツとキウイ、二日目はパイナップルとメロン。このデニッシュが、盗んで走り出したくなるほどにおいしい。このデニッシュのためだけに宿泊費を払ってもわたしいいわ! というくらいだったのです。ハムやフルーツもそうだけど、毎日メニューがきちんとチェンジしているところがまたうれしい。上の写真のデニッシュはメロン、クランベリーのマフィン。フルーツはたまたまマンゴーがなかったのが残念だったけれど(他のテーブルで食べていた女の子が「今日はマンゴーなくなったね」と言っていたので、前日まではあった様子)、スイカやキウイ、グァバ、ぶどう、ドラゴンフルーツなど、ここぞばかりにいただきました。やはり南国は果物がおいしいよね、楽園だね。「台湾にいるのだから、どこかの町角でお粥でも食べればいいのに」という考えが多少あったとしても、ここの朝食を目の前にすると、パンを四つ、色とりどりのお食事、フルーツを山盛りいただいてしまい、朝の散歩がすでに腹ごなしの散歩になるというあんばい。

【欧華酒店】 台北市林森北路646號 →台北ナビの紹介ページ


台北・安全な散歩 2007】
1 台風と旅支度  2 出発 3 欧華酒店 4 町と食欲 5 町と好奇心 6 台北商旅慶城館 7 猫カフェにて 8 小龍包と女の子 9 台湾新幹線 10 帰国

台北・安全な散歩 4 町と食欲

ホテル「欧華酒店」のドアマンのおじさんに見送られて、歩いてMRT「圓山」駅へ。街路樹が傾いていたり倒れていたり、枝や葉っぱが道に広がっていたり、直撃した台風のすごさを物語っていた。MRTというのは台北市内を主に走る電車で、地下を走ったり、高架を走っていたり、路線によってはモノレールになっていたり、なかなか面白い。きっぷを買うとICチップの入ったプラスチックの青いコインが出てきて、それを改札口にかざすと反応する仕組み。一区間は20元(だいたい70円くらい)で初乗りでかなり遠くまで行く事ができる。安いなあ!

まずは「台大医院」駅まで。明後日に国慶節を控えた総統府では、ちょうどパラグアイの大統領が来台していて記念式典を行なっていたので遠巻きに見物する。兵隊さんがズラッと整列し、その横にはブラスバンドが待機。スーザーホーンを抱えた人も五人、直立不動。いまに動くかと待っているのに、いつまでもつづくのはエライ人のお話。どこも一緒だねえ、とあきらめて離れたところでファンファーレ。

そこから歩いて「台湾民主紀念館」へ。ここは蒋介石を記念した「中正紀念館」だったのだけど、歴史認識がかわり、今年の春に名前も意味も変わったのだという。それでも観光客は次々とバスでやってきて写真撮影。いちいちいろいろなものが大きい。この紀念堂も公園内の国歌音楽庁も国家戯劇院も、すべての建物が建て替え中だった。いろいろ事情があるらしい。台風で倒れた公園の植木を、みんなで直していました。

台北のタクシーは、会社がちがっても車体はみんな黄色。街の中でとても目立つしかわいい。でも乗っている運転手はおじさんなのでかわいくない。この旅行中にも何度かタクシーで移動したけれど(だって安いんだもの)、一度だけ不良運転手に出くわした。携帯電話で喋りながら運転し、ドラえもんの鼻唄でごまかし、道案内もいいかげん。目的地や現在位置を地図で把握しながら乗っていたので、遠回りや料金のボッタクリこそなかったものの、ひじょうに気分が悪かった。そういうこともたまにある。そして台北の道路事情は、タクシーに限らずみんな運転が荒い。

信儀路を歩いて永康街へ。曇り空がすこし明るくなったと思ったとたん、きゅうに暑さが増した。台北の十月は夏の終わり、残暑の季節。店先では夏服が最終セールで売り出されています。

まずは「冰館 Ice Monster」でフルーツたっぷりのかき氷をいただきます。ジャーン!

マンゴーとキウイとイチゴの三色の果物に、さらにマンゴーアイスがトッピング。この豪華で巨大なかき氷、受け取ったときにはひるんだけれど、果実が甘くて瑞々しくてじつにおいしい! 氷と一緒にいただくせいか、甘さもしつこくなく、スルスルといただけました。

 

永康街はどこかヨーロッパの街並みを感じさせるような路地が多い町で、街路樹や公園もあり、アパルトマンと呼びたくなるような蔦が絡まったマンションのとなりにお粥屋さんがあったりして、散歩がたのしくなる町。曇り空のせいか、水分を吸って茂った木々のせいか、午前十一時という時間帯のせいか、ちょっとアンニュイな雰囲気。



ここには、「永康街刀削麺」やお茶の「沁園」や、ちょっと気の利いたセレクトショップや、小龍包の有名店「鼎泰豊」の本店などがあります。月曜日午前十時半の「鼎泰豊」はまだ空いていたものの、十一時半には店の前の道が大混雑するほどの盛況で、うわさどおりの人気ぶり。台北市内には支店がふたつあり、忠孝店にわたしたちは食べに行きました。くわしくは「8 小龍包と女の子」をどうぞ。

永康街台北在住のイラストレータ青木由香さんもなじみのようで、彼女の『台湾ニイハオノート』という本にも詳しく紹介されています。ほかにもおかしな情報がたくさんで、王道の観光ガイドブックのほかに一冊持っていると、台湾散歩がたのしくなる本。わたしも読んでから散歩に出かけました。

台湾 ニイハオノート

台湾 ニイハオノート


さて、観光のお話はいろいろあるのですが、胃袋の話をもうひとつ。屋台の乱雑さが苦手なうえに、中華料理にあまりなじみのないママハタリと一緒の旅行ですが、やはり台湾らしい料理を食べておきたいなということで、観光二日目に訪れたのは「度小月」。ここは台南料理の代表的な面、担仔麺の有名なお店だそうです。


エビでだしをとったスープににゅうめんのような細い麺と、そのうえに肉味噌がのって、そしてパクチー。わーい、パクチー大好き! お店は新しくておしゃれな造りなのだけれども、麺を茹でているおじいさんは真面目で、つい写真など撮っていると「のびるから先に食べる!」とわざわざ言いにきてくれました。おだしもおいしくて、スルスルといただいてしまいます。小ぶりのどんぶりで一杯50元。屋台だと20元くらいで食べられるらしい、一杯100円くらいじゃないの。呑んだあとの一杯には最高だろうなあ。

それから、おみやげにはパイナップルケーキを、と、上述の『台湾ニイハオノート』でも「台中の有名店、犁記なら、他のオカシもおいしいので行く価値あり」と書かれていた「犁記餅店」へ。店内では女の子たちが群がって、できたてのパイナップルケーキを包装していました。おみやげ用と自分用にいくつか買って、夜にホテルで烏龍茶と一緒にいただきましたが、いままで食べたことのあるパイナップルケーキでちょっと気になっていたベタッとしたしつこさや、押し付けがましい甘さがなくて、おいしかった。

台北にはたくさんおいしいものが溢れているので、あれもこれも、というのも楽しいのだけれども、胃袋には限りがあるものです。とりあえず今回いただいた数少ない食事とおやつはどれもおいしかったので、しあわせでした。

【冰館 Ice Monster】 →台北ナビの紹介ページ
【度小月】 →台北ナビの紹介ページ
【犁記餅店】 →台北ナビの紹介ページ



台北・安全な散歩 2007】
1 台風と旅支度  2 出発 3 欧華酒店 4 町と食欲 5 町と好奇心 6 台北商旅慶城館 7 猫カフェにて 8 小龍包と女の子 9 台湾新幹線 10 帰国